2008年12月27日

スーパー遺族のスーパーマリオネットワールド

しかしそれにしても「遺族」というものはやはり普通の人とは違う心持ちを持つものであります。しかしある意味では「普通」と同じなのかもしれません。何が「普通」なのかよく分かりませんが、被告人にも遺族にもおそらく「怒り」というものがあって、それはありふれた感情の一つであると言って言えない事もありません。

被害者遺族が県内初の少年審判傍聴 「犯行経緯知りたい」

少年審判を傍聴後、沢田智章さんの遺影とともに会見する父親の容之さんら(中央)=千葉市中央区(平田浩一撮影)
 香取市で11月、千葉銀行員の沢田智章さん=当時(24)=が軽トラックにはねられ殺害された事件で、千葉家裁(松野勉裁判長)で開かれた同市の土木作業員の少年(19)の第1回少年審判を沢田さんの遺族が傍聴した。県内で犯罪被害者やその遺族が少年審判を傍聴するのは初めて。
 原則非公開とされてきた少年審判を事件の被害者や遺族が傍聴できるようにする改正少年法が今月15日に施行されたのに伴うもので、傍聴後に会見した父親の容之(やすゆき)さん(55)は「(被害者が)亡くなっている事件では、(審判で)家族が意見を言えることはいいことだと思う。制度に感謝している」と評価した。
 母親の美枝子さん(52)は「この犯人が息子の命を奪った。最初は目の前にいる犯人を見るのが怖かった」と、息子の命を奪った少年を目の当たりにした心境を語った。
 遺族らは、傍聴希望を家裁に伝えた理由を「犯行に至るまでの経緯など、傍聴しなければ分からないことを知りたい」としていた。

2008年12月26日 産経ニュース


これなんかごくおとなしめな方です。被害者の父親の容之さんは「制度に感謝している」と言ったそうです。一方母親の美枝子さんは「最初は目の前にいる犯人を見るのが怖かった」そうです。最初は怖くて、その後どうだったのかわかりませんが、なんだか拍子抜けするほど冷静なコメントであるといえるでしょう。産經新聞らしくもない、ような気もしますし、いや充分「らしい」というような気もします。

千葉・香取のひき逃げ殺人:遺族が傍聴、意見陳述 19歳少年を逆送−−千葉家裁

 千葉県香取市で11月、千葉銀行小見川支店職員、澤田智章さん(24)=成田市=が軽トラックではねられ殺害された事件で、殺人の非行事実で家裁送致された香取市の土木会社員の少年(19)に対する少年審判が26日、千葉家裁であり、松野勉裁判長は、刑事処分が相当として、少年を検察官送致(逆送)する決定を出した。15日に始まった少年犯罪の被害者傍聴制度を利用して遺族が審判を傍聴、意見陳述も行った。
 決定によると、少年は11月10日午後7時50分ごろ、香取市小見川の県道で、歩いて帰宅中の澤田さんを後方から軽トラックではね、殺害。松野裁判長は「非行態様が悪質で、反省もない」と指摘した。
 審判では、澤田さんの父容之(やすゆき)さん(55)、母美代子さん(52)らが傍聴し、意見陳述。美代子さんは「息子は数年後、結婚も考えていた。息子がどんなに痛かったか。大事な宝を失った遺族の気持ちがわかりますか」と悲しみを語った。会見した容之さんらは「傍聴して少年の人間関係を知り、事件は起こるべくして起きたと認識した。適切な対応をしていれば、事件は起こらず、息子が死ぬこともなかった」と話した。【寺田剛】

2008年12月27日 毎日新聞


同じ件についてですが、いつの間にかお母さんの名前が変わっています。どっちが正しいのか知りませんが美代子さんによれば被害者は「数年後、結婚も考えていた」んだそうです。24歳の男性が「数年後」に「結婚」するつもりでいることはあまり珍しいことではありませんが、「婚活」が云々されるこのご時世だとなかなか恵まれた境遇なのかも知れません。もしかするとこれは彼女がいたという意味なのかもしれません。そこへいくとオヤジに怒鳴られっぱなしの土木社業員君だか土木会社員君について、容之さんは「少年の人間関係を知り、事件は起こるべくして起きたと認識した」そうですから、肉体労働者君は結婚する予定がなかったり余裕がなかったり相手がなかったりでもしたのでしょうか。

ところでご両親はちゃんと「意見陳述」もしていたのでした。

「絶対に許せない」=意見言え、意義あった−少年審判傍聴の遺族が会見・千葉

 「絶対に許せない」。千葉県香取市の路上で11月、銀行員沢田智章さん=当時(24)=が軽トラックにはねられ死亡した事件で、千葉家裁で開かれた少年審判を傍聴した沢田さんの両親らが26日午後、千葉市内で記者会見し、傍聴時の感想などを語った。
 父親の容之さん(55)は、少年審判の意見陳述で「車を凶器にし、安心して歩いているところを後ろからむごたらしく殺した。死刑にできない理由があるなら教えてほしい」と述べたことを明らかにした。
 母親の美代子さん(52)は「息子はすごいスピードではねられ、車、塀、路面と3回たたきつけられた。3回、同じやり方で死刑にしてやりたい」と胸の内を吐露したと説明。「まだ24歳で何もかもこれから。目標の銀行に入り、友人も多かったのに」と悔しさを訴えたという。
 少年審判の傍聴制度が導入されたことについて容之さんは「傍聴しないと分からない事件の内容が多々ある。運動して制度を作ってくれた人たちに感謝したい」。美代子さんは「(少年を周囲が)どこかで止められたのではないかとの思いを新たにした。(少年を)見てさらに傷ついたが、病院で智章の最期を見取った者として、意見を伝えられたのは意義がある」と述べた。

