2008年08月20日

悲劇のメタボ姫

千葉県といえば、「血液サラサラ」ブレスレットの販売で組織犯罪処罰法違反に問われたサンキューコーポレーション元社長梶本稔さんたちの判決が18日に千葉地裁松戸支部で言い渡されましたが、伊藤正高裁判長は「中高年層の健康不安をあおり、これに付け込んだ悪質な犯行」であるとして梶本さんに懲役5年6月の実刑判決、同社元幹部の5人には懲役4年から2年の、いずれも実刑判決となりました。

ブレスレットで血液が「サラサラ」になる、なんてのは何の根拠もない話しですから、かえって商売に利用するのには向いているといえましょう。下手に科学的な根拠があったりするとかえって大変です。仮説は常に批判され、いつ否定されるか分かったものではありません。変転きわまりないのが科学というものの常であります。

メタボ診断:国際基準、腹囲外れる 日本は維持か−−年内にも発表

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断基準が国際的に統一され、腹囲が診断の必須条件から外れることが分かった。年内にも暫定基準が公表され、今後、世界のメタボ診断や治療・研究は、統一基準に基づいて行われる。一方、日本が今年度から始めた特定健診・保健指導(メタボ健診)では、腹囲測定が必須でシンボル的存在。今回の統一に日本は従う予定はなく、国際的に日本の特異さを際立たせることになる。
 世界には複数のメタボ診断基準がある。このため、約150カ国の専門家が参加する国際糖尿病連合(IDF)と、米国コレステロール教育プログラム(NCEP)が中心となって、基準統一を呼び掛け、メタボに関する世界の主要学術団体の代表が今年2月から協議を進めた。
 IDF基準は、腹囲が基準値以上で、中性脂肪など血液検査の結果の4項目のうち2項目に異常があればメタボと診断する。腹囲は人種別に定めている。一方、NCEPと米心臓協会・米国心肺血液研究所は、腹囲など5項目のうち3項目に異常があればメタボとする。腹囲は必須条件ではなく、基準値は1種類しかない。統一基準はNCEPを基本とし、腹囲は必須条件から外れるが、人種別に定める。NCEP基準は肥満でなくても他の項目に異常があればメタボと診断される。
 日本基準の基準策定で中心になった日本肥満学会理事長の松澤佑次・住友病院長は「日本の基準は、腹囲によって対象者をNCEPよりも絞り込んでいる。効率的な対策を実施するという意味では日本基準は正しく、変える必要はない」と話している。【大場あい、永山悦子】

2008年8月20日 毎日新聞


まあどうせそんなもんだろうという気が、なんとなくしていた人も多いでしょう。松澤さんは往生際が悪いようですが、はたして診断基準としての価値があまりない「腹囲」によって「対象者を絞り込んで」しまうことで、かえって医学的なアプローチを必要とする対象を見逃してしまうおそれはないのでしょうか。あいちゃんと悦っちゃんの解説記事をどうぞ。

クローズアップ2008:メタボ、国際基準統一へ おなか優先、日本だけに

 ◇男性85センチ、女性90センチ
 腹囲測定をメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)診断の第一条件として、今年4月から始まった特定健診・保健指導(メタボ健診)。「男性85センチ、女性90センチ」という腹囲基準の分かりやすさが注目を集めたが、肝心の腹囲が国際的な統一基準の必須条件から外されることになった。世界とは異なる基準で、公的健診を続けることは妥当なのだろうか。【大場あい、永山悦子】

