2012年03月24日

収奪プリースト

「ケイマンを使う運用会社には預けない」では何も解決しない
規制より自衛。企業と個人は最低限の知識を身に付けるべき
島 義夫  


規制強化よりもファイナンス教育による自衛が必要

 AIJ事件が起きてから、金融庁などは投資顧問会社や運用会社に対して矢継ぎ早にいろいろな報告を求めているようです。今後、特に独立系の投資顧問会社などが規制強化の対象になる可能性があります。投資家の中にも独立系運用会社を避ける動きがあるようで、中には「ケイマンを使う運用会社に資金は預けない」と言う投資家もいるそうです。

 こういう事件が起こるとどうしてもこのような反応が出てきます。ケイマンは問題の本質ではないので、たとえケイマンを排除しても似たような事件は続くでしょう。

 規制強化はある程度必要です。しかし、規制強化には「いたちごっこ」という面があります。また、せっかくの独立系投資顧問会社の創意工夫や独自性を抑え込む結果にもなりかねません。

 日経新聞の電子版2012年3月8日記事「AIJ運用資産、関連会社が評価改ざんか」によれば、AIJは身内の会社に資産評価をやらせて、これで顧客にウソの運用成果を伝えていたようです。こういう利益相反問題については規制強化に意味があるでしょう。今後は、投資顧問会社が運用する資産評価は外部の第三者に行わせることを徹底させるべきでしょう。

 しかし、往々にして規制強化は「○○をやってはならない」など一律の行動を求めることが多く、それは資産運用の柔軟性を損なうことになります。また、監督当局が運用会社に対して、あれこれ文書や報告書を提出させると運用コストが高くなる弊害もあります。

 こういう問題では、もっと本質的な点に注意を払うべきでしょう。多くの金融に関するトラブルを防ぐ最良の方法は、エンドユーザーがファイナンスについて知識を深めてだまされないようになることではないでしょうか。

2012年3月23日 日経ビジネスオンライン


果たして「ケイマンを使わない運用会社」があるのかどうか、てゆーか無理にケイマン諸島を使わなくても「島」は他にも色々ありますから、「ケイマンは問題の本質ではない」という島さんの指摘は正にその通りであります。

とはいえ島さんは「ケイマン」という単語で実際の「島」を指しているわけではありません。ワニがいたりゴルフ場が狭い「ケイマン諸島」に代表されるタックスヘイブンが「問題の本質ではない」とおっしゃっているわけです。こうなると果たしてどうかな、という気もして来るというものです。

実際のところケイマン諸島の御陰でお金の流れがかなり分かり難くなっていることは事実であります。食品では産地からの流れが追跡可能であることが重視されています。この点については最近の核事故によって様々な問題点が指摘されている折柄でありまして、牛乳なんかは「産地混合」が問題になっていることは周知の通りであります。

ところで「ケイマン」のような所ではお金は文字通り「溶かされ」てしまいます。溶かされて「他の」お金と有耶無耶になってしまうわけですから、自分のお金がどこでどうなっているのかちゃんとトレースしたいと思う「投資家」にとっては、「ケイマン」はメグミルクの工場のようなものに思えるのも無理はありません。

てゆーか牛乳は放射性物質が含まれていようがいまいが混合されて食卓にのぼり僕たちの口に入ってくるわけですが、お金はそういうワケにはいかないのです。それは「消えて」しまう、あるいはもっと分かり易く言えばもちろん誰かさんに取られてしまっているんでしょうけど、「ケイマン」で大切なことは、取られちゃった「顧客」は「完敗」する、というところでしょう。

この場合「顧客」とは企業年金などですが、実際には年金の掛け金を払っている労働者です。掛け金は取られてしまったわけですが、取った方はその収益に対する税金を払わなくていいのが「ケイマン」の「ケイマン」たる所以でありますから、労働者の「損」はいかなる形でも、どこの国の同志にも払戻しのない、100%全くもってケツの毛まで抜かれる徹頭徹尾息の根まで止められる「完敗」であると言うことが出来るでしょう。

このようにして「ケイマン」は政府の「財政危機」をもたらしたり、消費税が増税されたりする上で重要な役割を演じていると言われていますが、ビンボー人からの収奪もここに極まれりといった観があるこの事件の、ある種の「本質」をなしていると言うことも出来そうです。いわば「ケイマン」に代表される収奪スキームの、これは乱暴な形態なのです。

どこが「乱暴」かというと「生け贄の子羊」が存在する点がいささかスマートではない、といったところですが、まあ、浅川さんも覚悟の上でしょう。役割上充分な報酬は受け取っていたようです。数年間を面白可笑しく暮らしたんだから良いではないか。

さて島さんはタックスヘイブンを擁護した後では当然のように「規制強化」にも反対しています。実際には日本の「規制」も相当「緩い」そうですから、一種の「規制回避地」のようなものですが、租税と規制を回避出来れば島さんには何一つ文句はない、ということでしょう。気持ちは分かります。

気持ちは分かりますが、島さんが「対策」として打ち出しているのが「エンドユーザーがファイナンスについて知識を深めてだまされないようになること」なんですから感心してしまいます。流石は島さんです。AIJ投資顧問などというものは、島さんにとっては素人同然なのでありましょう。「エンドユーザー」が少しばかり「知識を深め」るならば、AIJの如きにだまされるはずなどない、というのです。

しかしながら、いくら島さんのレベルにはほど遠いものであるとしても、「ケイマン」やらヴァージン諸島やらを駆使する「素人同然」の「投資顧問」に太刀打ち出来る「エンドユーザー」が、そう沢山いるとは考えにくいものです。考えられるとすれば、元野村証券の営業マンとかそういう人でしょう。実際にはそんな人たちが「専門家」として活動し、いわば牧師のようにして「ラテン語」でけむに巻くわけですが、そういう「占い師」を企業で雇ってオセロゲームをすることになるでしょう。

まあ、余裕のある企業の方は浅川さんの同類を雇って資産運用を見てもらうのも良いかもしれませんが、ここに困った問題があります。実は一部では浅川さんはマジメに「素人同然」に思われているのです。背後に「黒幕」がいる可能性が指摘されています。「仮に“黒幕”がAIJとまったく正反対のポジションを取っていれば、そこは確実に利益を出すことができるわけだ……」(SAPIO2012年4月4日号)

したがって、あなたの企業の「投資のプロ」が、企業を裏切る可能性が常に存在するのです。これを予防するには、企業は「黒幕」が提供する以上の報酬を彼に与えなければなりません。しかもそれを「正当な」投資活動によって得た利益から支払わなければならないのですが、考えてみればその利益を出したのは彼に他なりません。彼は自分の報酬を自分で稼いだというわけですが、更に考えてみれば彼はそれをどのように稼ぎ出しても良いわけです。そして何らかの「不正」を行なった方が報酬が高くなる可能性は極めて高いものです。

そういうわけで島さんも、続く記述の中で「エンドユーザー」を結局は個人投資家にターゲットした書き方になってしまうのも無理はありません。他人は信用出来ません。企業としては従業員を信用出来ませんし、資産運用を他社に委託するのも信用出来ません。自衛では何も解決しないようですが、こういう問題では、もっと本質的な点に注意を払うべきでしょう。お金があって規制のない世界では当然そういうことになるのです。


posted by 珍風 at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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