2008年11月09日

アーパータレントスカウトキャラバン

「大東亜戦争功拘泥論」のエントリーに「優秀賞が大学生で、佳作に拓殖大学の先生が入ってましたね。先生、学生に敗れる。」というコメントを頂きましたが、これは岩田さんのことでしょう。「先生」といっても客員研究員ですが、この人は「日本保守主義研究会」とかいうものの「代表」で、早稲田に在学中に展転社から著書を上梓したという政治学専攻の業界のホープなんですが、「東京近代史研究所」の落合さんに負けたわけです。多田羅さんは学生部門での優秀賞ですから比較にはなりません。

そこで落合さんが受賞して岩田さんが佳作に終わったことからみて、この懸賞では保守系トンデモ歴史ライターを養成しようと狙いがあるのではないかと思われます。岩田さんはほとんどオークラ出版の専属ライターみたいになっていてそれなりにやっておられるようですが、落合さんはなんだか自費出版みたいな本を出しているだけで、それも岩間さんのみたいな立派な装丁ではなくていかにも金がなさそうである、ということで、まあいわば激励の意味で賞をあげることになったんじゃないでしょうか。

そんなら落合さんに300万円をあげれば良いようなもんですが、既に10年来のコネクションがあり、航空幕僚長として有名人である田母神さんをプッシュすることを優先したものでしょう。田母神さんにはいわばスター性があるのです。スターの書くものといえば、もうお一方の無名コメントのご指摘通り「ゴーストライター」は当たり前ですが、急に文章がうまくなるのも不自然ですから大変ですね。

もうひとつには落合さんの応募論文が唯一の著書の要約であったこと、すなわち落合さんは既に持ちダマを射ちつくしていてもうネタがないようであり、将来性がないことが理由でもあるでしょう。世の中は厳しいノダ。ちなみに岩田さんが本を出したという展転社というのは彼が研究員をやっている拓大日本文化研究所の雑誌『日本文化』というのも出しているところ。その他に「自民党歴史検討委員会」による『大東亜戦争の総括』もここから出ています。

歴史・検討委員会

自民党が自らの手で「大東亜戦争」(アジア太平洋戦争)を総括する目的で1993年8月に設置した「歴史・検討委員会」(歴史検討委)は、同年10月から95年2月まで20回の委員会を開催した。メンバーは衆参議員105名で、委員長・山中貞則、委員長代行・伊藤宗一郎、顧問・奥野誠亮・橋本龍太郎・藤尾正行・武藤嘉文など、事務局長・板垣正、委員には石橋一弥・江藤隆美・衛藤征士・梶山静六・塩川正十郎・鈴木宗男・中山太郎・額賀福志郎・保利耕輔・松永光・三塚博・森喜朗・片山虎之助・村上正邦など歴代文部大臣、派閥の領袖など自民党の幹部が参加していた。また、委員の中には、「教科書議連」(97年結成)の中心メンバーとなる安倍晋三・衛藤晟一・河村建夫・中川昭一・平沼赳夫など15名が含まれていた。
「歴史検討委」は、後に「新しい歴史教科書をつくる会」を立ち上げる西尾幹二氏や高橋史朗氏などを講師に招いて議論し、それをまとめて、「日本の戦争は正しかった」という内容の『大東亜戦争の総括』(展転社)を95年8月15日に出版した。この日は、自民党と連立を組んでいた社民党の村山富一首相(当時)が侵略戦争や植民地支配を反省する談話を出した日であるが、この本の内容はその談話を全面的に否定するものであった。
「歴史検討委」の総括は、日本の行った「大東亜戦争」(アジア太平洋戦争)は、自存・自衛のアジア解放戦争で、侵略戦争ではなかった、南京大虐殺や「慰安婦」は事実ではない、加害・戦争犯罪はなかった、という結論をだした。そして、侵略戦争や加害の記述を教科書から削除させるために「新たな教科書のたたかい」(教科書「偏向」攻撃)の必要性を強調していた。さらに、このような戦争・歴史認識を国民に定着させる「国民運動」を、学者を中心に展開することを提起していた。
これを受けて、1997年1月、学者を中心にした「国民運動」組織として「新しい歴史教科書をつくる会」が結成されたのである。(「歴史検討委」については、俵著『徹底検証・あぶない教科書』学習の友社参照)

http://www.linkclub.or.jp/~teppei-y/tawara%20HP/2005.10.20/1.html


そこでだ、あすのスターを目指す235人の諸君!なかでもその4割を占める身体強健にして精力絶倫なる94人(もっと増えるかも知れませんが)の自衛官諸君!田母神さんを見れば分かるように才能よりもコネがものいうこの業界、アパおばさん相手に枕営業をする覚悟はあるか?

