2011年03月19日

ザ・略奪人

震災下でも「文化に根ざす規律」 東京滞在の米学者


略奪行為も、食料を奪い合う住民の姿もみられない。震災下の日本で守られる規律は、地域社会への責任を何より重んじる文化のたまものか――。東京に滞在している米コロンビア大学の日本研究者は、大地震への日本人の対応をこう評価した。



同大ドナルド・キーン日本文化センター所長のグレゴリー・フルーグフェルダー氏は会議のため来日し、11日の地震発生時は東京の国会図書館内にいた。「図書館は閉館を1時間半遅らせた。通常のスケジュールが変更されるのは非常に珍しいことで、災害の規模の大きさがうかがえた」と振り返る。



深夜になって地下鉄が運転を再開した時、きちんと列を作って待つ人々の姿に感銘を受けたという。「普段から社会的秩序と規律が守られているため、日本人は習慣通りの行動を容易に続けられるのだろう」と、フルーグフェルダー氏は話す。日本文化の根底にある共同体意識は、災害のストレス下で平時よりさらに強く働いているというのが、同氏の見方だ。「looting(略奪)という行為は日本では発生しない。われわれがこの言葉から受けるのと同じ意味を持つ日本語の単語が存在するかどうかも疑わしい」という。



米ボストン大学で日本文化を研究する人類学者のメリー・ホワイト教授は、「米国社会で略奪が起きたり秩序が乱れたりするのはなぜかを考える必要がある」と話す。同教授によれば、背景にあるのは社会的疎外や階級格差の問題。「日本にも疎外や格差はある程度存在するが、暴力に訴えたり、他人の所有物を奪ったりすることは文化的にとにかく受け入れられないのだ」と、同教授は分析する。



フルーグフェルダー氏によれば、米国人は個人主義に基づいて行動する。自分の利益を守るために全力を尽くし、他人も皆そうするという共通認識の下に、「見えざる手」ともいうべき秩序が生まれる。「日本人の場合は違う。秩序は集団や地域社会から、個々の要求を均等化するものとして発生する」と、同氏は語る。こうした傾向は大地震からの復興に役立つかとの問いに、同氏は「ひと言でいえば、そうだ」と答えた。

2011年3月14日 CNN


人は見たいものしか見ないもので、それはドナルドダックであろうとグレゴリーであろうと変わらないようです。フルーグフェルダーさんは地下鉄の行列を見てきただけです。しかも「運転を再開した時」の。「looting(略奪)という行為は日本では発生しない」という断定は、石原さんの「スーパーになだれ込んで強奪するとかそういうバカな現象は、日本人に限って起こらない」という決めつけと同じくらい、大した根拠はありません。

今のところ「スーパーになだれ込んで」「looting」を行なうような事態は発生していない模様ですが、しかしその理由を「文化」に求めるよりはスーパーに商品が存在しないことに求める方が簡単でしょう。いわば「略奪」は既に前もって行なわれてしまっていたのです。

しかし日本における「略奪」の特殊な形式は特筆されて然るべきであるかもしれません。それは見かけ上は通常の購買行動と区別することが困難です。ほとんどただの買い物のように見えますし、実際のところ普通の買い物でしかありません。しかし政府の詳細な研究によれば、1回の購買量が多いということです。

要するにヒマと金のある順に生活物資を買い占めてしまうわけですが、小売業者としては仕入れた商品を望む価格で販売しているだけですから特に損害はありません。お値段を吊り上げるのも勝手ですし、儲かり過ぎて困るくらいですが、本当に困るのは後から買い物に来た人で、この人たちのための商品はもはや店頭には存在しません。

日本における「略奪」は購買機会に恵まれない人の購買機会を奪う、という形で発生しています。それは「犯罪」を構成しない形式において他人の権利を侵害しますが、これが「日本文化の根底にある共同体意識」というものであるということらしいのです。それは神聖なる所有権を侵すことなく、同じような境遇にある人たちの間で奪い合いが起こるということなのです。

