2009年12月22日

世間はお互い様

犯罪者更生へ「社会奉仕」=刑期、一部執行猶予も−法制審部会

 刑務所の過剰収容対策を検討している法制審議会(法相の諮問機関)の被収容人員適正化部会は22日、比較的軽い犯罪者は社会での更生を促すため、保護観察処分の一環として社会奉仕活動を導入する案を了承した。また、実刑と執行猶予の中間的措置として、刑期の一部を執行猶予とする制度も了承した。

 法制審は来年2月、こうした案を千葉景子法相に正式に答申する。政府は早ければ来年の通常国会で刑法と更生保護法の改正を目指す。

 社会奉仕活動の対象は、保護観察付きの執行猶予判決を受けた成人の被告や、少年審判で保護観察処分を下された少年。道路や公園などの清掃、福祉施設での介護補助など地域社会に役立つ活動を行わせ、更生への意欲を高めるのが狙い。こうした制度は欧米諸国では広く実施されている。

 一方、刑期の一部執行猶予制度は、3年以下の懲役・禁固刑判決を受けた被告が対象。刑期を分割し、一定期間を刑務所で服役させた後に、残りの期間の執行を猶予する。社会奉仕制度とセットで導入し、執行猶予期間に社会奉仕活動を義務付けることができるようにする。

2009年12月22日 時事


「社会奉仕活動」を「刑務所の過剰収容対策」として導入する事を「被収容人員適正化部会」が話し合っています。いよいよ日本も刑務所が混んできたようですが、讀賣新聞によると「被収容人員適正化部会」のことを「罪を犯した人の再犯防止策などを検討している法制審議会(法相の諮問機関)の部会」などと称していますが、違います。「被収容人員適正化部会」はどう考えても「被収容人員」を「適正化」するための部会であって、「再犯防止策」を練るところではありません。讀賣新聞の書いてる事で正しいのは「など」というところだけです。

これは讀賣新聞が勝手に間違った事を書いているのかどうか知りませんが、例えば共同通信社では「犯罪者を社会の中で更生させる方策を検討していた法制審議会(法相の諮問機関)の担当部会」ということになっており、これなどは大変に味わい深い表現であると申せましょう。なるほど、確かに「収容」は「更生」を目的としていることになっているのですから、同じ目的を「収容」の外で果たす事が出来れば、「被収容人員適正化」に資する事になるわけです。なかなか上手い書き方であるとは思いますが、素直に「刑務所の過剰収容対策」と書いたからといって「収容」されてしまうわけでもありますまい。

そういうわけでこれは、あくまで「被収容人員適正化」が問題なのであって、「罪を犯した人の再犯防止策」の話しをしているわけではありません。ちなみに公園の清掃や老人介護などの「奉仕活動」が「更生」に役立つかどうか、という点について同部会の第16回議事録(平成20年7月4日(金))によれば

平成7年の2月に,保護観察官であります菅沼登志子という者が「社会内処遇における社会奉仕活動の研究」という論文を出しておりますし,保護観察官である染田恵の著作に係る「犯罪者の社会内処遇の探求」という論文もございます。このような形で研究をしていることは事実でございます。ただ,それが実際に例えば更生保護法第51条第2項第4号に当たるような,例えば処遇プログラムを基礎付けるときに実証した科学的な研究と同じレベルまでできているのかというと,それはなかなか難しいところでございます。
先ほども申し上げましたけれども,その菅沼論文によりますと,例えばイギリスの文献を当たりましたところ,なかなか社会奉仕が再犯率の面で効果が上がっているかというと,そうでもないというようなところもございます。あるいは,染田論文におきましては,これは科学警察研究所の研究をまた引用したりしているのですけれども,その科学警察研究所の係官,星野周弘という方の著作に係る「非行防止のための地域活動への参加と非行抑制因子の体得との関係」というような論文もございますが,これも実際には社会奉仕活動そのものを取り上げたわけではなくて,実際の世の中にいる少年たちが,これまで例えばクラブ活動をやったことがあるかどうかによって,非行因子との関係で顕著なものがあるのかどうか,要するに有効かどうかというようなことを検証しているのですが,そこにおきましても,実際には地域社会における健全育成活動や非行防止活動への参加状況は非行少年と非行のない少年とで大きく異ならないとされており,結論としては,一般的に地域活動への参加経験の有無や頻度によって非行をするか否かが直接的に決定されるとすることはできないというような結論が出ているというようなことがあります。現在どうしてもやるべきこととして,考えておるところとしては,このようなこれまでに行われていた研究の成果から社会奉仕活動あるいは社会参加活動に再犯防止あるいは改善更生に効果があるというところまではちょっとまだ認められていないので任意でやっているという,そのような状況でございます。

