2008年08月07日

stop stop taspo! stop taspo!

さあ夏だ少年非行の季節だぜ。爆発する若いエネルギーが無軌道な青春でセックスドラッグロックンロールだ。喫煙は「非行の入り口」といわれ、やがて必ずや飲酒や万引きを引き起こし、さらに薬物乱用から強姦強盗などの凶悪犯罪に出世して遂にとうとう人を殺し始め、気がついたら要人暗殺や暴動内乱を経て国家転覆、革命政権の樹立に至るものであるとされていますが、何事もそう巧くはいかないものであります。

長男にタスポ貸した父を書類送検

 宮崎県警延岡署は6日、18歳の長男に成人識別カード「taspo(タスポ)」を貸した上、購入したたばこの喫煙を放置したとして、未成年者喫煙禁止法違反の疑いで無職の父親(60)=宮崎県延岡市=を書類送検した。「タスポを貸してくれとせがまれた」などと供述し、容疑を認めているという。
 調べでは、父親は6月20日ごろ、自宅で無職の長男にタスポを貸し、タスポを使って購入したたばこを喫煙しているのを知りながら止めなかった疑い。
 長男は近所の弁当販売店の店先にある自動販売機でたばこを購入、自宅で喫煙していたという。別の事件の捜査で家族から事情を聴き、長男の喫煙が判明した。

2008年8月6日 スポスポニチャニチャ


肝心の「別の事件」の方がどうなったのか気になるところですが、「未成年者喫煙禁止法」では未成年者を喫煙から守ることが目的となっております。名称からすると、ガキの喫煙は良くないことだから禁止する、という風に読めますが、実際にこの法律によって処罰を受けるのは「親権ヲ行フ者」とか「煙草又ハ器具ヲ販売スル者」なのであって、この人たちが未成年者に喫煙を「させた」咎をもって1万円未満の科料とか50万円以下の罰金を取られることになっています。喫煙をした未成年者自身には罰則はありません。

未成年者自身の喫煙そのものについては、第1条で禁止をし、第2条では見つかったら煙草を没収することになっていますが、それだけの話しです。これは何よりもこの法律の保護する対象が未成年者であることによります。未成年者はいわば「被害者」なのです。ここんとこは「大麻取締法」などという出来損ないの法律とは選を異にするところでありますが、一体全体何の「被害者」なのか、未成年者における何を保護法益としているのかよく分かりません。まあ「児童ポルノ」などというのもありますから、「未成年者」が、その周囲にわけのわからない法律をくっつける「心棒」に使われるということの「ハシリ」なのかも知れません。それにしても非行少年への処分は「保護処分」の名目で行なわれますから、「保護」の名の下に処罰を行なうことは別段不可能というわけでもないのです。

もっとも、たかが喫煙くらいで何らかの「処分」を受けるというのは、当時の社会通念上からして著しく穏当を欠くものであったと思われます。この法律の制定は1900年ですが、この当時未成年者の喫煙は一般に許容されていました。問題になったのは小学生で、例えば1893年には学習院長田中光顕子爵が、初等学科生徒の禁煙を命じていますから、皇族も華族もみんなガキの頃からスパスパやっていた模様です。全国的にも、1894年には文部大臣が「小学校で喫煙したり煙草を持ってくることを禁止すること」を命じる訓令を出していますから、当時の小学校(下等科とか尋常科とか)では労働者や百姓のガキも盛んに煙を吐いていたらしいのです。そしてこの時に小学校での喫煙を禁止する主な理由は「防災」でした。

今でも建物の火災の原因として「たばこの不始末」は上位をキープしていますから灰皿には水を張った方が良いようですが、この法律の制定の経緯についてはあまり明かではありません。当時既に医学的なニコチンもしくは一酸化炭素害毒説が存在していましたし、キ印教婦人矯風会の禁煙運動も行なわれていました。しかし当時の日本人の間に「蘭学」や「邪宗門」に基づく通念が形成されていたとは考えにくいものがあります。それにどちらの御説も喫煙一般に反対する根拠ににはなり得ますが、これを未成年者にのみ禁止するという理由を持っていません。「喫煙開始年齢が早いと発癌リスクが上昇する」というような疫学的言説はほんのここ数年のことであり、当時はそういうのはなかったようです。

