2009年10月01日

規範意識の低下

令状なくエックス線検査は違法 大阪、薬物事件の宅配便

 大阪府警が宅配便の中身を調べるため無断でエックス線検査したことの是非が争われた薬物事件の上告審決定で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は30日までに「検査はプライバシーを大きく侵害し、強制処分に当たる。検証許可状なく実施した検査は違法」との初判断を示した。
 ただ、検査後に令状を取って捜索、押収した覚せい剤について「当時の嫌疑は大きく、検査の必要性はあった。宅配業者の許可も得ていた。証拠収集過程に重大な違法はない」として証拠能力を認め、被告の男の上告を棄却した。
 一、二審は「任意捜査として検査できる」と判断していた。
 男は覚せい剤取締法違反(営利目的所持)などの罪に問われた大河義浩被告(48)。懲役12年、罰金600万円が確定する。決定は28日付。
 一、二審判決によると、被告は2004年、覚せい剤などの薬物計約3・7キロを暴力団から宅配便で譲り受けるなどした。
 被告が実質経営する会社に覚せい剤が宅配便で届いている疑いが浮上し、府警は業者の承諾を得て5回検査。固形物が詰まった長方形の袋を見つけ、その後、令状を得て、覚せい剤を押収した。

2009年9月30日 共同


相変わらず優しい那須弘平さんです。後になってからいくら「違法」だとか言っても、証拠能力を認めてもらえれば何も文句はありません。誰が処分されるわけでもなし、これからも安心して違法と無法に邁進することが出来ます。「違法捜査」によって収集された証拠の「証拠能力」を認めてしまうということは、要するに違法行為を推奨することになるわけですが、もちろんこれはお巡りさんだけです。一般の皆さんはマネしないようにしましょう。

そんな那須さんですが、近頃注目されているようです。恒例の、参院選無効請求裁判です。例によって例の如く合憲判決ですが、2006年の判決では独特な補足意見を書いていた那須さんは今回反対意見に転じました。

参院選「1票の格差」訴訟:「選挙制度見直し必要」 最高裁、初の指摘

 ◇07年、格差4・86倍 定数配分「合憲」
 選挙区間の「1票の格差」が最大4・86倍だった07年7月の参院選は、法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、東京と神奈川の弁護士が各都県選管を相手に選挙無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允(ひろのぶ)長官)は30日、定数配分規定を合憲と判断し、原告側の上告を棄却した。その上で「定数振り替えだけでは格差の大幅な縮小は困難で、選挙制度の仕組み自体の見直しが必要。国会の速やかな検討が望まれる」と指摘した。参院の選挙制度見直しの必要性に言及したのは初めて。(11面に判決要旨、社会面に関連記事)

 裁判官15人のうち竹崎裁判長ら10人の多数意見。中川了滋裁判官ら5人は「違憲」と反対意見を述べた。

 判決は、「投票価値に著しい不平等状態が生じ、相当期間継続しているのに是正しないことが国会の裁量権の限界を超える場合は違憲」とする従来の枠組みを踏襲。その上で、(1)06年の公職選挙法改正による「4増4減」の定数是正で、最大格差5・13倍の04年選挙より格差は縮小(2)国会が参院改革協議会を設置(3)選挙制度の大きな変更は時間がかかり、07年選挙までに見直すことは極めて困難−−として、「定数配分を更に改正しなかったことが、国会の裁量権の限界を超えたとは言えない」と結論付けた。

 一方、4・86倍の数字そのものについて合憲か違憲か明言しなかったが「憲法が要請する投票価値の平等の観点からは、大きな不平等がある」と指摘。「選挙制度見直しには参院の在り方も踏まえた高度に政治的な判断が必要で、課題も多く時間を要する」としながら、国会に投票価値の平等の重要性を踏まえた早急な検討を促した。

 金築誠志裁判官は補足意見で「目安とすべき2倍の格差をはるかに超え、著しい不平等」と違憲状態を指摘。反対意見の5人は「投票価値の平等を大きく損なう」などとして違憲と指摘したが、公益性を考慮し選挙は有効とした。近藤崇晴、宮川光治両裁判官は抜本的な見直しがなければ、将来は選挙無効の判断があり得ることも指摘した。【銭場裕司】

 ◇真摯に受け止めて−−原告団の話
 選挙制度の仕組みを見直す必要があるとはっきり述べた画期的な判決。国会は、真摯(しんし)に受け止めてもらいたい。

 ◆最高裁判決骨子◆

 ▽07年7月の参院選当時、選挙区選出議員の定数配分規定は憲法14条1項等に違反しない。

 ▽投票価値の平等の観点からは、この定数配分規定の下でも、なお大きな不平等がある状態。

 ▽国会において速やかに、投票価値の平等の重要性を十分に踏まえ、適切な検討が望まれる。

2009年10月1日 毎日


で、この記事には「15裁判官の意見」として今回と前回の裁判における個々の裁判官の判断が一覧できる表にしてあるんですが、若干分りにくいのでいかに詳細を記します。
           
竹崎博允さんは裁判長ですが前回は未任官。今回はもちろん多数意見です。

藤田宙靖さんは前回こんな補足意見を書いています。「今回のいわゆる「4増4減」の提案及び同案の可決をもって改革に向けてのすべての作業は終わり、ということになり、しかもそれが、最大較差5倍を超えないための最小限の改革にとどめる、という意図によるものであるとするならば、問題の重要性、そしてその解決に向けての国民に対する責任につき、参議院ないし国会がどの程度真摯に考えているのかについては、改めて重大な疑いが抱かれることになろう。」上手く次回に引きます。これではイヤでも今回の補足意見をしりたくなるではないですか。参議院議員もそうですが、任期が長いとそういう手も使えるんです。で、今回は「現在に至るまで更なる定数是正の本格的検討を行っているように見受けられず、07年選挙当時に定数配分が違憲状態にあったと考える余地もないではない。ただ、憲法判断は次回選挙で行うのも一つの選択肢と考える。」なんと今度もまた「次回をお楽しみに」です。

