2008年12月14日

サウジアラビアに絞罪器械の輸出は可能か

男の中の男の週刊誌「アサヒ芸能」の「徹底検証 ヤクザと裁判員制度!アサ芸でしか読めない『新制度のカラクリ』」。「裁判員制度」に「ヤクザ」を絡めてくるのがまったくもって「アサ芸でしか読めない」新機軸ですが、それによれば裁判員裁判の対象となる「凶悪事件」は2007年には2643件。そのうち殺人は556件であり、その中で23%にあたる130件にヤクザが関係しているというのです。

この場合、傍聴席にはヤクザが一杯いたりするわけで、そういう状況で自分の麗しい顔をさらして死刑判決を出すというのは考えものです。ちなみに裁判が行われるのは地方裁判所ですから、そのヤクザというのはいわば近所のヤクザさんなんですね。一方裁判員は管内にちゃんと住所を持って住んでいるカタギの人ですから、探し出そうと思えば簡単です。ヤクザをナメてもらっちゃ困るぜよ。

判決は多数決で決まりますから、傍聴人や被告人にとっては裁判員は全員「同罪」に見えるわけです。そこで被告人がヤクザだとか死刑判決だとかに限らず、少数意見に属し、判決を不当だと考える裁判員は、判決言い渡しの場で立ち上がって自分の立場を表明するようにしたいものです。「みんなはあんなこと言ってるけど僕は違うよ」とね。なんだか卑怯なようですが、自分が納得していないことで狙われたり報復を受けるのは真っ平です。

ちなみにこのことから犯罪者を処罰することは犯罪の抑止に繋がらず、むしろ犯罪を生み出す社会関係の問題が、いわば「犯罪組織」とみなわれている「ヤクザ」の存在によってクローズアップされることになっておりますが、世間では単にそれを物理的に「追放」すること、要するに住処を与えないで追い出す、というような差別の上塗り的処置によって解決しようとしているのはノータリンとしか言いようがないでしょう。

そこで例えば暗黒大陸アメリカのユナイテッド・ステーツにおいても、死刑執行数が減少しているんだそうですが、

米の死刑執行37人、過去14年間で最少

 【ロサンゼルス=飯田達人】米国で2008年に刑が執行された死刑囚は37人で、過去14年間で最も少なかったことが、非営利組織(NPO)「死刑情報センター」(本部・ワシントン)の調査で分かった。
 州別では、テキサスが約半数の18人を占め、バージニアが4人、サウスカロライナとジョージアが各3人だった。
 米国では1976年に死刑制度が復活して以降、執行数は99年の98人をピークに減少傾向にあり、死刑の代わりに終身刑を選択するケースも増えている。
 また、薬物注射による刑の執行が激痛を与える可能性があり、残酷で異常な刑罰を禁じた憲法に違反する疑いがあるとして、連邦最高裁が昨年9月に審理することを決め、今年4月に合憲判決を出すまで全米で執行がストップしていた。

2008年12月13日  読売新聞


この件はCNNによってこの2日前に報道済みでした。

死刑執行数が減少、2008年は37人 米NPOの報告

ワシントン──米国で2008年、死刑を執行された死刑囚は37人で、1994年以来、14年ぶりに最少を記録したことが非営利組織(NPO)の死刑情報センター(DPIC)の報告で分かった。
年内に死刑判決を受けたのは、残り期間での予想数を含め、111人と推計している。
DPICによると、今年の執行数は2007年の42人から12%減少し、06年からは30%減った。死刑判決数は昨年の115から減っており、1998年からは60%以上も少なくなった。
米国で現在、死刑制度があるのは36州。今年、執行された37人のうち、33人は南部州だった。特にテキサス州が突出して多く、半数の18人を占めた。
今年になって死刑制度を廃止したのはニュージャージー州で、メリーランド州でも来年中に廃止する見込み。また、死刑制度を導入している州でも、仮釈放がない終身刑を死刑の代わりに言い渡している州も増えており、ここ10数年で死刑数は減少し続けている。

