2013年02月24日

あとの祭りのあと

TPP共同声明の全文


 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関する日米共同声明の全文は次の通り。

 両政府は、日本がTPP交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、および、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。
 日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに2国間貿易上のセンシティビティーが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。
 両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての2国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、およびTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべきさらなる作業が残されている。(ワシントン阿比留瑠比)

2013年2月23日 産経ニュース


第1パラグラフでは「包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認」しています。これが大前提です。第3パラグラフでも御丁寧に「TPPの高い水準を満たすことについて作業を完了」しなければならないことが強調されています。その間に、何か交渉の余地でもあるかの様なことが書いてありますが、これは交渉に入る前から「全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」と言っているだけです。「あらかじめ」は約束させられることはない、しかし「交渉の中で」約束させられることになります。何故なら、交渉は「包括的で高い水準の協定を達成していく」という方向でのみ行なわれるからです。

つまりどういうことかというと、「TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」んですが、一旦交渉に入ってしまったら「包括的で高い水準の協定を達成していくことになる」わけです。

これは悪質ななんたら商法と同様でして、最初のうちはあなたには何かを買ったりする義務はないので安心して下さいという話しなんですが、帰る時にはちゃんとオカシナものをつかまされてローンを組まされたりしているもんです。というのも2人組の売り子におだてられたりおどかされたりしているうちにそうなってしまうんですが、後になって騙されたことに気がついても後の祭りなのでした。

祭りのあとの淋しさを、たとえば女でまぎらわす、そんな情けない男は御免被りますが、まあ実際のところ「交渉の余地」というものが全くないわけではありません。といってもそれは多分、何年か時間を稼ぐだけのことだと思われますが、これからいよいよケチな「交渉の余地」を巡ってロビー活動とか金髪の美女とか札束とかが飛び交ったり、ビルの窓から放り出される人まで飛び交ったりする予定ですが、そんなことをしたところで、結局のところ昨日の夢は冗談だったということになります。

しかしそうなると、例えば農業に何年かの猶予を与える代わりに「その他の非関税措置」が「高い水準を満たす」べく「対処」されてしまったりします。それは例えば日本語なんかはとんでもない非関税障壁ですから、全ての契約書は英語で書かないといけなくなったりということが直ちに発生します。たとえ日本人同士の契約であってもです。割って入ろうとするグローバル、てゆーか要するにアメリカの会社の人が盗み読む時の便宜を図らなければなりません。

逆に「保険部門」や労働部門は、日米両国の政府及び企業にとってその「撤廃」は共通の利益となりますので、日本は喜んでそれを売り渡すことでしょう。社会保険はなくなって、みんな民間の保険に入ることになります。ちなみに民間の医療保険だと、患者は一旦医療費を病院に100%払ってから、保険会社に請求を出すとお金が戻って来る仕組みになりますから定義からしてお金に余裕のないビンボー人は病院に行けません。俗に「病気になれない」とか申しますが、病気にならないわけにもいかないので、病気になったら自然治癒かそのまま病死です。てゆーか自宅なんかで病死されると変死扱いですからオマワリさんは忙しくなりますが。

労働者諸君はそうでなくても健康への脅威が待ち構えています。労働基準法こそ非関税障壁の最たるものです。ホワイトカラー・エグゼンプションの逆襲ですが、ブルーカラーだろうがメタルカラーだろうが全部エグゼキューションです。例えば日本ではアメリカ人はこんな文句を言う必要もないのです。労働者が長大な実働でわずかな賃金しか得られない国で事業を行うのは素晴らしい事なのではないでしょうか。

米CEO、仏労働者の働きぶりを批判
By GABRIELE PARUSSINI

 【パリ】フランス北部のタイヤ工場の買収を検討していた米企業の最高経営責任者(CEO)が仏労働者の働きぶりを痛烈に批判。労働者がわずかな実働で多額の賃金を得ている国で事業を行うのは「ばかげている」と、同国の担当閣僚に書簡を送った。

 米タイヤメーカー、タイタン・インターナショナルのモーリス・テーラーCEOは、「フランスの労組と政府はおしゃべりしかしていない」と同国の労働文化を批判した。仏経済紙レゼコーが20日掲載した同CEOの書簡は、生産が鈍った場合に企業は従業員と賃金を削減できることなどを盛り込んだオランド大統領の労働改革計画が外国の投資家にとってはあまりにもゆっくりとした改革になる恐れがある、と指摘した。

 タイタンは、米グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバーが売りに出した不採算工場の買収に関心を示していたが、共産党系の労働総同盟(CGT)が雇用を守るための労働時間延長を拒否したのを受けて、交渉から撤退した。