甲斐中辰夫さんは前回は「国会が、本件選挙までに定数配分規定の改正は困難であるとして行わず、本件選挙後に次回選挙に向けてこれを行うとしたことが、国会の裁量権の限界を超えたものと断ずることはできない。」という補足意見。でそのいわゆる「次回」というのが今回ですが、今回は特に意見はないようなので期待を裏切ること夥しいものがあります。

今井功さんも前回において「このような前回の平成16年大法廷判決以降における較差是正のための国会の取組みの状況を考慮すると,現時点において,直ちに,違憲との判断をすることには躊躇を覚えざるを得ない」という補足意見を書きましたが、今回は補足意見を書くことにも躊躇を覚えざるを得なかった模様です。だんだん引っ込み思案になってゆくものと見えます。

中川了滋さんは那須さんと同じく弁護士出身ですが、前回も今回も反対意見、つまり違憲という意見です。前回判決のときにはいなかった宮川光治さんや田原睦夫さんも弁護士出身でありともに反対意見ですが、田原さんは「選出議員への影響などにかんがみ違法と宣言するにとどめるのが相当」として選挙無効とまでは言わないようですが、宮川さんは「将来、選挙結果を無効とすることがあり得ることを付言すべき」だとしていますので強めの意見です。

那須さんは今回反対に転じたことをこう説明します。「私は06年判決で憲法違反を否定する多数意見に賛同したが、これは対象選挙が04年判決から6カ月しかたっておらず、4増4減の改正が実現したことを重視した。今回は改正を再度評価の材料とすることは相当でなく、国会の審議に見るべき進展や真摯(しんし)な努力が重ねられた形跡も見受けられないから、憲法違反があったと判断せざるを得ない。」立派な判断ですが、違法捜査を認めてしまったのは前回の判決と同じ間違えの繰り返しのつもりでしょうか。

堀籠幸男さんは前回も今回も多数意見、古田佑紀さんは前回は多数意見ですが、今回は竹内行夫さんの補足意見に同調しています。竹内補足意見については後述。涌井紀夫さんと桜井龍子さんは前回の判決のときには最高裁にいませんでしたが今回は多数意見、同じく前回未任官の金築誠志さんは「「選挙区間の最大格差は、目安と考えるべき2倍をはるかに超え、憲法上合理的範囲内として是認するには、よほど強い明確な理由が存在しなければならない」との補足意見を書いていますから、今回は「よほど強い明確な理由」を見いだしたものと思われますが、素人にはそれがどんな「理由」であるのか推し量るのは至難の業です。

近藤崇晴さんは反対意見であり、しかも「次々回選挙も抜本的見直しを行うことなく施行されるとすれば、定数配分が違憲とされるにとどまらず、事情判決の法理で選挙無効の請求を棄却することの是非が検討されることになろう」とかなり重いことを言っています。宮川さんが「将来」なのに対して「次々回」ですから、要するに4年という期限を切っていることになります。

竹内行夫さんですが、彼の意見は衆議院と参議院とでは違うんだから厳格な投票価値の平等は不要であるというものです。もっとも現在の参議院議員選挙制度が、彼のいわゆる「多角的な民意の反映」に適当なものであるのかどうか、甚だ疑わしいものがありますが、要は「単なる数字上の定数配分の是正ではなく、国権の最高機関である国会につき2院制が採用されている趣旨を踏まえた統治機構の在り方についての高度の政治判断に基づく検討が求められる」ということのようです。「高度の政治判断」というのはつまり最高裁は手を引く、ということで、最高裁は選挙制度に関して憲法判断をすべきではないという意味です。多数意見に比較しても大幅に後退したものであり、まあ、竹内さんとしてはまさにそういうことを言うために任命されて来たわけですから、与えられた役割を良く自覚しています。一部の人々の間でその優秀な奴隷ぶりが賞賛されることは間違いありません。

これは事実上、反対意見とは逆方向の反対意見であります。しかも同調する奴まで出る始末ですから、今回の判決は「多数意見」として選挙制度の早急な見直しの必要を勧告する人が8名、違憲判断5名、「高度の政治判断」という概念で司法による違憲審査を排除することによって憲法秩序の崩壊を目論むもの2名という内訳です。実際には「多数意見」の「多数」は1人の差でしかありません。ちなみに違憲判断する人が3分の1というのは、大体いつもの通りなんですが、前回反対意見だった人は中川さん以外の4人はすでに退官しているんですな。一方、竹内さんに同調する人があと1名出て来ると、「多数意見」もその内容を大きく変えることになるでしょう。そういったわけで特に意見がないらしい堀籠さん、涌井さん、桜井さんあたりがどう「転ぶ」か、次回の注目株です。


posted by 珍風 at 14:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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