2008年04月24日

「うそ」と「理由(わけ)」

中条きよしかよ。

光母子殺害、当時18歳の被告に死刑…差し戻し控訴審

 1999年4月、山口県光市の会社員本村洋さん(32)方で、妻の弥生さん(当時23歳)と夕夏(ゆうか)ちゃん(同11か月)が殺害された事件で、殺人、強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた元会社員(27)(犯行時18歳1か月)の差し戻し控訴審判決が22日、広島高裁であった。
 楢崎康英裁判長は「死刑を回避すべき事情は認められない」と述べ、無期懲役の1審・山口地裁判決を破棄、求刑通り死刑を言い渡した。元会社員側は上告した。
 差し戻し審で元会社員側は、母子への殺意や強姦目的を否定する新たな供述を行った。弥生さんについて「自殺した母親のイメージを重ね、甘えたいとの気持ちから抱きついたら抵抗され、誤って死なせた」「生き返ってほしいという思いから強姦した」、夕夏ちゃんについては「首を絞めた認識がない」と新たに主張した。
 楢崎裁判長は、その信用性について「起訴後、6年半以上経過してから新供述を始めたのは不自然。死刑回避のための虚偽供述で、酌量すべき事情を見いだす術(すべ)がなくなった」と指摘した。弥生さん殺害について「右手で首を押さえて死亡させた」とする元会社員側の主張を「遺体の状況と整合しない」と退け、強姦については「性的欲求を満たすためと推認するのが合理的。女性が生き返るという発想は荒唐無稽(むけい)で到底信用できない」と、計画性も認定した。夕夏ちゃん殺害の殺意を否認する供述の信用性も否定した。
 犯行について「極めて短絡的、自己中心的で、結果は極めて重大」と指摘したうえで、死刑を回避すべき事情があるかを検討。事実認定を争う差し戻し審での元会社員の態度について、「自分の犯した罪の深刻さと向き合うことを放棄し、死刑回避に懸命になっているだけで、遺族への謝罪は表面的。反省謝罪の態度とは程遠く、反社会性は増進した」と述べ、「18歳になって間もない少年であると考慮しても極刑はやむを得ない」と述べた。

2008年4月22日 読売新聞


最高裁から出された宿題はおそらく二つで、一つは殺人の計画性の存在を論証すること。もう一つが被告人の更生可能性の否定でした。この2点をクリア出来れば死刑判決を導きだすのが容易くなるでしょう。もちろん、それに伴って弁護側の提出する新たな主張を否定しなければならないのですから大変です。

ところが楢崎裁判長の出した判決では、一審及び差し戻し前控訴審で認定された事実を再確認したにとどまり、殺人については計画性を認めるには至りませんでした。やはりないものをあると言い張るのは困難だったようです。

というわけで、差し戻されたからといって犯行事実の「残虐性」や「悪質性」が増加したわけではなかったのですが、にもかかわらず量刑の方は重くしなければなりません。かといって犯行そのものから前審の判断を覆すに足る要素を引き出すことには成功しなかったたようです。そこで次に更生可能性が存在しない、もしくは著しく低いことを証明すれば、それで死刑判決を出すことが可能になるはずです。

そこで楢崎さんとしては弁護側の主張を否定するついでに、それを「虚偽の弁解」だとして、そういう「ウソ」をつくのは被告人の「反社会性が増し」ており、「反省心を欠いている」のであるから「改善更生の可能性」が「大いに減殺される」ということにしました。検察側の主張に反論することは、それ自体が悪いことであって死に値する、ということのようです。

また、謝罪の言葉や反省の弁も「表面的なものであり、自己の刑事責任の軽減を図るための偽りの言動」であるということにしました。もっとも謝罪や反省の言葉を口にしなければ、それはそれで非難することは可能ですが。いずれにしてもこれらは犯行事実とは無関係な被告人の人格の裁定であります。

オマケの蛇足として楢崎さんは弁護側に責任をなすり付けようとします。

むしろ、被告人が、当審公判で、虚偽の弁解を弄し、偽りとみざるを得ない反省の弁を口にしたことにより、死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情を見いだす術もなくなったというべきである。


弁護側が検察側に抗弁したのがいけないんだと言わんばかりです。確かに多くの場合、刑事弁護の方針としては事実に関する検察側の主張を丸呑みにして、専ら情状酌量の材料を探す、というもののようですが、今回の弁護団はそのような「業界の常識」を破ってしまったのは事実でしょう。もっともそんな「常識」的なやり方がいかに多くの冤罪を生み出して来たか、ということを考えると、この判決は相当に悪質であるといわざるを得ません。とはいってもこの判決は、プロフで中傷されたという柏の17歳が要約してくれています。「諌めようと思ったが、生意気な態度だったのでやった」。


posted by 珍風 at 05:19| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。