2008年11月29日

安物買いの銭失い

NYのウォルマートで店員圧死 安売りに殺到

 【ニューヨーク28日共同】ニューヨーク市郊外のスーパー、ウォルマート・ストアーズで28日早朝、感謝祭明けの安売りセールに200人以上の客が殺到し、34歳の男性店員が圧死、客4人がけがなどで病院に運ばれた。米国ではクリスマス商戦が本格化したが、景気後退で少しでも安いセールに大量の客が押しかける騒ぎになっている。米メディアによると、事故が起きたのは同市東郊のバリーストリーム店。

2008年11月29日 共同


これだから言わないことではありません。11月13日のエントリ
http://worstblog.seesaa.net/article/109626193.html
にトラックッバックをくれた「反戦翻訳団」さんの11月23日のエントリ
http://blog.livedoor.jp/awtbrigade/archives/50765647.html
によれば、感謝祭明けのこの日、アメリカの「Buy Nothing Day」に当たっていたのです。アメリカでは感謝祭の翌日の「ブラック・フライデー」から歳末商戦が始まる、というわけで、BNDはそれにぶつけているのです。

日本では「無買デー」とか「無買日」とかいって、それが実は今日です。日本では11月の最終土曜日がそれに当たり、これは「御歳暮商戦」が本格化するところですね。BND Japan
http://www.bndjapan.org/japanese2/index.html
によると

 「By Nothing Day(無買デー)とは、1年に1日だけ、本当に必要なもの以外は何も買わずに過ごしてみようという日である。1992年にカナダで始まって以来、今や世界中に広まっているムーブメントであり、日本でも毎年11月最後の土曜日に行われている。
 特定の組織によって主催されているものではなく、任意の団体・個人によるゆるやかなネットワークによって、同時多発的に各地で様々なパフォーマンスや、イベント、勉強会等が開催される。
 メッセージには、大量消費社会や消費至上主義的なライフスタイルにへの警鐘が込められており、テレビCMや流行に盲従するだけでは人類も地球もおかしくなってしまう、そうではない「本当の豊かさ」を考えようと主張している。このような「気づき」を人々に与えるために、キャッチーで知的でユーモラスで、ウィットに富んだスタイルを特徴とする文化変革運動となっている。


んだそうです。これを始めたのはバンクーバーのアイーティスト、テッド・デイヴさんのようですが、「アドバスターズ」という雑誌を出している「アドバスターズ・メディア・財団」がこれを推進しています。「アドバスターズ」の発行人カル・ラスンさんは、東京で市場調査会社を立ち上げて、広告業界にいた人です。彼はその考え方を「カルチャー・ジャミング」と呼びます。それは商業広告の手法や方法論を武器として用い、それをメディア企業や一般のスポンサー企業には迷惑なように使用し、「キャッチーで知的でユーモラスで、ウィットに富んだ」反消費主義・反商業主義的なメッセージを既存の広告文化の隣に割り込ませようとします。それは独自のメッセージを読み取らせるだけでなく、巧くすると一般の商業広告のメッセージの受容過程に介入してメッセージを変容させてしまうかも知れません。

もっとも「買わない」のと「買えない」のとではずいぶん違うようですから要注意です。ウォルマートあたりの安売りに朝の5時から殺到してしまうような人は、その日も残りの364日と同様「本当に必要なもの以外は何も買」え「ずに過ごして」いるに違いありません。ことによると「本当に必要なもの」も買えないのですから、エヴリデイ・ロー・ライフであります。実際、アメリカでは企業などから寄付された食料品を生活困窮者に配っている「フードバンク」では需要が急増する一方で寄付が減少しており、感謝祭ではクリスマス用の在庫も使ってしまったようです。フードスタンプの受給者も増える一方です。ブッシュはフードスタンプの受給資格を拡大する法案に拒否権を発動しましたが下院がこれをひっくり返し、共和党は大統領選で負け、アホ太郎以上に教養のあるペイリンちゃんは寒いところに帰って行きました。

ウォルマートといえば安売りはまあ良いとしても、従業員の給料がそれに輪をかけて安いので、会社は喰うに困っている従業員にたいして、親切なことにフードスタンプの受給を案内しているとかいいます。ほとんどの従業員が非正規雇用で時給4〜7ドルだそうです。フードスタンプの受給資格が概ね4人世帯で月収2500ドルですから、大丈夫もらえます。この会社では低レベルの労働条件を維持するために労働組合の結成を妨害し、組合のできた店を閉鎖したりします。労働組合は「癌」であり、「癌」が広がるのを防ぐためには周りの「健全な」組織も含めてザックリと「切除」するのがやり方なのです。