http://www.moj.go.jp/SHINGI2/080704-1-1.txt


効果はないようです。

そこでこの「案」によると、「保護観察付きの執行猶予判決を受けた成人の被告や、少年審判で保護観察処分を下された少年」の「特別順守事項」に「社会貢献活動」を加えるということのようですが、ただ単に執行猶予の人が「社会貢献活動」をやったからといって、それが「被収容人員適正化」につながるとは考えにくいものがあります。「社会貢献活動」によって「被収容人員適正化」の目的を果たすためには、刑務所内にいる人が外に出て来なければなりません。そうすれば収容人員は減少するわけです。

実際に諸外国で類似の制度を導入している例では、奉仕活動は刑罰の一種として、そのかわりに自由刑や財産刑を免除・減軽するものとして扱われています。要するにムショに入るかわりに施設で介護とかをします、あるいは罰金を払うかわりにゴミ拾いをします、ということが認められているわけです。

法制審議会案ではそういうことではなくて、執行猶予者のやる事を増やすように見えます。しかもそんな事をしても「再犯防止あるいは改善更生に効果があるというところまではちょっとまだ認められていない」んですから何にもなりません。保護観察中の人も、保護観察官や保護司といった人も、余計な仕事が増えるだけのようです。

しかしながら、このような「案」が、他ならぬ、「罪を犯した人の再犯防止策などを検討している部会」ではない、「被収容人員適正化部会」において検討されたということは、すなわち従来実刑に服せしめた人を保護観察付きの執行猶予に留めるということを意味します。これは執行猶予者に対する「厳罰化」ではありません。今まで実刑判決が出ていたものに執行猶予判決を出す、てゆーか出せ、ということなのです。

実際に判決を下しているのは裁判所であって、裁判官は独立して判決を書いている事になっています。しかし審議会案は裁判官が現状の量刑基準を変更する事を当然のように期待しています。法務省にとっては判決というものは思うがままに操作するべきものであるようです。裁判員の評議が裁判官に誘導されるものだとしたら、裁判官は法務省に誘導されているわけです。

そこで裁判官としては収容人員の適正化に鑑みて、従来実刑判決としていたものに対して保護観察付きの執行猶予判決を出す事になるでしょう。しかし保護観察処分の中に、意に添わぬ「社会貢献活動」に従事する事を義務づけられるという刑罰的な要素が加わったことによって、これは事実上「刑の執行を猶予する」ものではなくなってしまいます。その下には保護観察なしの執行猶予という選択肢しかありません。

これだと何らかの「刑」を執行するか、それとも単にその執行を猶予してしまうか、というどちらかしかない事になり、かえって選択の幅は狭くなっています。これはもしかすると最近裁判員どもが「保護観察」を「乱用」する事に対する措置なのかも知れませんが、刑務所の中にいようが外にいようが「更生」に対する効果の点では同じようなものなのですからどうでもいいことなんでしょう。ついでに言えば、そうやって介護に携わるべき執行猶予者が要介護状態だったりすることも稀ではないそうですから


posted by 珍風 at 23:43| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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