ホワイトさんによれば、日本では「暴力に訴えたり、他人の所有物を奪ったりすることは文化的にとにかく受け入れられない」んだそうですが、それは要するにあまり荒っぽいのは好まれない、ということでしかありません。スマートに、手を汚さずに出来ることであれば「日本文化」は大抵のことを受入れるようですから油断は禁物です。もっとも、そのような「キレイな」手段は、お金持ちや地位の高い人にとってよりアクセスが容易なものです。

このような状況をフルーグフェルダーさんは「秩序は集団や地域社会から、個々の要求を均等化するものとして発生する」と解釈しています。これは簡単に言えば、日本では「秩序」は「上から」「発生」するものであって、「略奪」といえどもその「秩序」の内部で行なわれ、「秩序」を破壊することはない、という意味でしょう。このような理解に基づいて、たとえばある共同体の「合意」はその「ボス」を説得したり、酒食オマンコで接待することによって得ることが出来る、という方針が導かれたりするようです。

しかし日本人は困った時にも暴れたりしないというわけではなく、過去においては略奪を伴う「打ちこわし」が行なわれたこともありますし、米騒動においては集団で米屋に押し掛け、値下げや在庫の放出を強要することが行なわれました。しかし現在では「格差」による「地域社会」の分裂が、このような集団行動を難しくしているかも知れませんから、各人が商品を無料で獲得して来るような形をとる可能性は存在するでしょう。

「買い占め」はお金のある人にしか可能ではありませんが、「略奪」であればビンボー人にも広く門戸が開かれています。いわば一時的に「平等」が実現されるわけです。この意味では逃亡中の小堺秀彦さんが「価格は市場が決める事だし、高くても売れる時はガンガン値上げするべきです」というのも、価格が極端に高騰することによって「略奪」の発生を促進する限りにおいて賞賛されるべきでしょう。

もっとも「略奪行為も、食料を奪い合う住民の姿もみられない」というのはまるっきりウソです。

略奪相次ぐ、石巻署が警戒 貴金属やレジの現金、食料品


 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市内で、強奪や無人になった店舗の金品や貴金属類を持ち去る事件が増えている。通行人を刃物で脅し、食料品を奪い取る事件も。石巻署は被害地域の警戒態勢を通常の3倍に強化した。

 特に市中心部から西部にかけて被害が目立つ。貴金属店では、浸水がなくなった後、残していた大半の貴金属や高級腕時計などが盗まれた。経営者の斎藤信子さん(64)は「大津波警報の発令と同時に従業員をすぐ避難させた。生命が優先と考え、商品を持ち出す指示はしなかった。被災者に追い打ちをかけるような犯罪」と泣き崩れた。

 高級衣料品でも、浸水しなかった男性用衣料品を中心に数百点が持ち去られた。レジを壊し、現金十数万円も盗まれ、被害額は2000万円を超える。経営者の高橋健悦さん(46)は「津波が引いた後、店のシャッターを閉めて管理したが、犯人はウインドーを壊して侵入した。女が段ボールに詰めて運んだという情報がある。経営再建のためにも何とか取り戻したい」と憤る。

 ドラッグストアでも略奪事件があった。目撃者によると、レジに並んでいた客ら数十人が、突然、金を払わずに逃げたという。石巻市釜地区から同県東松島市赤井にかけての国道398号沿線でも無人になったコンビニなどから食料品を持ち出す行為が続発。石巻駅前周辺では自転車盗も横行している。

 石巻署は「県警本部の応援を得て被害地の警戒態勢を強化している。復旧で大変とは思うが、地域が協力し合って自衛手段も進めてほしい」と言っている。

2011年3月17日 中日新聞


「秩序」を守るために「日本では略奪はない」という虚報が流されますが、その一方では「自警団」の組織を推奨するために「略奪があった」ことが報じられます。「報道」を元来「報導」と書きますが、まさに「導く」意図がない限り「報じ」られることはありませんし、一定の方向に「導く」ものである限り、相反する情報が併存してしまうのも平気であります。もっともフルーグフェルダーさんは偽情報に基づいていい加減な思いつきを得意になって喋ってしまったので恥をかきましたが。


posted by 珍風 at 15:02| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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