 テーラーCEOは、モントブール生産回復相の交渉再開の要請に対する2月8日付の書簡で、「あなたの書簡はタイタンが交渉を行うことを求めているが、あなたはわれわれがそれほど愚かだと考えているのだろうか」と答えた。テイラー氏からのコメントは得られていない。

 モントブール氏は20日、この批判をはねつけ、「あなたの言い様はひどい侮辱であり、われわれの国フランスに対する完全な無知を示している」と反論した。同氏は、フランスには2万に上る外国企業があり、約200万のフランス人を雇用し、フランスの輸出の3分の1を担っていると指摘した。

 同氏と外国企業との間の舌戦はこれまでにもあった。同氏は昨年末、仏東部フロランジュにある高炉2基の閉鎖計画をめぐり鉄鋼大手のアルセロール・ミッタルのラクシュミ・ミッタル会長と衝突。高炉を国有化すると警告するとともに、フランスはもはや歓迎しないと同会長に伝えた。

 テーラー氏の批判 − 多くの企業の考えよりも厳しいのだが − は、フランス産業界の競争力に関する広範な懸念を反映したものだ。経済協力開発機構(OECD)の2011年の統計によると、同国の生産性はドイツよりも高く、米国に迫るものだが、労働法規が障害となって正規従業員を解雇するのは高くつく。工場閉鎖は大規模な政治的反発を招くことがある。

 フランス政府は、柔軟な労働条件で労組と合意するよう経営側に求めている。政府は3月、状況が厳しい時には企業が労働時間と賃金を削減し、レイオフに関する若干の法的不透明さを排除し、余剰人員削減措置に従業員が提訴できる期間の制限を盛り込んだ法案を議会に提出する予定だ。

 テーラー氏は書簡で、フランスは全ての産業ビジネスを失う恐れがあるとし、仏北部のアミアンのタイヤ工場を買収しようとした際の厳しい状況を紹介した。同氏は「フランスの労働者は高い賃金を得ているが、働くのは1日にわずか3時間だ。休憩と昼食が1時間、おしゃべりが3時間、労働が3時間だ」とし、「私はこの事実を労組加盟の労働者に突きつけたが、彼らはこれがフランス流だと言った」と書いている。

 この書簡はフランスで強い反発を招いた。CGTの次期委員長であるティエリ・レパオン氏は「我慢にもほどがある」とし、「必要なのは閣僚ではなく共和国大統領の対応だ。大統領は仏国民への敬意を要求しなければならない」と強調した。

 グッドイヤーのタイヤ工場をめぐるトラブルは、アミアンの二つの生産施設の再編を決めた2007年に始まった。同社は、農業機器と乗用車向けのタイヤを24時間生産できるように勤務シフトを変更することを従業員に求めた。しかし従業員がこの提案を拒否したため、同社は402人を解雇する計画を明らかにした。従業員側は解雇は違法だとして提訴した。

 グッドイヤーの広報担当者Catherine Dumoutier氏によると、09年に自動車市場が世界的に落ち込むと、グッドイヤーは解雇計画を撤回し、タイタンとの間で、アミアン・ノール工場を含む欧州の農機用タイヤ生産工場の売却交渉を開始した。グッドイヤーは817人の解雇など新たなリストラ計画を提示したが、裁判所の承認を得ることはできなかった。

 テーラー氏はアミアン工場を2回訪れ、半分の従業員を2年間維持すると提案した。しかし、CGT加盟労働者はこれを拒否。7年間の職場確保を要求した。工場のCGT代表であるミシェル・ワーマン氏は「われわれはテーラー氏の計画には信頼が置けず、反発している」と述べた。

 モントブール氏の報道官によれば、タイタンは昨年9月、フランスの「厳しい社会風土」を理由に工場買収交渉から撤退した。同氏はタイタンの提案を受け入れるよう何カ月もCGTを説得し、年末には、状況は改善し、交渉のテーブルに戻れる、とテーラー氏に伝えた。

 一方で、グッドイヤーは工場閉鎖を決めた。操業が段階的に縮小される中で、乗用車向けタイヤの生産は1日約2000本にまで減少した。同工場は同2万1000本の生産能力があった。それにもかかわらず、フランスの法律は全ての従業員の雇用を続けることを同社に義務付けている。これは1日に2時間だけ働いて、賃金をフルにもらえることを意味する。これがテーラー氏を激怒させたようだ。

 同氏は書簡の中で、日本のブリヂストンに次ぐ世界第2位のタイヤメーカー、仏ミシュランは5年後には「フランスで生産できなくなるだろう」と書いている。これに対してモントブール氏は「タイタンの規模はミシュランの20分の1、利益も35分の1にすぎないことを思い起こしてほしい」とし、「これはタイタンがフランスで地歩を固めればどれだけ多くのことを学び、どれだけ多くの利益を得られたかということを示している」と強調した。

