2009年02月18日

行列のできる法廷ヘキサゴンU

始まる裁判員制度:「証人威迫」に厳しく 取り調べ録画、4月に本格実施−−最高検

 ◇基本方針
 最高検は17日、5月に始まる裁判員制度の下での捜査や公判の基本方針をまとめた。「裁判員に分かりやすく、迅速で、的確な立証が必要」と指摘した上で、公正な判断を確保するために裁判員や証人を脅す行為などに厳しく臨む姿勢を打ち出した。取り調べの一部を録画する試みについては、4月から本格実施する方針も示した。【坂本高志】

 最高検は06年3月に裁判員制度に向けた「試案」を公表しており、その後の取り組みや模擬裁判の分析などを踏まえて基本方針をまとめた。捜査・起訴▽公判前整理手続き▽公判−−の各場面で、検察官が留意すべき事項を列記している。
 基本方針の主なポイントは次の通り。
 《供述調書》
 法廷でのやり取りを審理の中心に置く裁判員制度でも、捜査段階の供述調書は重要な役割を果たす。必要に応じて容疑者とのQ&A方式の調書を作成するなど、裁判員が分かりやすいよう努力する。
 《取り調べの一部録画》
 容疑者が不当な取り調べを受けて自白したのではないことを効果的に裁判員に分かりやすく立証するために用いるが、取り調べの機能を害さないよう慎重さを要する。
 《公判》
 冒頭陳述や論告は品位あるものにしつつ、平易な日常用語で簡潔に取りまとめて行う。裁判員の理解を助けるため、現場の概略図や人間関係図などの「ビジュアル化」も活用。遺体写真などは、裁判員の心理的負担を考慮し、事前に告げた上で示すほか、遺族に配慮し、傍聴席から見えないように回覧するなど工夫する。
 《偽証や証人威迫など》
 裁判員が判断を誤らないよう、偽証、証拠隠滅、証人威迫などについては積極的に罪の成否を検討し、従来より厳格な姿勢で臨む。事件関係者から裁判員に働き掛けや威迫行為があれば警察と協力し厳正に対処する。
 《被害者参加制度》
 公判で検察官と被害者参加人に食い違いが生じないためにも、意思疎通に万全を期す。
 ◇取り調べ録画、「有用」と結論
 最高検は17日、06年8月から試行してきた取り調べの一部録画の検証結果をまとめた。裁判員制度の対象となる重大事件のうち容疑者が自白しているケースが対象で、自白理由を聞いたり調書の内容を確認する場面をDVDに録画している。
 昨年末までにDVDが法廷で上映され、裁判所の判断が示されたケースは15件。うち14件で被告の供述の任意性が認められたことから、「有利、不利を問わず、有用な証拠となり得る」と結論付けた。
 昨年4〜12月に一部録画を実施した1512件のうち、被告の供述内容が変化したケースは86件(約6%)あった。検察側からみて供述が後退したり、あいまいになるなどの変化が多く、否認に転じた例も3件あった。【安高晋】

2009年2月18日 毎日新聞


世の中何が立派だと言って大きな家に住んだりお金を沢山持っているのがエラいのではありません。住所不定無職の渡部さんが社会に貢献することかくのごとく大であります。「被害者」であろうが「証人」であろうが、要は検察側にとって有利な「事実」を述べる人ですから、それを邪魔するものに対しては最高検察庁として「従来より厳格な姿勢で臨む」ことにするのも当然です。

同様に「被害者参加制度」についても、これを検察の道具として明確に位置づけ、「公判で検察官と被害者参加人に食い違いが生じない」ように「意思疎通」をはかることになりました。「被害者」がみんながみんな「アスの会」の人々のような「良い」被害者であるとは限りませんから、事前によく脅かしておいて、おだをあげたり、検察より軽い量刑を言ったりしないように充分注意しなければなりません。

ちなみに、「一部録画」が行われた1512件のうち、法廷で上映されて裁判所の判断が示されたのが15件だそうで、1%にも満たないのでどうも何とも言い難いのですが、その15件のうち「任意性」が認められなかったのが1件あったそうです。あまり意味はありませんが、1件というのは15件に対して約6.7%です。また、「任意」であったはずの1512件のうち86件において供述内容が変化しています。これが5.7%くらいに当たりますから、検察が自信を持ってお送りした「映像作品」も5〜7%が役立たずのキズモノです。