 ◇健診現場も「根拠に疑問」
 先月、東京都江戸川区でメタボ健診を受けた60代の女性は「腹囲を測ってもらえれば、食事に気をつけるきっかけになる」と屈託なく話した。受診者は順に、ついたてで仕切られたスペースに入り、腹を出してメジャーを巻かれた。
 メタボ健診は、メタボや予備群に該当する人を健診で見つけ出し、生活習慣改善のための保健指導を実施する新しい公的健診だ。まず腹囲を基準に受診者を振り分け、その後、血液検査の結果などを加味して指導の必要性や内容が決められる。だが、保健指導に携わる看護師は「去年までと検査項目が変わったことに気づいても、何を目的とした健診か理解している人は少ない」と漏らす。各地の健診会場では腹囲測定に対し、「根拠が理解できない」「スポーツで鍛え腹囲が大きい場合も基準に引っかかるのはおかしい」など疑問の声が上がっている。
 厚生労働省のメタボ健診の基本指針は「生活習慣病の発症には内臓脂肪の蓄積が関与している」とする。内臓脂肪が蓄積した肥満に高血糖や高血圧などが重なった状態がメタボで、心筋梗塞(こうそく)など心血管疾患を発症しやすくなるとの考え方だ。腹囲測定は、内臓脂肪の多い人を見つけるために導入した。
 だが、メタボ健診の基になっている日本内科学会など8学会による腹囲基準には「世界で唯一、男性の基準が女性より小さい」など、策定当初から再検討を求める声が相次いだ。8学会は今年3月、再検討に取り組む方針を発表し、厚労省研究班も2万4000人のデータから最適な基準を導き出す作業に着手した。腹囲基準を何センチにすべきか、今なお議論が続いている。

 ◇心血管疾患との関連不明
 腹囲を第一条件にした日本の基準に当てはまる人が、本当に心筋梗塞などの心血管疾患を発症しやすいのかも不明のままだ。
 厚労省研究班の磯博康・大阪大教授(公衆衛生学)が茨城県内で実施した疫学調査(約2600人対象)。日本の基準でメタボとされた人が、心血管疾患を発症する危険性は、メタボでないとされた人と変わらなかった。一方、腹囲を必須条件としていない米国コレステロール教育プログラム(NCEP)の基準でメタボとされた人は、発症の危険性が高かった。
 磯教授は「日本人を対象にメタボと心血管疾患の関係を調べた研究はあまりない。これから最適な基準を検討する段階」と話す。
 欧米では、心血管疾患を起こしやすい人を見つけるには、NCEP基準が適しているとの研究成果が多い。ある専門家は「海外に論文を出す時は、日本の基準では掲載を認められないため、NCEP基準で分析する人がほとんど」と明かす。
 しかも、NCEP基準ですら、心血管疾患との関係に疑問を投げかける研究もある。英医学誌ランセットに5月、英国での疫学研究が発表された。60〜80代の計約7500人を対象に、NCEPの基準と心血管疾患との関係を調べると、基準に合致してもしなくても、発症の危険性にほとんど差はなかった。
 研究を担当した英グラスゴー大のナビード・サッター教授は「日本が腹囲をメタボ健診に使っていると聞いて驚いた。この基準で心血管疾患の危険性の高い人を見つけようという方法は医学的に意味がなく、貧弱な医療としかいいようがない」とあきれている。
 報道機関も冷ややかだ。
 「細いウエストを探し求め、膨大な数の人を測る日本」。6月中旬、米紙ニューヨーク・タイムズにこんな見出しの記事が掲載された。日本のメタボ健診を「太りすぎがあまりいない日本で、一般市民をスリム化するために始まった野心的なキャンペーン」と紹介し、腹囲の結果に一喜一憂する受診者の様子や自治体の担当者らのコメントとともに、制度の目的が「医療費抑制という政治的問題にある」と解説した。

 ◇「労働時間の短縮が先だ」−−独自の重点設ける動きも
 健診の重点をメタボ以外に置く動きもある。
 ヤマハ(浜松市)の健康管理センターが取り組むのは、社員への禁煙指導だ。その結果、同社本社工場では男性の喫煙率が25%と、全国平均(約4割)よりも大幅に低い水準となった。同社は11年度から全国の同社施設敷地内の全面禁煙に踏み切る。倉田千弘所長は「メタボ基準に科学的根拠はないが、禁煙には、がんと心血管疾患の予防につながるという世界中の研究成果がある」と指摘する。
 愛知医科大が会社員360人を対象に実施した調査では、1カ月の残業時間が長い人ほど、心血管疾患の危険性が高かった。
 渡辺美寿津准教授(メンタルヘルス)は「特定健診は個人に生活習慣の改善を求めるだけで、職場への働きかけが不十分だ。労働時間の短縮など、労働環境を変えなければ、心血管疾患の危険性は消えない」と話している。

