2011年04月01日

致死性健康のグレイ・ゾーン

被ばく上限見直し検討


 原子力安全委員会の代谷(しろや)誠治委員は三十一日の記者会見で、福島第一原発の事故が収束した後、放射能汚染が残った地域に住民が住み続ける場合に限って、一般人の被ばく線量限度を引き上げるよう検討を始めることを明らかにした。現在の上限は年間一ミリシーベルト。国際放射線防護委員会(ICRP)は二〇〇七年の勧告で、事故からの復興期は一〜二〇ミリシーベルトが妥当と設定している。

 代谷委員は「年間の放射線量が一ミリシーベルト以下にならない場所も出てくる。そういった地域に戻ったり、住み続けたりする際は、何らかの基準を設けないといけない」と述べた。

 年間の被ばく線量が一〇〇ミリシーベルトを超えると、発がんの恐れがわずかに高まるとされる。日本では、原発事故などの復旧時を想定した基準はこれまで設けられていなかった。

 一方、代谷委員の会見に先立ち、ICRP日本メンバーの丹羽太貫(おおつら)京都大名誉教授らが三十一日、都内で記者会見、〇七年の勧告内容について解説した。

 丹羽教授らは放射線物質の放出が止まった後も汚染地域は残るとした上で、そこに住む場合は年間一〜二〇ミリシーベルト内が妥当とされていると強調。「長期的には年間一ミリシーベルトを目標にしている」と説明した。

2011年4月1日 東京新聞


これは「二〇〇七年の勧告」というよりは、今年の3月27日にICRPが日本政府に直接「規制緩和」を要請したものに唯々諾々と従ったものです。

福島原発周辺住民の放射線量緩和を…ICRP


 放射線防護基準などを決める国際組織・国際放射線防護委員会(ICRP)は、福島第一原発事故に関連し、同原発の周辺住民が居住し続ける場合、その地域で浴びる放射線量限度を当面年間20ミリ・シーベルトに引き上げるよう日本政府に求める声明を発表した。

 現在の一般の年間許容量は1ミリ・シーベルトだが、ICRPは、2007年に勧告した緊急事態発生時の一時的な緩和基準が今回適用できると判断した。同勧告では、放射性物質の汚染地域に一般住民が居住する場合、20〜100ミリ・シーベルトの範囲ならば健康影響の心配がないとしており、今回は、この基準で最も低い20ミリ・シーベルトを適用した。基準の緩和は一時的で、将来的には、1ミリ・シーベルトに戻す。

2011年3月27日 讀賣新聞


本当は100mSvにしなければならないところ、20mSvで我慢してくれるそうで、有り難くて自然と感激の涙が溢れて参ります。ICRPも鬼ではありません。「放射性物質の汚染地域に一般住民が居住する場合」は、100mSvでも「健康影響の心配がない」そうです。

一方、汚染地域でないところに一般住民が居住する場合は話は別であるようですから、汚染地域に住むと住民の身体が強くなるのか、放射線による居住地域への汚染が発生するとICRPの気が強くなるのかよく分からないわけですが、そもそもどのくらい「健康影響の心配がない」かというと、ICRPによれば癌による死亡リスク係数というものが「心配ない」ようです。

細かいことを言うとICRPでは「低線量、低線量率放射線被ばくに伴うかん死亡の生涯リスク」が10,000人あたりの全年齢平均で1Svあたりの過剰死亡数が何人いるかという数を出してます。身体の器官別に

赤色骨髄  50(人)
骨表面    5
膀胱    30
乳房    20
結腸    85
肝臓    15
肺     85
食道    30
卵巣    10
皮膚     2
胃    110
甲状腺    8
その他   50

合計   500

これで1Svあたり10,000人に500人ですから5%のリスク、ということになります。癌の発症ではなくて癌で死ぬリスクです。これが線量が減ると同じ割合でリスクが低下すると仮定して

1Sv=1000mSv  5%(100人に5人)
100mSv      0.5%(1000人に5人)
10mSv       0.05%(1万人に5人)
1mSv        0.005%(10万人に5人)

ということになっていますから、要するに1000人のうち5人が死ぬくらいはあんまり目立たないから無視する、というのが「健康影響の心配がない」という意味です。

20mSvだと1000人のうち1人が放射線汚染による癌で死亡するだけです。例えば飯舘村の人口は6千人くらいですから、まあ6人というところですが、そんな連中のことは政府の知ったことではありません。癌の発症だけならもうちょっと多い数になりますが、それでも「心配ない」そうです。

この放射線被曝による癌死亡リスクにも色んな考え方がありまして、被曝がなくても癌に罹ることがあります。この被曝のない場合の癌死亡リスクは年齢とともに上昇しますが、相加リスク予測モデルを採用するICRPの計算だと被曝によるリスクは年齢に関係ないものと仮定されていますので、各年齢層において被曝と関係ないリスクに被曝による過剰リスクを加算しております。

相乗リスク予測モデルでは、被曝による過剰リスクも、被曝によらないリスクに比例すると仮定し、年齢層が上がると過剰リスクも上がるように計算します。この場合全年齢の平均も当然上がりますが、国連科学委員会ではこのモデルによる予測も発表しており、それによると1Gyの被曝で7.1%になります。

ICRPでは敢えて低い数字が出る方の予測モデルだけを採用しているようですが、だからといって「健康影響の心配がない」わけではなく、死ぬ人が少ないというだけのことです。まあ確かに僕たちの命などは虫けら以下のものではありますが、しかし、「心配がない」というのはかなり厳密さに欠ける書き方ではないでしょうか。

しかしながら、実は記事の中の「健康影響」というのが「住民の」健康への影響のことを指す、というのが間違った解釈です。記事では「放射性物質の汚染地域に一般住民が居住する場合、20〜100ミリ・シーベルトの範囲ならば健康影響の心配がない」と書いてありますが、「一般住民が居住する場合」に「健康影響の心配がない」のは「一般住民」であるとは書いてありません。住民がどんな所に住もうが健康の心配をしなくていい人がいる、ということが書いてあるだけなのでした。


posted by 珍風 at 12:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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