2010年04月28日

疑わしきは時効廃止

時効廃止:改正刑事訴訟法が施行


 衆院本会議で成立した殺人など12罪の公訴時効廃止を柱とする改正刑事訴訟法は、27日の持ち回り閣議で公布が決まり、即日施行された。28日午前0時に時効成立を控える事件を対象にするため、法務省は即日施行という異例の手続きを政府内で働きかけていた。

 改正法施行により、95年4月28日以降に発生した殺人などの時効が廃止され、警察の捜査が継続される。傷害致死など人を死亡させたその他の罪は、時効期間が従来の2倍に延長される。

 岡山県倉敷市で95年4月28日に起きた夫婦放火殺人事件も時効廃止対象となる。この事件の時効は28日午前0時だったが、即日施行で改正法成立から施行のはざまで時効を迎える事態は回避された。

 千葉景子法相は成立後の記者会見で「(時効見直しを)待っている皆さんの期待に何とか応えられるのではないか。被害者への施策が十分でないのが心痛く、政府全体でのサポートを考えなければいけない」と述べた。【石川淳一】

2010年4月27日 毎日新聞


憲法違反の法律は少なくないかもしれませんが、法の原則に反する部分を持つだけではなく、その目的で施行期日まで決定された法律はこれが初めてでしょう。恥葉毛子さんもなかなかやるもんです。

「殺人など12罪」というのは刑事訴訟法の「死刑に当たる罪」であって、刑法によると以下のとおりです。

内乱の首謀者(第77条第1項)
外患誘致(第81条)
外患援助(第82条)
現住建造物等放火(第108条)
激発物破裂(第117条)
現住建造物等浸害(第119条)
汽車転覆致死(第126条第3項)
往来危険による汽車転覆致死(第127条)
水道毒物混入致死(第146条)
殺人(第199条)
強盗致死(第240条)
強盗強姦知事(第241条)


その他に「人を死亡させたその他の罪」の公訴時効も2倍に延長されるというわけですが、これが全部遡及されるというのですから話は穏やかではありません。

ありませんが、それでもそれらの罪には一応時効があるわけですから、時効がないのとはだいぶ違います。もっとも、長くしようが廃止しようが直ちに犯人逮捕に繋がるわけではありません。犯人でない人の逮捕に繋がらないわけでもありません。取調べの可視化?なにそれ景子よく分かんない。

また、例えば傷害致死の時効は20年になるわけですが、これを殺人で起訴することにすれば遅くなっても大丈夫であるということもあります。従来でも傷害致死は10年で殺人は25年でしたから、やろうと思えば出来た、てゆーかやっていたのでしょうが、今後は「とても遅くなっても」大丈夫なのです。

傷害致死と殺人の違いは傷害行為に殺意があったかどうかであるということです。傷害の故意があって殺人の故意がないのが傷害致死です。傷害の故意がない場合は過失致死です。これについては犯行の様態と容疑者の自供によるものとなるでしょう。これらは捜査側にとってはどうにでもなる問題であり、ほとんど問題とするに足りません。傷害致死を殺人として起訴することは極めて容易です。

一方で起訴される側にとっては殺意のないことを証明することは困難ですが、状況を知る者の証言などによってこれを証明することが出来る可能性があります。しかし時間の経過とともにこのような証言による立証は難しくなってゆきます。もし充分に「遅くなって」からであれば、ほぼ不可能となるでしょう。遅いにこしたことはありません。

そこで目出たく起訴されたとして、裁判の方は大丈夫なのかと言うと、これが全然平気であります。

大阪母子殺害の死刑判決破棄、差し戻し…最高裁


 2002年4月に起きた大阪母子殺害事件で、殺人と現住建造物等放火罪に問われた大阪刑務所刑務官(休職中)・森健充被告(52)の上告審判決が27日、最高裁第3小法廷であった。

 1審・大阪地裁の判決は無期懲役、2審・大阪高裁は死刑判決だったが、藤田宙靖裁判長(退官のため堀籠幸男裁判官代読)は「十分に審理を尽くさずに判断したと言わざるを得ず、事実を誤認した疑いがある」と述べて1、2審判決を破棄し、審理を同地裁に差し戻した。

 被告が犯人かどうかが主な争点になった事件で、最高裁が2審の死刑判決を破棄したのは戦後7件目。同小法廷は2人が殺害された重大事件であることも考慮し、1審で改めて立証するよう検察側に求めたが、今後の審理の展開によっては無罪の可能性も出てきた。

 藤田裁判長を含む4人の多数意見。堀籠幸男裁判官は「被告が犯行に関与したことは合理的疑いを差し挟まない程度に立証されている」との反対意見を述べた。

 森被告は02年11月の逮捕後、捜査段階では黙秘し、公判では「現場のマンションに行ったこともない」と否認。犯行にかかわったことを示す直接証拠は一切なく、状況証拠による立証の成否が争点になっていた。

 現場マンションの階段の踊り場で、たばこの吸い殻が見つかっており、1、2審では、検出されたDNAが被告と一致したことなどから「被告が犯人と推認できる」と判断した。

 これに対し、同小法廷は「有罪と認定するには、状況証拠によって認められる事実の中に、被告が犯人でなければ合理的に説明できないものがあることを要する」と指摘。その上で、吸い殻は、警察が事件翌日に採取した段階で茶色く変色していたことから、「かなり以前に捨てられた可能性があり、被告が事件当日にマンションに行ったとは認定できない」とした。

2010年4月27日 讀賣新聞


裁判所では古い煙草の吸い殻で無期懲役だとか死刑だとかにしてくれます。最高裁にしても、これは藤田さんが退官するという特殊事情があったことを考慮すべきかもしれません。危なっかしいものです。堀籠さんは藤田さんが書いた判決を代読したわけですが、自身は変色した吸い殻で充分立証されたという立場を明らかにしています。6月には退官するんだからもう良いんじゃないかと思いますが。

この判決について報道したNHKニュースに出た元裁判官で法政大学法科大学院教授の木谷明さんは

「高度な立証がない場合は無罪なんだと、疑わしくても無罪にすべきなんだという明確なメセージが出た」

とか言ってましたが、「疑わしきは無罪」の間違いではないでしょうか。間違いと気違いは江戸の華とか申します。まさか法政で江戸風にあか抜けちゃうとは思いもよりませんが。木谷さんも辞める時には立派に辞めたもんでしたよ。


posted by 珍風 at 00:09| Comment(6) | TrackBack(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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