2008年12月26日 時事


容之さんは「死刑にできない理由があるなら教えてほしい」と言ったそうです。誰か教えてあげて下さい。美代子さん(どうもこっちの方が正しいのかな。多数決でこっちでいいですか)に至っては最初の「怖さ」はどこへやら、「息子はすごいスピードではねられ、車、塀、路面と3回たたきつけられた。3回、同じやり方で死刑にしてやりたい」と、なかなか勇ましい「意見」を述べられた模様です。

1人の人間を「3回」も死刑に処するというのはちょっと無理な相談のようでもありますが、その昔は1人の人間に対して単独でも致命的となるような処置を連続して数種類執行するというやりかたがあったものです。イングランドでは反逆者に対しては「Hanged, drawn and quartered」という一連の行程が定められており、最初に首吊りをして死んでしまう直前に降ろし、台に載っけて生殖器を切り落とし、内臓をえぐり出した後で首をはね、最後に死体を4つに分断して各所に晒す、という手の込んだことをやっていたものです。

被害者は「目標の銀行に入り、友人も多かった」そうであります。美枝子さんだか美代子さんは被害者がいかに立派な「大事な宝」であったのか、銀行員で友達に恵まれ彼女がいるとか、そういう素晴らしい若者が、土方風情に殺されてしまったので憤懣やるかたないご様子であります。しかしまあ、これは「遺族」の言うことなんですから何事も大目に見てあげるのが大人の対応というものでしょう。なんといっても実際に遺族なんだし、死刑を求めているし、それも少年事犯に対してですから、「大目に見る」どころか大いに利用価値があるというものです。

「遺族」の利用法はこれだけには留まりません。検察は思うがままにこれを利用するでしょう。

保護男性死亡、警官9人不起訴=投薬ミスの医師も−高知地検

 高知県警香南署で2007年、保護した男性が署員に押さえ付けられて意識不明になり後に死亡した事故で、高知地検は26日、業務上過失致傷容疑(その後業務上過失致死容疑に切り替え)で書類送検された当時の同署刑事生活安全課長ら警察官9人全員について、不起訴処分とした。
 地検は、不起訴とした理由について、被害者の特定を望んでいない遺族の希望に配慮したなどとして明らかにしなかった。
 9人は07年5月29日、保護した50代男性が取調室で暴れた際、タオルを口の中に押し込み、低酸素性脳症による意識不明にしたとして、同年10月に書類送検された。
 また地検は同日、県立安芸病院で05年2月、看護師への指示を間違え患者に誤った薬剤を投与して死亡させたとして、業務上過失致死容疑で書類送検された30代の男性医師も不起訴処分とした。

2008年2月26日 時事


こっちでは逆に、みんなで寄ってたかって人を窒息死させた9人の警官を不起訴にするために「遺族」が利用されています。「投薬ミス」と人の口にタオルを押し込むのとではかなり様相を異にすると思われてなりませんが、「遺族」が「被害者の特定を望んでいない」ことが不起訴にした「理由」であると思われます。まったく日本は良い国で、死刑にするのも不起訴とするのもすべて「遺族」の思うがままであるということでしょうか。「遺族」さえ希望するならば人くらい殺したところでおとがめなしの殺人天国です。

警察すなわち加害者側によれば、この男性は香南市内の民家に侵入したとして通報され、「意味不明な言動」をしていたため取調室で「保護」していたところ、暴れて「舌を噛み切ろうとした」ので自殺を防ぐためにタオルを口に突っ込んで15分間押さえつけていたということであります。何があったのかよく分かりませんが、警察に「保護」されたというだけで白眼視されがちであるところ、この場合は「犯罪者」でなければ「キチガイ」扱いになる話しになっており、「被害者の特定」がなされれば「遺族」は周囲から爪弾きに遭う、息子の就職が娘の縁談が、ああ、という点などについて懇切丁寧な説明が行われたものと思われます。

その一方で高知県警は遺族と被害者の治療費を負担した自治体に対して合計で909万円の損害賠償を「専決処分」で支払っています。つまり事の「緊急性」に鑑みて勝手にお金を払っちゃったわけだ。遺族から一筆取ったかどうか知りませんが、909万円は全部遺族に払ったんじゃないんですから、ちょっと安いようです。しかしその分スピード感をもってやったわけですね。まあ、そういった有形無形の圧力によって、「遺族の希望」というものがプレスにかけられたように形作られた、ということなんでしょうか。

最近の検察の仕事は「遺族」の「気持ち」を圧縮したり膨張させたりちょっとガスを抜いてみたり爆発させてみたりすることのようですが、相手はどちらかというと最初から気が動転したりしていますから、まずカモの気を動転させるところから入る「振り込め詐欺」に比べれば楽な仕事であると言えるでしょう。


posted by 珍風 at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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