2008年02月07日

全ての殺人鬼は野に放たれる

殺人部屋の元親方と兄弟子がとっ捕まりましたが、相撲記者クラブ会友のナントカさんのようにこの期に及んで死に至る傷害行為を擁護するのが相撲ファンの務めというべきでしょう。僕は相撲ファンではないので、あんなことがあっても平気で興行を打つ人たちは体だけじゃなくて神経も太いものだと呆れるばかりですが、連中は総身に知恵が回りかねているだけなのかもしれません。もし仮にこの事件が裁判員制度による審理にかけられると仮定すると、構成員の過半数がそういう「相撲ファン」であれば無罪判決が出るだろうとか、「ファン」は「国技」だとか「愛国心」を持ち出して脅しをかけるのではないか、言うことをきかない人はいつの間にか自宅を突き止められて、ビール瓶と金属バットをふんどしを持った東方の三力士の訪問を受けるんじゃないか、なんて心配になるね。

初公判から判決まで「連日開廷」…東京地裁、4月から

 来年スタートする裁判員制度を前に、東京地裁は今年4月以降、殺人など対象となる全事件について、初公判から判決までを原則数日間で終わらせる「連日開廷」とする方針を固めた。
 国民が参加する裁判員裁判の約9割は連日開廷で5日以内に終えると想定されているが、同地裁は、プロの裁判官による現行刑事裁判でこれを前倒しすることで、制度の順調な滑り出しを図りたい考えだ。
 来月上旬、東京地検と東京の3弁護士会との協議会で正式提案し、協力を求める。
 裁判員裁判の対象となるのは殺人や傷害致死などの重大事件で、最高裁によると、2006年には全国で3111件、東京地裁では388件。初公判から判決までの平均審理期間は6か月だが、被告が否認している事件では1年以上かかるケースも少なくない。
 これを3〜5日で終えるため、同地裁はまず、初公判前に検察、弁護側の主張を整理して争点を絞り込む「公判前整理手続き」を全対象事件に適用する。06年にこの手続きがとられた対象事件の平均審理期間は1・3か月に短縮された。
 さらに、証拠や証人の数を減らしたり、証人尋問などを効率的に行ったりすることで、連日開廷を実現させたいとしている。
 同地裁の方針について、ある検察幹部は「全く異論はない」と、前向きの姿勢を示す。カギを握るのは弁護士側の協力だ。組織的な対応ができる検察と違い、各事件を個々に担当する弁護士にとって、連日開廷となれば、その間、他の弁護士活動が全くできなくなるなど大きな負担がかかる。
 このため、国選弁護人を複数つけたり、公判前整理手続きの進め方や開廷時期などで弁護士側に配慮したりするなど、負担軽減が図られることになりそうだ。
 同地裁の刑事裁判官は「裁判員制度が始まれば連日開廷は避けて通れない。本来、審理計画は個々の裁判官の判断に任されるが、制度がスムーズに開始できるよう、すべての刑事裁判部が連日開廷を目指すことで一致した」としている。

2008年2月7日 読売新聞


なるほど、事の性質上なるべくさっさと済ませてすっきりしたい、その後で何も悪い事はしていませんという顔で口を拭って知らん振りしたい、という気持ちは分ります。しかし5日間も連日やられたんじゃ裁判員はたまんないでしょうな。1週間仕事休まなきゃいけません。ほとんどの人は有休なんか取らせないような会社に勤めてるわけで、1週間の休みは目立ちます。これでは裁判員となっている事を勤務先の人間に知られてしまうことになります。大きな企業では内部に被告人の関係者などがいる可能性を否定しきれませんし、取引先の人も時ならぬ長期休暇に疑念を持つでしょうね。せめて曜日を決めて週に1回とかにしてもらうと負担が少ないのですし、「病院行ってる」などと言って匿名性が守りやすいと思いますが。

裁判員が、慣れない刑事裁判に何日も連続して携わることによる精神的な負担も問題でしょう。顔面を半分削ぎ落とされたグチャグチャ屍体の写真とか見なきゃいけないわけだ。そういうのになれている人も、今度は犯行の動機に関わる醜い人間関係のグチャグチャとか、被告人の被害者への恨みつらみ、その悲惨な生育歴、歪んだ人間性、被害者の耐え難い苦痛と壮絶な恐怖、エトセトラエトセトラを見聞することになるわけで、世の中にはそういうものを見ないようにして暮らしている人もいるでしょうけど、そんな人にもお呼びがかかるわけだし、基本強制ですから。裁判官は何事も法的な観点から眺めるという、時として非人間的にすら感じられるものの見方を身につけているようですが、目前でナマでぱっくり広げられるリアルな事実に負けてしまいがちな素人さんが連日そういうのに頭からドップリ浸かるということになれば、正常な判断力を失う可能性があります。被害者もしくは被告人の一方に妙に同情的になるとか、早く終わりたい一心でいい加減に事に当たるようなことが起こりえます。後になって自分の判断を後悔して自殺しても、遺書にそのことを書いてはいけないのです。

もっとも「早く終わりたい一心」は裁判所の方が強いようです。仕事なんだからもっと丁寧にやるつもりでいてもらわないと困るのですが、東京地裁の刑事部には仕事熱心な裁判官はいないようです。裁判員制度のために裁判の拙速化を図るのであれば本末転倒ですが、「連日」や「迅速」が裁判員制度の円滑な運用につながるかというと、どうもそうでもないようなのですから、何を考えてるのかよくわかりません。

とはいうものの、少なくとも被告人の利益を考えていないことだけは確かなようです。弁護士の負担増は即ち被告人の不利益につながると考えて良いでしょう。「他の弁護士活動が全くできなくなる」ということは、報酬を得る機会が減るということであって、当該裁判における弁護報酬の高額化を招くことになるでしょう。これは被告人が自らの権利を守る機会を減らすことになります。

また、連日開廷によって弁護人は新たな証拠の収集が物理的に不可能になります。これは現在でも公判前整理手続によって手続後の新証拠の採用が制限されているところですが、連日の開廷によって公判開始後は証拠の収集自体が出来なくなることによって、新たな証拠の提出は事実上全く禁止されることになります。これは強制捜査権のない弁護人にとっては圧倒的に不利な状況です。一方の検察側は強制捜査権を持ち、その結果得られた証拠のうち被告人に有利なものは隠しておきますから、後になって提出されようとする証拠は被告人に有利なものであることが多いものと思われます。

被告人は何も悪いことをしていない(と推定される)のに、こんなに酷い目に遭わなければならない謂れはありません。裁判員制度はまだスタートしていませんが、たとえ今になって裁判員制度の開始を中止ないし延期することがあっても、この制度の導入を理由とする司法制度の改悪は既に始まっており、まともな刑事裁判は行われなくなりつつあるのです。それは幼稚園児を朝青龍と喧嘩させるような残酷な見世物です。日本のまともな国民はこういう場合には朝青龍の味方をするようですから油断出来ませんが、このような制度によって行われる裁判には片っ端からひとつ残らず無罪判決を出すのが裁判員としての良識というものでしょう。5人を説得出来ればそういうことが出来るのですから、いい世の中になったものです。



posted by 珍風 at 21:02| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。