ウォール・ストリート・ジャーナルによればウォルマートは大統領選でオバマさんに投票しないように従業員に圧力をかけたとされています。というのもオバマさんや民主党は「Employee Free Choice Act」を支持しているからです。これは労働組合の結成に際して投票による選挙によらず署名を集めることによってこれを可能にする法案で、労働者は1人ずつ説得して署名を集めることが出来る一方で、雇用者側が圧力をかけたりするとそのことによって逆に署名が増える可能性があるんですから、圧力をかけにくいわけです。人件費コストを切り詰めることによって競争力を確保する一方で莫大な利潤を挙げているウォルマートとしては困るんですな。

そんなこともあってウォルマート従業員の顧客サービスレベルは極めて低いのですが、おそらく会社側はそれでもビンボー人はやむを得ずウォルマートで買い物をせざるを得ないと踏んでいますから、その点での改善の見込みはありません。しかし近年のウォルマートの売上低迷について、一般的な観測ではその原因を顧客満足度に求めているようです。

従業員が踏み殺されるほど買い物客が殺到したことで、ウォルマートとしては従来の方向性に自信を持ったかも知れません。金融不安と景気低迷と格差拡大と窮乏化がウォルマートを支えます。しかし全世界5000店舗以上で働く従業員の士気は落ちまくりでしょう。いくら何でも踏み殺されるというのはちょっと困ります。それでも労働条件の悪い会社は、優秀な従業員を雇用できる可能性が低い一方で、低質な労働者が居座り、優秀な新入りを虐めて追い出したりするものです。本当はこういうのが「癌」であることを、多くの企業経営者は知っているのですが、ウォルマートが進出してきて潰されたりするのです。それに食料品の購入価格が下がれば、他の企業も人件費を下げることが出来るのですから、マスゴミもウォルマートに批判的な報道はあまりしないようです。

そんなウォルマートを応援したり他人を踏み殺すことに興味が持てない人は、「本当に必要なもの」であってもウォルマートでは買い物をしないものです。これは特に日を決めなくても毎日できますし、日本でもやれます。株式会社西友は今ではウォルマートの完全子会社ですから、誰でもお近くの西友に行かなければよいだけのことですから簡単です。もっとも西友には昔から労働組合はあって、今でもあります。日本の流通業界の労組は旧同盟系の右翼ですから、これを潰して一般労組に流れられたりするよりはそういう組合があった方が良いわけで、これは中国のウォルマートに労働組合があるのと同様です。

まあ、西友労働組合の労働者諸君を苦しめても仕方ないんですが、ウォルマートは東アジアでは苦戦しており、既に韓国からは撤退、西友の低迷ぶりもちょっと見物に行くだけでも可哀想なくらいですし、既存の流通各社の警戒感は強く、西友を上回る安売り攻勢をかけていますので、そのうちウォルマートを日本からも追い出すことも可能かも知れません。だからといっていつも犠牲になるのはそこで働く従業員なんですが。そこの従業員でない人も、安いものばっかり買ってると、それは巡り巡ってあなたの収入を低下させます。

西友:チラシ見て「他社より高ければ値引き」 4日から

 西友は3日、他社のチラシに掲載された特売価格が西友よりも安い場合に販売価格を引き下げる「他社チラシ価格照合」制度を全387店で4日に始めると発表した。食料品や家電製品など比較可能なメーカー品が主な対象で、大手スーパーでは異例の取り組み。消費者の節約志向が強まる中、「地域最低価格」をアピールして顧客の取り込みを図る。
 値引きが受けられるのは新聞の折り込みチラシを持参した顧客で、店頭の表示価格そのものは変更しない。総菜や酒、数量限定の特売商品などは除外するが、同じ都道府県内なら、家電量販店のチラシも対象となる。
 西友は今年6月に米ウォルマート・ストアーズの完全子会社となり、折り込みチラシの削減や物流効率化などのコスト削減を進めてきた。野田亨最高執行責任者は「他社との価格競争に対応する体制が整った。地域で一番安い店を目指す」と話している。【小倉祥徳】

2008年12月3日


血を吐きながら続ける哀しいマラソン。


posted by 珍風 at 19:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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