「田母神問題」懸賞論文への自衛官応募94人に

 田母神俊雄前航空幕僚長が政府見解に反する歴史認識などの主張を投稿した懸賞論文に応募した航空自衛官が当初発表から16人増え、合計94人に上ることが7日、分かった。新たに判明した応募者は全国各地の救難隊などの所属で、上司への報告などの手続きは内規通りされていたという。
 同日付で就任した外薗健一朗空幕長が記者会見で明らかにした。6日の公表時点では航空支援集団などの部隊で調査が続いていたという。論文の応募総数235件の4割が自衛官だったことになる。
 マンション・ホテル開発のアパグループによる今回の懸賞論文の募集を全国の部隊に紹介した空幕教育課の課長は「自分の判断」と田母神氏の関与を否定していることも明かした。田母神氏は3日の記者会見で、部下に論文募集について紹介したと認めたうえで「強制は全くしていない」としている。

2008年11月8日 NIKKEI NET


アパグループの懸賞論文は自衛隊の一部と密接な連携をとって実施された形跡があります。元谷外志雄さんが会長を務める「小松基地金沢友の会」によってアパグループとはとりわけ仲の良い第6航空団では、幹部論文とこの懸賞論文を同一テーマ同一期日によって行なう一方、「アパ友」たる田母神さんの元、航空幕僚監部教育課は懸賞論文の応募要領を全部隊に通知しています。こうなると田母神さんは論文を募集し審査する人達と極めて近い関係にあることから、彼が最優秀賞を受賞した同懸賞の審査の公平性に大きな疑義が生じざるを得ないとさえ言えるところであります。

田母神さんは辞表の提出を求められると「自説」への確信を盾にこれに応じず、それどころか「理解者」として元首相2人の名を挙げて抵抗したとされます。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081109ddm001010054000c.html

1人は森喜朗さんだということですが、もう1人はおそらくバカ殿あたりではないか。バカ殿もまた「アパ友」の1人であります。森さんの周辺は「田母神氏との思想的なつながりはまったくない」と言っているようですが、森さんの名は「歴史検討委員会」の中に見出されますし、田母神さんの「自説」たるや「歴史検討委員会」の結論そのものなのです。

田母神さんを懲戒免職に出来なかった理由はこの辺にもあるものと思われます。田母神さんの見解は政府の見解と相反しますが、田母神さんは自民党の見解も政府の見解と相反することを暴露することによってこれに対抗しようとしたわけです。田母神さんをクビにするのであれば現政権のほとんど全員をクビにしなければならないことになります。

僕としてはそれならそのほうが望ましいので、こんなことなら定年退職扱いになる前に田母神さんを応援しておけばよかった。もっとも、軍人だからといって必ずしも政府と同じことを考えていなければならないということはありませんが、だからといってこれは田母神さんの「言論の自由」が犯されたとかいうような問題でもないでしょう。

憲法上の自由権が国家に対する国民の権利として保障されていることから、「国家」に同調する言論についてはその言論を表現することについて特に権利を保障する必要がありません。「国家」とは法令その他の形式で表明される政府としての考え方であって、「政府見解」をも含みますが、「政府」を構成する政党やその支援者が「政府見解」と相反する見解を抱懐している場合には、そのいわば「ウラ見解」ともいうべきものもこれに含めて考えることが出来るでしょう。

「ウラ見解」とは政府の公式の歴史認識に対する政権政党の歴史認識もそうですし、「日の丸」「君が代」を「強制しない」という政府の言明に対する現実の運用における強制の事実もそんなもんです。

本来であれば国民の大多数の支持に基づく政府の見解は、国民多数の意見と一致するはずですから、そういう言論は特に権利を保障しなくても放っておけば自然に流通することでしょう。「ウラ見解」の場合は国民多数との一致は不明ですが、言論の背後に政治的・社会的・経済的なパワーが働いていることからこういう言論も法律外的な権利保護を受けていると考えられます。

したがって田母神さんが「親日的な言論の自由は制約されていたが、日本を悪く言う自由は無限に認められていた」というのはまさにその通りであり、そうあるべきものなのです。流通しにくい言論や一般には受け入れ難い言論、エライ人に怒られそうな言論やヤクザに殺されて海に沈められそうな言論こそが「言論の自由」において保障されているのでした。まあだいたい田母神さんの「論文」は内容からいえばほかの人の「言論」のコピーですから、それでも300万円も貰えるところをみると、「無限に認められて」いるのはどっちなんでしょう。コピーは原理上無限に可能なのですから。

しかしまあ、田母神さんも「学問の自由」とか言わなかったのは幸いでした。やはりいくら「論文」と呼ばれているとしても、アレが「学問」であるというような致命的な錯誤には陥っていないようです。なにしろ英文学者と独文学者と教育学者と政治学者が専門外の歴史学について素人考えを「無限に」撒き散らし、そこへもってきていかなる学問的な訓練も経ていない軍人やそこらのオヤジや烏合の衆が「無限に」口を挟むという、それで本が売れたり賞金を貰ったりするオソロシイ業界です。秦郁彦さんは業界で数少ない歴史学者ですが、専門家に限って業界の大多数の意見に組しない場合が多いのですから油断がなりません。

ともあれ、自衛隊とトンデモ業界の「軍産複合体」の存在、そして自民党と業界の癒着が明らかになることによって、日本軍関係者の一部における拡張主義的軍国主義の存在、そして日本政府が歴史認識を表明するたびにウソをついていることが内外に明白になってしまいました。これは「軍隊のエライ人の中にどうしようもないバカがいる」に続く、「日本政府は嘘つきだ」という輪をかけたスキャンダルでありますが、結果的に「日本を悪く言う」ことになったとしても、そうする「自由」は田母神さんにも「無限に」認められているようです。


posted by 珍風 at 16:16| Comment(3) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。