ところで何でも分からなことは大隈重信に聞け、ということが言われています。何たって早稲田大学を作ったという人ですから、この点についても大隈伯に聞いてみましょう。

「児童の禁酒禁煙に付て」

社會を造るべき少年青年の人格を造るのは今日の急務である。アルコールやニコチン中毒に既にかゝって居る人は打ち捨てゝ置くがよい。これから社會を造らふと云う若い人々には充分禁煙禁酒させねばならぬ。立派な人格を造る上から云ってもどうしても禁酒の必要がある。禁煙させねばならない。長命を保って社會に大いに貢献せんとするには、健康に害なるものを絶対に打ち捨てねばならぬ。それには手近な處から矯めて行かねばならぬ。されば一家の家長たるものもまた學校の教師も此點にかんがみて未成年者の禁酒禁煙に骨を折って欲しい。學校と家庭と連絡を付けて、飲酒喫煙の害をとき、内外共に力を盡して之の為めに盡力する事は実に大切の事で、また此の如き事を励行せんとする人々には社會は充分に同情を表して、好結果を見るやうに助くべきである。

『婦人新報』明治43年(1910年)10月号


法施行後10年を経過してまだこんなことを力説しているところを見ると、未成年者の禁煙が一向に広がっていなかったようですが、既に成人して「アルコールやニコチン中毒に既にかゝって居る人は打ち捨てゝ置くがよい」のだそうです。どうかひとつ打ち捨てておいていただきたいものであります。それにしても闇雲に威勢が良くて根拠が薄弱なところ、まさに「明治」という時代を感じさせるものがあります。根拠も何も、大隈さんとしては酒造業者の方を敵に回すつもりはないのですから、単に「禁酒禁煙」という言葉を振り回しているだけなんですが、そうすると「長命を保って社會に大いに貢献」することになるんだそうです。まあ当時の人の死因にはあまり煙草は関係ない、もしかしてお酒もあまり関係ないんじゃないかと思いますが、何でも良いからとにかく「社会貢献」とでも言っておけばそれで通ってしまうのが「明治」というものです。

しかし、この徹頭徹尾無内容な一文こそ、意外と「未成年者喫煙禁止法」の制定の精神そのものであったのかも知れません。これはつまり人様の生存の目的を「社会」の方が規定するという全体主義的な思考に他なりませんが、しかし考えてみればそのような考え方に基づくのでなければガキが煙草を吸うかどうかを法律で規制しようなどという発想は出て来ようがありません。今どきの若い人はこういう考え方になじまないかも知れませんが、「煙草は害があるから」などどいう後付けの説明を聞いて納得してしまうかも知れません。しかし害があるんならお前が吸わなければ良いだけのことで、法律はいらないでしょう。

実際には当時でも何もそこまでして「社會に大いに貢献」しようという人はいなかったようで、今日に至るまで100年以上、「未成年者喫煙禁止法」は実効性のない法律の代表として「長命を保って」きているわけです。煙草を吸う人の中で未成年者の時分に喫煙をした経験のない人は少ないのではないでしょうか。そこで無意味な法律をただ法律であるからという理由で遵守する純粋な服従の精神を涵養すべく、こいつを「復活」させようというのが例の「タスポ」というものの意味のようなものなのかも知れません。しかしながら勿論国民の中には法の遵守に無頓着な人がいて、ガキが煙草を吸うくらい構わないのではないか、との社会通念に従って行動し、はては科料とか罰金の目に遭うということになります。こういうのは自分が正しいと思うように行動していれば法に触れることはあるまい、という間違った自然法思想の犠牲者であるといえるでしょう。

16歳の息子にタスポ貸与 母親を書類送検

 大町署は1日、たばこ自動販売機用成人識別カード「taspo(タスポ)」を次男(16)に貸し、喫煙を制止しなかったとして未成年者喫煙禁止法違反の疑いで、大町市に住むパート従業員の母親(44)の書類を地検松本支部に送った。同署によると、タスポに絡む同法違反容疑の摘発は県内で初めて。
 調べによると、母親は6月中旬ごろに2回、喫煙すると知りながら自分名義のタスポを次男に貸し、喫煙を制止しなかった疑い。次男は自分で吸うためにたばこ数個を同市内の自販機で買ったという。同署が別の事件の関連で次男から事情を聴く中で分かった。母親は「せがまれて貸した」と話しているという。
 同法は、未成年者の喫煙を親権者が制止しない場合の科料処分を定めている。タスポは6月1日から県内で導入された。

