2009年02月13日

やわじゃねえ検察の呪い

法廷で証言中の被害者脅した容疑、被害者参加制度に波紋

 自らが被告となった傷害事件の公判で事件の被害者に暴言を浴びせて脅したとして、東京地検は12日、住所不定、無職渡部栄治被告(43)を脅迫と証人威迫の疑いで逮捕した。この公判では、昨年12月に始まった刑事裁判の被害者参加制度が適用され、被害者の参加が許可されていた。
 地検の発表によると、渡部被告は9日に東京地裁で開かれた初公判で、証人として証言していた被害者の女性に対し、「また出てきてやってやるぞ。おれはおまえの顔を覚えている」などと叫んで脅した疑いがあるという。
 女性と渡部被告との間にはついたてが置かれていたが、女性が被告の暴言を聞いて両耳をふさいで泣き出し、渡部被告は裁判長に退廷を命じられた。審理は約18分間にわたって中断した。
 次の公判では、女性が参加制度を利用して渡部被告に直接被告人質問をすることも検討されていた。女性の代理人を務めている佐藤文彦弁護士は「女性は強いショックを受けていて、出廷できるかわからない」と話している。
 今回の行為は、女性が証人として出廷していた時のもので、参加制度で新たに認められた手続きとは直接は関係していない。立件した背景について、地検は「被害者参加に影響を与える可能性がある事態はあってはならないことで、厳正に対処しないといけない」と説明した。

2009年2月12日 朝日新聞


まあ別に、このような「被害者参加に影響を与える可能性がある事態」が起こる可能性は、検察以外の人たちによって予想されており、今更驚くようなことでもないでしょう。その一方では従来から傍聴席にいる「やわじゃねえ」被害者や遺族が被告人に暴言を吐いたり何かを投げつけたりすることもあったようです。「被害者参加制度」はむしろそのような「被害者」に対して法廷という「茶番」に出番を与えることによって傍聴席での不規則な言動を抑制する効果も期待されていたかも知れません。

むしろ実際にこのような事態が起こってから「被害者参加に影響を与える可能性がある事態はあってはならないことで、厳正に対処しないといけない」などとしている東京地検の谷川恒太次席検事は甘かったとしか言いようがありません。もちろん実際には大半の被告人はおとなしくしているものでしょうから、検察としてはこういうことが起こる可能性はそれほど高いものではないと考えていたと思われますが、しかしその可能性は皆無ではなかったわけです。

それでこの渡部さんについて脅迫罪なり証人威迫罪で起訴することになったとして、それが今後において同様の事態が発生することを抑止する効果があるものであるのかどうか、アテにはなりません。犯人である人もない人も、被告人は既に身柄を拘束され、失職や人間関係の喪失などの不利益を被っているところ、さらにそこに軽い「おまけ」を付加することがそれほどの抑止力を持つものであるかどうか、何ともいえないところです。

例えば渡部さんなどは「軽い」傷害事件ですから、証人威迫の20万円以下の罰金とか1年以下の懲役は本件に比較して大きな負担増であるとも考えられます。しかし本件において相当に重い刑罰が科される可能性がある場合には、これらの刑罰は被告人にとってそれほど重みを感じさせないものでもあります。

これらの点について「アスの会」の岡村さんは、被害者参加制度を擁護し促進する立場から「裁判員制度で裁判員が恫喝(どうかつ)されるようなケースへの対策という側面が大きいのではないか」としていますが、脅かされたのは「裁判員」ではなくて「被害者」なのであり、被害者がこういう目に遭う可能性があるのが被害者参加制度の欠点として以前から指摘されていたところなのですから、岡村さんの発言は的外れであるばかりではなく制度の問題点から目をそらすものでしょう。それに泣いちゃった「被害者」に対しても随分と冷たい発言です。やはり「被害者」といっても「つまらない」被害者は「アスの会」では洟も引っかけないことになっているようですが、さすがは弁護士、依頼人でも会員でもない人のことにはまるっきり関心がありません。

さらに渡部さんの事件などは裁判員制度の適用されない軽微な事犯であることも岡村さんは無視しています。「アスの会」が大好きな死刑判決の可能性がある重大事犯においては、死刑判決を受けようという被告人が、比較的軽微な制裁しかもたらさない脅迫や証人威迫を、その刑罰によって差し控えるものであるかという疑問が存在します。単純に考えると、被告人は法廷で次から次へと新しい「犯罪」を行い、起訴され続けることによって刑の執行の延期を意図する可能性すらあります。

実際には「アスの会」は死刑に取り憑かれているので、死刑に当たらないような犯罪においては「お礼参り」のようなことが起こりうることにあまりにも無頓着であるようです。てゆうか岡村さんにはその経験があるのですが、もう忘れてしまったようです。仕事熱心にも程がありますが、「出てきたらまたやってやるからな! 俺はお前の顔を覚えているぞ!」という渡部さんの言葉は、一般の人にとっては普通の発言です。しかし「アスの会」にとっては全くもって予想だにしていなかった事態のようです。

同様に被害者参加制度がもたらすであろう「厳罰化」の効果に気をとられるあまり、このような事態が起こる可能性を過小評価してきた検察にも大いに問題があります。しかし裁判が被害者のために行われているのではないことは今も昔も変わりません。検察には被害者のことを親身に考える動機は存在せず、自らの目的のためにそれを利用する動機が存在するのですから、被害者は甘い考えは捨てるべきでしょう。検察はあなたを守ってくれませんし、「被害者」団体も会費を払わない限りは冷淡です。

それにしても言葉というものは時と場所によって評価を変えるものです。渡部さんは法廷で証人として証言している被害者に向かって横から口を挟むからいけなかったのです。被害者参加制度では被害者が質問をして被告人が答える、という一種の対話、というか質疑応答が行われるわけですから、「悩みを抱えている人の気持ちが楽になればと思っているのであれば無償でやれば良いと思った」とか「占い師は呪われると考えている」とか「出所後あなたが同様の占い活動を継続しているようであれば私としては今回と同様の行動を起こす考えだ」とか「日本中の占い師をつぶす所存である」などということは、その時に言えば良かったのです。被害者の気に入らないかも知れませんが、正直なところを話してはいけないという規則はないようです。

しかしこの場合は渡部さんが喋るコーナーではなかったので「不規則発言」ということになります。被害者は渡部さんの「不規則発言」に邪魔されてしまったのでした。実は「暴言」というのはこれらの発言ではありません。それは被害者ではなく裁判官に向けられたのです。裁判長は「裁判なんか茶番だ、似非裁判官め」という発言によって初めて渡部さんに退廷を命じたのでした。しかし日本には「法廷侮辱罪」というものはありません。「審判妨害罪」というものがあるのですが、何をもって公訴するかは検察の専任であって、検察としてはこの際法廷秩序を否定する「暴言」よりも被害者参加制度の問題点を暴露した「不規則発言」に対してより敵意をもったということです。占い師だろうが住所不定無職であろうが人様の恨みを買うということはオソロシイことであります。


posted by 珍風 at 10:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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