録画しているのは自白したケースだけです。犯罪白書によると2007年の裁判員裁判対象事件は2436件、2008年は2300件くらいになりますか。そのうち9カ月分が1725件とすると、まあ200件くらいが自白してない事件ということになるでしょう。しかし自白していないケースにおいても、取調べの全課程を観ることが出来れば、裁判官としては心証を形成する助けになるのではないでしょうか。自白してないから検察の有利にはならないというのは早計で、検察は自分に都合の良いところだけ見せようとして、かえってその証拠価値を減殺しています。

もっとも裁判員制度においては、長期にわたる取調べの全課程を検証することが出来ないという事情もあります。これはむしろ取調べが長過ぎるのが問題なのですが、「迅速」に拘る、てゆうかそれを理由にしていい加減な裁判をやるのは考えものです。この点について最高裁判所が500回の模擬裁判を分析した結果が報告されています。なぜ模擬裁判を分析するのかというと、実際の裁判について最高裁が「問題があった」とか言えないもんですから。

始まる裁判員制度:審理短縮より真相重要 「模擬」500回分析、最高裁が指摘

 ◇有用証拠切り捨ても
 最高裁は、5月に始まる裁判員制度に向け全国で500回以上行われた模擬裁判を分析し、報告書を作成した。最高裁は国民の負担軽減のため「対象事件の9割が5日以内に終わる」と審理期間短縮に重点を置いた取り組みやPR活動を進めてきたが、報告書は「事案の真相解明は、審理期間の短縮以上に重要な課題」と指摘した。【北村和巳】
 ◇調書活用も柔軟に
 報告書は裁判員裁判の基本原則として、(1)裁判員が審理内容を理解し意見を述べられる(2)合理的期間内に審理を終え国民の負担を少なくする(3)刑事裁判の目的の真相解明、被告の権利保護−−を挙げた。(1)(2)への配慮の行き過ぎは(3)の軽視につながると指摘した。
 それを踏まえ、争点を絞り込む公判前整理手続きについて検討。「模擬裁判では証拠の総量を減らそうと、真相解明に有益な証拠まで切り捨てる例があった」と問題点を挙げ、「証拠点数を減らすことのみに力を注がず、真相解明に不可欠かで整理することが必要」とした。
 また、裁判員制度は証人や被告が法廷で直接話して立証することを原則とするが、事案により捜査段階での供述調書の活用も柔軟に考慮すべきだとした。
 ◇被害者質問適切に
 刑事裁判への被害者参加制度が裁判員に影響を及ぼす可能性も懸念されることから、全国各地で遺族役が参加した模擬裁判も行われた。報告書は「検察官が被害者参加人の質問事項を十分に検討し、相当性を適切に判断することが不可欠」と示した。被害者参加人の不相当な発言は検察官に注意してもらい、裁判官は手続きの意味を裁判員に説明することが必要と指摘した。
 ◇裁判員選任公平に
 裁判員の模擬選任手続きも240回以上行われた。
 選任手続きでは、裁判官が候補者を呼び出して質問し、不公平な裁判をする恐れがないか判断する。検察官や弁護士は裁判官を通じた質問を基に、各4人まで理由を示さず不選任とするよう求められる。
 報告書は、幅広い国民の感覚を反映させる制度の趣旨を踏まえ、「候補者が検察側、弁護側に有利かどうか見極める目的の質問や、人柄や能力を探るための質問は許されない」と明記し、必要最小限にとどめるべきだとした。

2009年1月26日 毎日新聞


早けりゃいいってもんじゃないそうです。特に「公判前整理手続」について上級審ではあまりにもあんまりなものについては手続き上の瑕疵として差し戻すような例もあり、それ自体の問題性を最高裁も認識しているところです。もっともこの手続は裁判員にも公開されずに行われますから、実際に行われている裁判において「真相解明に有益な証拠まで切り捨てる」ようなことがあるかどうかは、誰にも分らないようになっています。最高裁として言えることは、模擬裁判でこういうことがあったから、実際にもそのようなことがある可能性がある、ということだけです。つまり要するにそういうことは既に行われているわけです。

録画についてはここでは述べられていません。「疑わしい自白の録画」を用意するのが難しかったのかもしれませんし、自白をして録画があるにもかかわらず真犯人ではなかった、というような設定が避けられたのかも知れません。最高裁としては検察に真っ向から対立するような、そんないやがらせのような模擬裁判は行えないでしょう。

「被害者参加制度」については、最高裁の表現は穏便なものです。「相当性」というのがどういうことかよく分かりませんが、検察が「被害者」が勝手なことを言い出して「食い違い」を生じないように、自らの道具として思い通りに動いてもらうことに注意しているのに対して、最高裁では裁判員に及ぼす影響に留意して「不相当」なことを言う「被害者」は検察官に「注意」してもらう、としています。いかにも公平な立場から言っているようにも見えますが、結局は同じことでしょう。