2008年8月20日 毎日新聞


「日本の基準でメタボとされた人が、心血管疾患を発症する危険性は、メタボでないとされた人と変わらなかった」んだとか、日本の「診断基準」で論文を書いても相手にされないとか、ところが一方ではNCEPの診断基準にしても「NCEPの基準と心血管疾患との関係を調べると、基準に合致してもしなくても、発症の危険性にほとんど差はなかった」という研究もあるとか、はてはヤマハの健康管理センターの所長に「メタボ基準に科学的根拠はない」と断言されてしまったり、大変なことです。この記事のキモとしては渡辺美寿津准教授の「特定健診は個人に生活習慣の改善を求めるだけで、職場への働きかけが不十分だ。労働時間の短縮など、労働環境を変えなければ、心血管疾患の危険性は消えない」という指摘が重要でしょう。

ところが、日本の「腹囲」基準には「科学的根拠」がなく、それは「医療費抑制という政治的問題」と雇用者側の人件費抑制という科学外の根拠に基づいているのであるとすれば、それ故に科学的仮説のように批判にさらされる必要もなく、別の有力な科学的仮説によって覆される心配もないということになるわけです。だいじょうぶ大丈夫だよ。賢明な国民諸君にとっては、政府の言うことに信用ならないものが多いことはとっくにご存知でしょうから、例によって相手にしなければ良いのです。

こんなことを言うのも、あろうことかあるまいことか、「メタボ」に社命を賭けてしまった人がいるので、その人を気の毒がろうというのが本日の主旨であります。とにかくその会社のプレスリリースを読んでみましょう。

報道関係者 各位
プレスリリース
 
2008年8月19日
株式会社トレジュール
代表取締役 江藤 秀樹
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

株式会社トレジュールは、メタボリック対策メジャー「ハカラント」を発売。
携帯ネックストラップの裏を、「腹囲」のメタボリック基準値入りのメジャーにした日本初、実用新案登録済みの新商品。メタボの重要基準「腹囲」を簡単に気軽に測って、常に意識することで食事制限や運動のやる気を促進。
測って、メタボ対策!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
株式会社トレジュール(所在地:福岡県福岡市 代表取締役:江藤 秀樹)は、メタボリック対策メジャー「ハカラント」を発売いたしました。
(「ハカラント」:http://www.asayoru.com/hakarant/index.html

近年話題となっている「メタボリック症候群」の対策として、脱メタボを冠したさまざまなサプリメントや、エクササイズなどが続々と登場しております。「ダイエット」という言葉が流行し始めたころと同様ですが、2008年4月から定期健診に「メタボリック診断」が加わったことで、対象となる40歳以上、75歳未満の方にとっては、単なる健康トレンドではなく深刻な問題となり、ますます有効な対策が求められる状況となっております。

「ハカラント」は、「メタボリック症候群」の診断基準となる「腹囲」を測る、メタボリック対策メジャーです。携帯ネックストラップの裏を男性は85cm以上、女性は90cm以上である、「腹囲」のメタボリック基準値入りのメジャーにした、実用的でおしゃれなメタボ対策グッズです。メタボ対策は体重だけでなく、わかりにくい「腹囲」にも注意しなければならないのがやっかいですが、普段は携帯やIDカードのネックストラップとして使える「ハカラント」なら、いつでも、どこでも「腹囲」を測れます。頻繁に「腹囲」を測り、現状を直視し、常に「腹囲」を意識することで、食事制限や運動を自発的に始めるようになり、その成果も測れるので、意欲的に「脱メタボ」に取り組めます。「測って、メタボ対策」を提案する、日本初のメタボリックメジャー付きネックストラップという目新しさに加え、実用新案登録により、ネックストラップの裏面にメタボリック基準値を入れたメジャーは「ハカラント」だけとなる、オリジナリティーの高い新商品です。

<「ハカラント」について>
■商品説明
・ネックストラップの裏面に、「腹囲」のメタボリック基準値を入れた、メタボリック対策メジャー。
・実用新案登録(第3141020号)済み。