2008年12月11日 CNN


読売が2日かけて何をしていたかというと、おそらくオリジナリティーというか独特のバイアスをかけるために「薬物注射による刑の執行が激痛を与える可能性があり、残酷で異常な刑罰を禁じた憲法に違反する疑いがあるとして、連邦最高裁が昨年9月に審理することを決め、今年4月に合憲判決を出すまで全米で執行がストップしていた」ことを執行数減少の理由として挙げるのに手間取っていたようです。あたかも本来ならもっとどんどん死刑を執行していたはずであるとでも言いたげであります。ついでに死刑を廃止する州についてもカットしてしまいました。メリーランド州については

米メリーランド州:死刑制度廃止を勧告−−議会委

 【ニューヨーク小倉孝保】米メリーランド州議会の死刑制度検討委員会は12日、無実の罪で死刑が執行される可能性が否定できないことや人種的な不平等があることなどを理由に、「死刑を廃止すべきだ」との最終報告書を州議会に提出した。同州で死刑廃止に向けた動きが加速するのは確実だ。
 現在、全米50州のうち死刑維持州はメリーランドを含む36州。しかし、多くの州が死刑執行を停止しており、今年の死刑執行は9州計37件。執行州、件数ともに99年から減少傾向が続いている。
 同委員会は今年7月、州議会が設置。法律専門家や犯罪被害者遺族、元死刑囚など23人の委員で構成される。
 死刑について、(1)同州では、黒人が白人を殺害した場合、白人が白人を殺害したのに比べ2・5倍の確率で死刑が言い渡される(人種的不平等)(2)同州ボルティモア郡検察当局はボルティモア市検察に比べ死刑を求刑する確率が13倍高い(地域間格差)(3)DNAによる捜査技術が向上しても、DNA研究所内でのミスで誤った結論が導き出されるなど、無実の罪で死刑になる危険は捨てきれない(4)死刑制度が犯罪を抑止している証拠はない−−などの理由から、「死刑廃止を強く勧告する」と結論付けている。
 この報告を受け、同州議会で近く、死刑廃止に向けた議論が始まる。同州のオマリー知事(民主党)はこれまでにも「議会が死刑廃止を決めれば、その法案に署名する」と語っている。

2008年12月13日 毎日新聞


日本のような遅れた国では万能のように思われているDNA捜査も、海の向こうでは早くも「ミス」の可能性が指摘されています。てゆうかこれは人間のやることですから「ミス」を100%排除できるものではない、という極めて真っ当な判断にしか過ぎません。

それはともかく、メリーランド州の委員会にも「犯罪被害者遺族」が加わっているようですが、その人たちがどういう意見であったか、あるいは少数意見だったかはわかりません。しかし日本の「犯罪被害者遺族」は、まだまだ死刑存置論者に利用されるだけの立場に甘んじているようです。例えば読売新聞では12月11日から「連載「死刑」第2部「かえらぬ命」」というのを連載しています。ちなみに11日の第1回は1面トップです。いずれも「犯罪被害者」が「加害者」の死を望む、といった弛緩し切った内容ですが、これはおそらく裁判員制度の発足を前に、死刑判決の減少を危惧しているつもりでしょう。

「犯罪被害者遺族」が「犯人が死ねばいいのに」と思うことは別に不自然ではありませんし、それに同情したり同感したりするのも悪いことではありませんが、そのことと国家に人民の生殺与奪の権を許容することとは全く別のことです。その意味でこの連載は権力との緊張関係を解除した、ジャーナリズムとしては弛緩してしまったものであるとしか言いようがないのですが、読売にそんなこと期待するほうが無理というものかもしれません。

しかしながら読売新聞の「危惧」も大いに理解できます。裁判員制度とは要するに国民一人一人が権力の側に立って物事を見るようにさせようということなのですが、一般の人々の大多数はそんな気持ちが微塵もないことが明らかになってしまいました。このままでは「厳罰化」を押し進めて「死刑大国」としてアメリカを追い抜いて中国に迫り、ゆくゆくは「絞罪器械図式」を始めとした「死刑技術」を外国に輸出することによって「技術立国」をめざそうという目論見が外れてしまいそうなのです。そこで国民一般に対しては権力と同じように考えなくてもよいから、結果が同じであれば好しとする、ということで緊急連載!することにしたのが今回の「GOGO死刑」キャンペーンの狙いでしょう。しかしこんなことに協力していると「犯罪被害者遺族」がまるで権力の「犬」のように思われてしまって、彼らにとってはかえって逆効果になる虞れもありますが。


posted by 珍風 at 12:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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