検察も裁判所も「被害者」の言動に注意を払い、要するにあまり邪魔にならないように見張っています。「加害者」であるかもしれない被告人に比べてもあまり自由な立場ではありませんが、仕方ないでしょう。裁判は検察と被告人の間で行われているので、最初から「被害者」の立場なんかどこにもありません。そこをなんとか無理して検察官の隣に座らせてもらっているのですから、周りの人の言うことを良く聞いて、おとなしくしていることが肝心です。業務上過失致死で死刑だとか言ってると「注意」されたり別室で「意思疎通」を受けたりします。

それはともかくとして、「(1)裁判員が審理内容を理解し意見を述べられる(2)合理的期間内に審理を終え国民の負担を少なくする(3)刑事裁判の目的の真相解明、被告の権利保護」つーのが「基本原則」なんだそうですが、「(1)(2)への配慮の行き過ぎは(3)の軽視につながる」んだそうです。で、(1)と(2)は裁判員制度を成り立たせる条件であり、(3)というのは「刑事裁判の目的」だというんですから、裁判員制度は刑事裁判の目的と矛盾するものである、と最高裁が言っています。困ったことですが実際のところそのように言っています。最高検が「裁判員に分かりやすく、迅速」にやろうとすればする程、それは「刑事裁判の目的」とは相容れないということになってしまいます。

一部の検察官は「真相解明」よりも点数を上げることに血道を上げているのかも知れませんし、「アスの会」は被告人の血に飢えているのかも知れませんが、それ以外の大多数の人々にとって裁判員制度は無ければそれに越したことはないようなものです。しかし特に最高裁にとってそうであるようなのが何とも言えません。もう始まる前から「ヤダ」と言っているのと同じです。「でも、やるんだよ」ということであれば、1回無駄に裁判をやることになるわけです。みんな疲れるでしょうが、特に地裁の裁判官には地獄が待っています。早く出世して上級の裁判所に勤務したいと思う人が増えることでしょう。

しかし特に被告人にとっては、公正な裁判を受ける権利が1回失われることになりますから大損です。弁護士の費用もバカになりません。裁判員に駆り出される人たちも、ちゃんとした裁判に参加出来るわけではありませんのでいい迷惑です。マトモな裁判が行われる可能性があるのは控訴審からということになり、最高裁では事実調べはしませんから、三審制は崩壊し、事実上一回だけの即決裁判になります。しかしそれが裁判員制度の目的だったのです。どうもそうとしか考えられません。

例えば今日判決が出た星島さんの裁判では、検察は「分りやすい」ように大型モニタに死体の断片を映写したり、人形を使った「再現ビデオ」を上映してあろうことか遺族にショックを与えてみたり、被害者の生い立ちをスライドで紹介するなどという結婚式場の披露宴まがいの演出を行って、産經新聞にすら「ワイドショー化」といわれるほどの「やりすぎ」を敢えて行っています。

平出喜一裁判長は星島さんが被害者を殺害後すぐ解体に取りかかる一方でインタビューに答えたりしていたことに「相応の犯罪的傾向」を認める一方で、今回の犯罪事実そのものについては「妄想の産物であってずさん」と評し、その殺害の計画性を否認して無期懲役判決を出しています。人格と犯罪事実とは別であって、星島さんに犯罪的傾向があるからといって実際に行われた犯罪がそれほど立派なものではないという判断です。

「プロの判決はこんなもんじゃい」といったところでしょうか。この判決は重要であり、検察が裁判員制度を意識しているのであれば平出さんもそれを意識して判決を書いています。これから裁判員たる素人衆が、検察の繰り広げるTVのワイドショー以下の残酷と泣かせの「犯罪ショー」にさらされ、「遺族」の被告人の血を求める叫びに直面するたびに立ち返るべき範例となるような判例になるように、平出さんは判決文を書いたようです。しかしこれとてもやはり妥協の産物であり、いくら「犯罪傾向」があるように見えるとしても実際には犯歴なく素行不良者でもなく殺害に計画性も認められないところ、有期刑が相当ではないかという気もします。死刑は回避したものの厳罰化は進行しているものと観るべきでしょう。

とはいうものの裁判員候補者の「能力を探るための質問は許されない」そうです。「能力」の定義にもよるわけですが、やはり裁判員制度というのはそこらのバカがノリと気分で判決を下すという、「ワイドショー」というよりは「バラエティー」に近いものになることは間違いありません。


posted by 珍風 at 16:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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