2013年01月30日

春の労働葬儀

「アベノミクス」の物価上昇計画を脅かす賃金下落


木曜日午後5時の東京・中目黒。全国展開しているディスカウントストアチェーン、ドン・キホーテの中目黒本店は客でいっぱいになり始めている。この界隈にはレストランやブティックが立ち並び自由な雰囲気も漂うだけに、ビルの複数階を占めているこの店のけばけばしさは妙な感じもする。

 しかし、しつこいデフレにとりつかれて給料もボーナスも減る一方の日本において、「ドンキ」という愛称で親しまれるこの会社は、掛け値なしの勝ち組である。何しろ同社は、20年連続で増収増益を果たしている数少ない上場企業の1つなのだ。

   「ドンキ」の賑わいに見る消費者の意識

 「アベノミクス」の真価はここで試されることになる。日本の新首相・安倍晋三氏は、企業や家計がため込んできた現金を使う可能性が高まるように、この国をデフレから脱却させると約束している。

 今のところ、安倍氏は財政支出を伴う景気刺激策と金融緩和に力を入れている。同氏の計画にある「3本の矢」の残りの1本――構造改革と規制緩和――の詳細は今年の夏までに打ち出される見通しだ。
 「(デフレ期待から・・・)インフレ期待に変わらない限り、雇用は生まれないし、投資も出てこない」。安倍氏は今月、自身の経済タスクフォースである経済財政諮問会議の第1回会合でこう述べた。「10年間ずっとデフレが続いてきたのだから、そうではない(伝統的ではない)手法を今度は取る」

 25日に発表された昨年12月の全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、コアCPI)は前年同月比で0.2%下落し、過去7カ月間で6度目の前年比マイナスとなった。安倍氏が挑む課題の大きさを際立たせる数字だ。

 一方、麺やソースがうずたかく積まれて迷路の様相を呈しているドンキの売り場でイケダ・サクラさん(36歳・主婦)に話を聞いたところ、安倍首相が公約する2%のインフレはどちらかと言えば怖い感じがするという。

 「お給料も一緒に上がってくれるんなら、まあインフレはいいことです・・・でも、そうなってくれるとは思えませんよね。景気が良くなっているという感じはありません」

   アベノミクスの前に立ちはだかる障害物

 これこそが安倍氏が直面している障害物だ。デフレと低成長が何年も続いた結果、人々は同じ状況が今後も続くという見方を強めている。またこの国では生産年齢人口が1995年に比べて約8%減少しており、市場シェアの低下を恐れる企業は投入コストの増加を価格に転嫁することに消極的だ。

 日本では労働関係の法律が厳しく、従業員を解雇することはほとんど不可能であるため、代わりに給与が引き下げられている。そのせいで需要がさらに低迷するという循環が強まっており、日本はここ5年間で3度目の景気後退に陥っている。

 給与の減少はこれまでのところ、消費者にとってそれほど過酷なものにはなっていない。1990年代半ば以降の現金給与総額の減少率は、財・サービスを最も幅広く網羅した物価指数の下落率よりも小さなものにとどまっている。

 しかし、その意味で購買力は実質的に向上しているものの、消費を喚起するには至っていない。自分の給与はこれからさらに減るのではないか、という不安感があるからだ。その結果、国民の多くは、物価が上昇すれば生活水準は低下すると考えている。

 日銀が一般の国民を対象に行っているアンケートによれば、昨年春の(燃料価格上昇による)物価上昇を認識した回答者の80%以上は、物価の上昇はどちらかと言えば困ったことだと答えている。

   目先は見込めない賃金上昇

 安倍氏のインフレ目標を渋々受け入れた日銀総裁の白川方明氏は25日、1980年代後半のバブル期においてもインフレ率は平均で1.3%にすぎなかったと指摘した。

 「性別、年齢、職業を問わず、多くの国民が望んでいる『物価の安定』とは、雇用の増加と賃金の上昇、企業収益の増加などを伴いながら経済がバランスよく持続的に改善し、その結果として物価の緩やかな上昇が実現する状態だ」と白川氏は述べた。

 早朝に放送されている人気情報番組「やじうまテレビ!」は先日、2%のインフレに「対処する」戦略を特集した。提案された対策の中には、保存食を買いだめするというものもあった。

 物価の上昇には賃金の上昇が伴わなければならない、と安倍氏は強調している。内閣からは、給与やボーナスを引き上げた企業を対象に減税を行うという構想も浮上している。

 しかし、今のところ見通しはあまり芳しくない。企業のロビー団体である経団連は今年の春に行われる伝統的な労使交渉「春闘」で、「ベースアップ」を実施する「余地はない」と断言している。景気が悪いというのがその理由だ。

 経団連は先日、企業の経営側は来年度についての議論で「企業の存続と従業員の雇用の維持・安定を最優先する」と語った。しかし三井住友銀行のアナリスト、岡川聡氏によれば、安倍氏の金融緩和発言を機に進んだ2ケタの円安・ドル高がガス・電力料金上昇の引き金になり始める日は近いかもしれない。

