2011年04月06日

ワックわく放射線リゾート

たまに書店に赴くのも興味深いもので、てゆーか無粋な僕としては他に赴くところもないので、どうしても紙魚などという諸君とその好むところを同じくせざるを得ないのですが、いわばそこは一種のリゾートであると言ってもいいでしょう。まさにそこは「国民が多様な余暇活動を楽しめる場」なのです。

しかしながら例えば今どきであれば放射線関係の本をかき集めて目立つところに置いておくなどは商売としては当然の事だと思われるので、どれ近所の書店ではどうやってこのチャンスを活かしているのかな、などと生臭い興味を持って覗きに行ったりもしないわけではありません。

とはいえ面倒くさいのでとある駅の中の書店で暫しうろつくだけであったりもするのですが、エキナカという事情もありまして、目立つところにドラッカーがどうしたこうしたという本が並んでいるのは、これはもう仕方がありません。どうしても売れるらしいので、もし本屋がドラッカーの『マネジメント』を読まなくても、並べておけば大丈夫です。

ドラッカーは季節定番的な扱いですからいいとしても、やはり時節柄ということもあります。放射線とか放射能とかの関係の本も、もし置いてあれば売れるはずであります。こういう機会を見逃すべきではなく、誰に何と言われようとも便乗して売上を上げるのが商人というものではないでしょうか。

でもって、ありました。ちゃんとそういう関係の本が。エキナカだけあってスペースが狭いんですから、ここにあるのはいわば選りすぐりの逸品、ほぼ間違いなく売れ筋間違いなしの王道とも言われるべき商品であるに違いありません。

でもってそこにあったのは

『私たちは、なぜ放射線の話をするのか』
木元教子(評論家)/碧海酉癸(消費生活アドバイザー)/東嶋和子(科学ジャーナリスト) 著
ワック株式会社

『放射線の健康への影響』
大朏博善(科学ジャーナリスト) 著
ワック株式会社


木元教子さんたちがどうして放射線の話なんかをしているのかはワック株式会社のHPにでも当たってもらうとして、大朏さんの本を見たんですが、裏表紙に本文の見出しの抜粋みたいのが印刷してありましてこれがどうも

「自給率4%というエネルギー事情から再処理関連の問題を考えてほしい」

などと余計な事が書いてあるのは残念としか言いようがありません。ここで百歩譲って「放射線の健康への影響」を過大に軽視するとしても、それは「自給率」とはとりあえず無関係です。むしろこんな事を書くと、この本は「自給率」のために「健康への影響」について嘘が書いてあるのではないかと疑われてしまう虞れがあるのではないでしょうか。

本はもうひとつ並べてあって、この3種類で小規模なブックフェアを開催中なのかも知れませんが、これは講談社のブルーバックスで近藤宗平さんの

『人は放射線になぜ弱いか一少しの放射線は心配無用一』


というものです。これもサブタイトルの存在が極めて残念です。『人は放射線になぜ弱いか』だけであれば良かったのですが、講談社さんは消費者本位の発想によって本の内容を極めて短いサブタイトルの中に分かりやすく濃縮して表現してしまいました。「これさえなければ」と思わざるを得ません。

「少しの放射線は心配無用」、このような事は政府が決めてTVが伝えています。つまりそんなことはわざわざお金を出して苦労して読まなくてもTVでやっているのです。この副題がつくことによって、この本は自分で「わざわざ読むにはあたりません」と言っているのと同じ事になってしまうのでした。買う価値がないのに価格がついている、という極めて困難な状況に直面した消費者の選択する行動は想像に難くありません。

それかあらぬか、この書店のミニ・ブックフェアは不発もいいところ、上記3点が全く売れていなかったのは当然とはいえ多少気の毒ではあります。書店ではこれら3点が積みっぱなしで減る気配もありませんでした。出版社ももうちょっと内容をボカすとかすれば騙されて買う人もいたかも知れないわけですが、あるものは裏表紙に、そしてあるものはあろうことか表紙にデカデカとその内容を表示しているのは、あるいは出版界では良心というものが機能しているという事であるのかも知れません。これらの本が売れないのであるとすれば、それはそれだけ騙される人が少ないということなのです。

出版業というのはこのようにして社会に貢献する事が出来るものなのです。ワック株式会社や講談社は立派な仕事をしました。ほとんど捨て身の社会貢献であります。敢えて増刷に踏み切り、そしてそのほとんどが返本されます。まったくもって多大な損害であるとしか言いようがありませんが、ワックさんや講談社さんはそれはそうするだけの価値のある事であると言います。言わないかも知れませんし、そのつもりもないのかも知れませんが、そうなってしまっている、とはいうものの、ここで功徳を積んだのだと思えば死後に悔いはありません。「少しの放射線」はもちろん「多くの放射線」も「心配無用」です。

ちなみにその書店では、新書コーナーでNHK出版の『日本断層論』の平積みが薄くなっていましたので、よく売れている様子でした。これは中島岳志さんが森崎和江さんにお話を聞きに行くというものなんですが、近所の原発の下を活断層が走っていないか心配な皆さんがつい手に取ってしまいそうなタイトルではあります。とはいえ、騙されたと思ってつい読んでしまうのであればこちらの方がマシでしょう。


posted by 珍風 at 22:05| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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