2012年01月25日

地獄の三丁目の夕日

マンションから放射線が出ている昨今、心あたたまるお話であります。

喫煙、4割減を目標 厚労省案、原発対策の柱に


 国や地方自治体のがん対策の今後5年間の基本となる厚生労働省の次期計画案に、喫煙率削減の数値目標が初めて明記される。喫煙者を4割近く減らす目標になる見通しだ。厚労省は、現計画に盛り込めなかった喫煙率削減をがん対策の柱の一つにしたい考え。拠点病院の見直しなどとともに2月1日、専門家や患者で構成する協議会に示す。

 がん対策推進基本計画の案で、がん対策基本法に基づいて厚労相が作る。次期計画案では、習慣的に喫煙している成人のうち、「やめたい」と思っている全員が禁煙した状態の喫煙率を目標値とする。具体的な数値は近く公表される国民健康・栄養調査2010年版を基に計算する。09年に約35%だったやめたい人の割合は、10年はたばこの大幅値上げの影響で4割近くに達する見通し。

 計画は閣議決定され、国や自治体は目標達成の施策が義務づけられる。国は、たばこの健康被害を防ぐための国際条約に従い、全面禁煙か喫煙室以外を禁煙とする事業所の割合を現在の64%から100%にすることを目指す。たばこのさらなる値上げや公の場や職場での禁煙の法制化、たばこの広告規制や禁煙補助剤の保険適用の拡大なども検討される可能性がある。

2012年1月23日 asahi.com


癌に対する煙草の役割が見直されつつあります。セシウムとかプルトニウムとかいっても、そんなものは見えやしませんし味も素っ気もありません。しかし煙草の煙は目に見え、豊かな味わいと香りを伴っています。今こそ三丁目の夕日にたなびく煙草に立ち返るべきときなのです。

煙草と癌に関する大衆的な言説は、山口一臣さんの「アメリカにおける「喫煙と健康」論争の誕生と進展」によれば『リーダーズ・ダイジェスト』の1941年12月号の記事、「ニコチン・ノックアウト」に始まります。このタイミングはアメリカで核兵器開発が決定されるのと同時です。既にこの年の2月にはプルトニウムが発見されており、核兵器開発に向けて大きな一歩が踏み出されていたところでした。

ここで問題になったのが放射性物質による癌です。アイリーン・ウェルサムさんの『プルトニウムファイル』によると1920年代から、時計の文字盤に夜光塗料として使われていたラジウムによる癌が問題になっていたようです。塗装作業に従事していた人たちが相次いで癌により死んでおり、訴訟が起こされて世間の同情を集めていたのです。核兵器開発の開始に当たって、核兵器開発に関係する人々の間で多くの癌患者が発生することが予想されていました。

「マンハッタン計画」の始動に伴って、『リーダーズ・ダイジェスト』の快進撃は続きます。更なるキャンペーンとして1942年には「タバコの広告の事実とフィクション」という特集が組まれ、核兵器開発を強力にサポートしたことを忘れるわけにはいきません。同誌の貢献はアメリカを勝利に導くのに大いに力あるものでした。

次に『リーダーズ・ダイジェスト』が活躍するのは1950年代です。フィリップ・モリス社によればこの時期に同誌は一連の記事を掲載して煙草と肺癌との因果関係を世に知らせました。煙草は癌の主要な原因となったのです。このキャンペーンは多くのものを生み出しました。煙草会社はパッケージに注意書きを入れましたし、現在では一般的になっているフィルター付きのシガレットも、このキャンペーンへの対抗措置として考案されたものです。マールボロにもフィルターがつきました。そして言うまでもなく、核実験の件数も1950年代後半から急増するのです。
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以来、「クリーンな原子力」と「不潔な煙草」はベビーフェイスとヒールの組み合わせで、リングをともにする戦友でありました。放射性物質と煙草との血塗れの蜜月が続きます。しかしながらここで指摘しなければならないのは、国防における『リーダーズ・ダイジェスト』の貢献であります。同誌のキャンペーンは常に、人が放射性物質に曝露され、あるいは大量の放射性物質が散布される前に用意されていたものでした。

日本ではいささか勝手が違ったようです。もちろん、日本でも商用核発電所が建設から40年を超えるあたりで煙草の害が強調され始めた、と言えないことはありません。その意味では「事故」は「想定内」でした。しかしながら「気の弛み」も指摘することが出来ます。「煙草の害」は循環器系などの他の病気に拡散し、果ては「クサい」「ケムい」といった情緒的なレベルにまで堕落してしまいました。何よりも肝心要の「癌」が忘れ去られようとしていたのです。もちろん、何事もなければそれで良かったわけですが、雨止んで傘を忘れるような人に限って泥棒を捕まえてから縄を綯うものです。

ここにおいて日本政府は、今ふたたび「癌」を「煙草の害」の中心に据える必要に迫られています。その大きな理由は『リーダーズ・ダイジェスト』がどういうわけか日本では売れないからなんですが、政府のやることですからとりあえず「政策」として、「喫煙」が「がん対策の柱」にならなければなりません。もちろんそれは、癌の腫瘍な原因が他に存在するからに他なりませんが、その「原因」は「やめたい」と思っているからといってヤメられるようなものではないのです。


posted by 珍風 at 22:15| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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