2008年8月2日 支那の毎日新聞


法律は素人の常識を超えるところにあるようです。つまり「悪法」も「法」であり、それには従わなければなりません。ことによると「法」はすべて「悪法」なのかも知れませんが「タスポ」はこのような「法」に従おうとしない不届至極な者をあぶり出す効果があるようです。これも「別の事件」なんだそうですが、山での遭難以外に大町市にどんな「事件」があるのか、興味津々たるものがあります。ところで街のタバコ屋さんが廃業したりして「タスポ」は大失敗のように見えますが、現在の「タスポ」の普及率はおよそ3分の1弱というところであり、これはたばこメーカーの当初の見積もり通りなのです。何も失敗はしていません。全ては予想の内です。タバコ屋の(元)看板娘が廃業しようと首をくくろうと知ったことではありません。「タスポ」は何よりもそれを未成年者に貸し出す「親権ヲ行フ者」を明るみに出しています。いずれも「別の事件」の「ついで」なのにマスゴミに書かせている一方、本事件のほうは不明のままです。そして一方では予想通りの低い普及率によって「煙草又ハ器具ヲ販売スル者」を追い詰める「罠」でもあったのでした。そのようにして実効性のなかった法律は、カミナリの電気をかけられたフランケンシュタインの怪物のように強引に実効性をもたされることになります。

高校生にたばこ、店主を送検=「タスポで売り上げ減」−大阪

 高校生にたばこを販売したとして、大阪府警淀川署は25日、未成年者喫煙禁止法違反の疑いで、大阪市淀川区のたばこ店店主の男(82)を書類送検した。
 店主は「タスポ(自販機成人識別カード)導入で売り上げが月250万円から170万円に減った。売り上げを上げるために売った」と話しているという。
 「中高生にたばこを売ってくれる」とうわさが広まり、区外からも中高生らが頻繁に訪れていた。春ごろ近くの学校から相談を受け、同署が調べたところ、2時間で6人ほどの中高生に販売していた。

2008年7月25日 爺


実効性のない法律の実効性を再び確保しようとする場合に、そうすることによって国民の権利を侵害する程度がその法律の保護法益と比較して妥当な範囲内に収まらなければ、結果としてその法律はやっぱり実効性を失うことでしょう。未成年者の喫煙を禁止することによって得られる益は科学的に確立されたものではなく、単なる「気分」に近いようなものである一方、「タスポ」の導入によって煙草を購入するごとに何の罪もない煙草購入者が個人情報の開示を強制されたり販売店の営業を存続不可能なほどに妨害しますから、損失の方がはるかに大きいと思われます。法そのものの主旨からみると「タスポ」はバランスの悪い仕組みです。財務省はこれ以外にも「成人識別」のための2つの方式を認めていますが、たばこメーカーの独占的地位によって「タスポ」が全ての国民に押し付けられているのは問題でしょう。

しかしながらその法の「精神」と言いますか、明示されないので推測すべきその「目的」においては、そうとは限りません。「悪用」する余地をわざわざ作り出すことに意味がないとも限らないのですし、そのような「目的」においては「国民の権利」などは当然考慮する必要すら認められません。例えば「健康増進法」で使えるうちは元気に働かせて、年を取って「社会に貢献」出来なくなったら「後期高齢者医療制度」でさっさとくたばれという、「明治の精神」というかいわば「大隈侯の精神」は脈々と息づいているのですが、このような明治的もしくはプロシアドイツ的かつまたナチスドイツ的な国家思想の攻勢が「煙草」という予め敗北が予期された「悪役」を巡って行なわれているところに最大の危機があるというわけです。とはいうものの、僕が喫煙者だからこんなことを書くのか、非喫煙者が馬鹿なのでこのようなことに気がつかないのか、一服してよく考える必要がありますな。もちろん煙草くらい嗜んだところで正しい人間になれるわけではありませんが、今どき喫煙しないことを自慢しているような人よりはマシでしょう。


posted by 珍風 at 13:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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