   収入より先に生活費が上昇する恐れも

 物価の上昇を相殺する賃金上昇が実現する可能性があるのは2014年の春闘以降だということになれば、「収入より先に生活費が上昇する恐れがあり」、そうなれば消費をさらに抑制するだろうと岡川氏は述べている。

 ドン・キホーテの創業者である安田隆夫会長は、インフレになるとの見通しは需要を喚起する「南風」だと表現し、これを歓迎すると話している。「インフレになれば物価に対する感度が高まる・・・そうすればみんな、値上がりする前に急いでモノを買わなきゃいけないという感じになる」そうだ。

 しかし、ドンキの売り場にはそれとは異なる雰囲気が漂っている。「(2%のインフレ目標のことは)ニュースで聞いたけど、どういうことだかよく分かりません」。ツジイ・チエコさん(72歳)はこう話す。「でも、心配は心配ですね。私は年金暮らしで、収入はもう増えませんから」

By Ben McLannahan

2013年1月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙


政府が民間の賃金を上げるということは出来ません。まあ最低賃金を上げることは出来ますが。この意味では「インフレ期待」で雇用が生まれるようだったら最低賃金を上げるのが必須でしょう。その他に政府が上げられるものには公務員の賃金とか生活保護費などというものがありますが、この点については「安倍のミスク」では全然逆のことをやるそうです。

もちろんエゲレスのガイジンの「日本では労働関係の法律が厳しく、従業員を解雇することはほとんど不可能であるため、代わりに給与が引き下げられている」といういい加減な思いつきに大賛成している頸断連が賃金を上げてくれるわけではありません。てゆーか実際には「給料が引き下げられ」るのを可能にしているのは「雇用は生まれない」からなんですから、企業にとっては「デフレ」もそんなに悪いことばかりじゃないと想い出かき集めカバンに詰め込む気配がしています。

「物価の上昇には賃金の上昇が伴わなければならない、と安倍氏は強調している」そうですが、いくら「強調」しても賃金は上がりません。それには労働者諸君のご協力を仰がなければなりますまい。賃金の上昇は労働者が自ら勝ち取るしかありません。それで春闘なんだそうですが

経団連会長が労働規制の見直し求める 春闘に向けて「労使フォーラム」開催


 経団連は28日、主要企業の労使が春闘をめぐり意見を交わす「労使フォーラム」を開いた。経営側を代表して講演した米倉弘昌会長は、デフレ脱却には「制度や規制の改革が急務だ」と述べ、世界的にみて厳しすぎるとされる労働規制の見直しを求めた。

 米倉会長は「規制が経済活性化の妨げになっている」とし、65歳までの希望者全員の雇用義務化など、労働規制が企業活動を妨げているとの認識を示した。

 米倉会長は「足元では円安、株高だが見通しは極めて不透明だ」とし、今春闘では雇用の確保と安定を最優先に労組側と交渉していく考え。

 また給与を増やした企業の法人税を減税する制度をつくるなど、雇用改善を後押しする内容の経済対策をまとめた安倍政権の姿勢を高く評価した。

 米倉会長と連合の古賀伸明会長が29日会談し、ことしの春闘が事実上スタートする。

2013年1月28日 産經新聞


「労働規制の見直し」と賃上げをバーターしかねない勢いですが、それだと「デフレ脱却」などは無理です。住宅や教育などがほとんど個人の経済的負担で賄われている日本では、いつクビをやられるか分からないという状況は決定的に消費を抑制するでしょう。この点実は労働者にとっては同じことで、クビになったら別の仕事に就くわけですが、その場合賃金は以前より少なくなることが多いわけですが、これはクビにならずに給料が下がっていくのと、家計に対する効果としてはそんなに変わらないわけです。

トップ会談、春闘幕開け=労使交渉激化へ−経団連・連合


 経団連の米倉弘昌会長と連合の古賀伸明会長が29日都内で会談し、2013年春闘が本格的に幕を開けた。連合は、安倍政権が唱えるデフレ脱却には基本給に賞与などを含めた給与総額の1%引き上げや処遇改善が不可欠と訴える。一方、経団連は定期昇給の見直しを示唆し連合の主張に難色を示す。労使の意見の隔たりは大きく、激しい攻防が予想される。

 会談の冒頭、米倉会長は今春闘について「労使が危機感を正しく共有し、建設的な論議を尽くすことが必要だ」と指摘。古賀会長は「デフレ脱却にはこの春の労使交渉の結果も大きなカギを握る」と強調し、賃金などの適正配分を求めた。

2013年1月29日 時事


物価が2%上がろうというのに賃金は1%で良いんだそうで、随分と控えめな要求であると評されます。さすがは日本の労働組合、これで「激しい攻防が予想される」んだそうですから見通しは暗いと言わざるを得ません。この分だと来年の春闘の頃には賃上げ要求など考えられない程に「危機」は深刻化しているでしょうけど、労働組合を潰しちゃったのも自民党なわけで、つまり調整機能を殺しちゃったんですから上手くいかなくなってしまうのも当然でしょう。今更どうしようもありません。


posted by 珍風 at 07:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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