2013年2月21日 ウォールストリートジャーナル


アメリカにとって日本との「交渉」がいかに重要であるかがよく理解できる例です。モントブールさんはなかなか頑張っている様です。奥床しい日本の政治家にはとてもこんな事は言えません。たとえブリジストンがあってもです。

2010年度の世界ランキング   ※単位:百万ドル

 1位 ブリヂストン(日本) 24.425
 2位 ミシュラン(フランス) 22.515
 3位 グッドイヤー(アメリカ) 16.950
 4位 コンチネンタル(ドイツ) 8.100
 5位 ピレリ(イタリア) 6.320
 6位 住友ゴム(日本) 5.850
 7位 横浜ゴム(日本) 4.750
 8位 ハンコック(韓国) 4.513
 9位 クーパー(アメリカ) 3.361
10位 正新/マキシス(台湾) 3.356
11位 杭州中策ラバー(中国) 3.226
12位 クムホ(韓国) 3.025
13位 東洋ゴム(日本) 2.500
14位 三角グループ(中国) 2.258
15位 GITIタイヤ(シンガポール) 2.207
16位 アポロタイヤ(インド) 1.943
17位 MRF(インド) 1.739
18位 山東リンロン(中国) 1.428
19位 J・Kインダストリーズ(インド) 1.303
20位 ノキアンタイヤ(フィンランド) 1.261
21位 青島双星(中国) 1.233
22位 ダブルコイン(中国) 1.222
23位 アイオラスタイヤ(中国) 1.199
24位 ネクセンタイヤ(韓国) 1.157
25位 星苑タイヤ(中国) 1.040


タイタンは?そんなものは出て来ません。代わりにこんなものを見つけました。

米タイタンの超大型タイヤ、予想耐用時間の100分の1で使用不能に


8月24日(ブルームバーグ):タイヤメーカーの米タイタン・インターナショナル が目指していた超大型タイヤ市場参入が壁に突き当たっている。カナダのオイルサンド開発事業で利用されているトラックに装備されたタイヤが予想耐用時間のわずか100分の1で故障するケースが発生したからだ。

タイタンのモーリス・テイラー最高経営責任者(CEO)は電話インタビューで、圧力監視機器を設置するためのダンプトラックに装着される直径13フィート(約4メートル)のタイヤの生産を同社が一時停止したことを明らかにした。

同CEOによれば、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルなどのエネルギー会社が加アルバータ州で進めるオイルサンド事業で利用されているトラック(積載重量400トン)のタイヤ4本が100時間利用後に使用不能となった。予想されていた耐用時間は最低で1万時間だった。

この超大型タイヤの価格は一本4万2000ドルで、シェル のムスケグリバー鉱山などに投入されたキャタピラー 製の797Bトラックに装着されていた。テイラーCEOは3月、超大型タイヤ市場への参入により売上高が5年以内に3倍に拡大するとの見通しを示していた。同CEOは、地元のディーラーが、利用開始時の空気圧を低くし過ぎたため内部の温度が上昇した結果、スチールベルトが分離したと説明した。

テイラーCEOは「地元のディーラーが7−10%のリベート(販売払戻金)を要求したが、その支払いを拒否した。支払わなければ彼らはタイヤから少し空気を抜くかもしれない。だれも見てはいない」と語った。ディーラー名は特定しなかった。

同社は改良した新タイヤを試験するため、オハイオ州ブライアン工場でのタイヤ生産ラインを8月第2週に停止した。テイラーCEOによると、生産は今月末までに再開する。

ニューヨーク市場でのタイタン株の24日終値は0.68ドル(7%)安の9.07ドルだった。

2009年8月25日 ブルームバーグ


「特定」もされず、「だれも見てはいない」ところの「地元のディーラー」なるものが空気を抜いたそうです。かなりヒドい言い掛かりですが、タイタンがミシュランに取って代わったらかなり恐ろしい事態になることが予想されます。なにしろ「地元のディーラー」なんてものはどこにでもいるんですから、タイタンのタイヤは空気が抜けっぱなしになる事請け合いであります。出来る事であれば、そのような影の如く暗躍し疾風のように現れて空気を抜いて去っていく「地元のディーラー」に付け狙われていないメーカーのタイヤを履きたいものですが、そんな事は許されません。安全基準も非関税障壁なのです。かわりに、死ぬと祭りのあとの淋しさがもれなく貰えることになっています。


posted by 珍風 at 07:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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