■機能
・ネックストラップの裏面のメタボリック基準値入りのメジャーで、「腹囲」を測り、常に意識することでメタボ対策に。
・携帯電話用ストラップとIDパスケース用の各ホルダー付き。取り外し簡単な挿通子付きで、普段は携帯・ID用ストラップとして、測りたい時はいつでもメジャーとして使用。

■色、デザイン
・高級感あふれる「ブラウン」、おしゃれな「ローズ・レッド」という、実用的な2色のカラー。
・100本からオリジナルデザインの「ハカラント」を制作。社名入りのIDパスカード用ストラップ、ノベルティー、販促グッズなどに。

*詳しくは、「オリジナルハカラント」:http://www.asayoru.com/hakarant/original/index.html

■価格
1本 1,000円(内税)

■販売方法
・通販サイト「朝夜どっとこむ」(http://www.asayoru.com/)にて、通販限定販売。

株式会社トレジュールは、「ハカラント」の発売により、誰でも簡単にできる、「測って、メタボ対策」の定着を目指し、日本の脱メタボに貢献したいと考えております。

【会社概要】
 ■会社名  株式会社トレジュール
 ■代表者  代表取締役 江藤 秀樹
 ■資本金  300万円
 ■設 立  平成19年11月1日
 ■所在地  〒810-0031 福岡市中央区谷1-16-3-702
 ■TEL   092-725-2519
 ■FAX   092-526-1660
 ■URL   http://www.asayoru.com
 ■Email  info@asayoru.com
 ■事業内容 通販サイト「朝夜どっとこむ」の運営

【本件に関するお問い合わせ】
 ■会社名  株式会社トレジュール
 ■担当者  秋吉 美和
 ■Email  info@tresjour.co.jp
 ■TEL   092-725-2519
 ■FAX   092-526-1660


要するに首からメジャーをぶら下げようということで、何のことはありません、テーラーではみんなやっていることです。これからは紳士服屋さんでなくても、首にメジャーを下げているのが紳士のたしなみ、ということになれば良かったのですが、発表の翌日に肝心の「腹囲」の「メタボの重要基準」としての地位が危うくなってしまったのですから不運としかいいようがありません。江藤さんとしては肥満学会の松澤さんが是が非でも非科学的な態度を貫いてくれることを願うばかりでありましょう。

商売の為に「健康不安をあおる」のはいいのですが、やはり科学的根拠のあるものをネタにするのは考えものであります。血液とブレスレット、などという突拍子のなさが命です。あるいはその存在さえ疑われている「水素水」なんてのもあります。最初から存在しないものが健康に良いも悪いもありませんが、バナ株式会社などは10月1日に東京駅八重洲北口徒歩3分というリッチな立地に「バナH東京クリニック」という「病院」を開くとか、相変わらずデカイ話しをぶち上げているようです。しかし最大限良く解釈しても、今のところその効果は証明される途上にあるに過ぎないシロモノであって、科学的評価と投資額が極めてアンバランスでありますが、まあ、つまり、あれはそういう商売なのでしょう。それに比べると「目盛りのついたストラップ」などささやかなものです。

しかし悲観するのはまだ早い。世の中には愉快な暇人がいて、面白いから1本買ってやれ、と思うかも知れません。僕はちょっと欲しくなっちゃいました。それにたとえ目盛り付きだとはいっても携帯ストラップやカードホルダー下げるのには使えるわけですから、「お笑い商品」として一部の好事家に評判を呼ばないとも限りません。メジャーはなくても構いませんがあると重宝なものです。男の子だったらお互いに「親指何本分」とか言い合うものですが、これからはちゃんと何センチ何ミリ、と言うことが出来るわけです。「俺の親指は太いんだ」などとどうでもいい言い訳をしなくても良くなるわけです。

ところでこの会社のもうひとつの有力商品が、朝用と夜用の2つの石けんをくっつけた「朝夜せっけん」という、これまたなんだか商品であります。「本件」でもなんでもかんでも「担当」している秋吉美和さんのブログ(店長ブログ)では、この石けんで磨き上げられた彼女の美貌を拝むことが出来ますが、ブログの内容が「サボリ」と「掃除」が主なのでちょっと心配です。


posted by 珍風 at 16:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。