2009年03月20日

あなたもわたしも犯罪者

名地裁「悪質性重大な脅威」 名古屋・千種拉致殺害

 名古屋市千種区の会社員磯谷利恵(りえ)さん=当時(31)=が2007年8月、拉致、殺害された事件で、死刑を求刑された3被告のうち2被告に死刑、自首した被告に無期懲役を言い渡した18日の名古屋地裁判決。近藤宏子裁判長はインターネットの闇サイトを通じて知り合った男らが、虚勢を張り合う中で犯罪を凶悪化、巧妙化させていった点を重視した。「悪質性の高い種類の犯行で、社会にとって重大な脅威」とし、被害者が1人で複数の被告に死刑を言い渡すという異例の判決を言い渡した。
 強盗殺人や逮捕監禁などの罪で判決を受けたのは神田司(38)、堀慶末(よしとも)(33)、川岸健治(42)の3被告。判決後、神田被告の弁護人は控訴。堀被告の弁護人は堀被告と話し合って控訴するかどうかを決めるとしている。
 同裁判長はそれぞれの役割について、神田被告は最も積極的に殺害の実行行為に及んだとし、堀被告は人を拉致監禁して強盗するという計画を当初から提案していたと指摘。自首した川岸被告は闇サイトに書き込みをして人を集め、被害者に性的暴行を加えようとしたと述べた。3被告の刑事責任については、犯行の経緯や状況に関して「量刑上、特に、刑種の選択を分かつほどの差異を設けるべき事情はない」とした。
 その上で、今回のような犯罪は「犯罪者の発覚、逮捕が困難」と指摘。悪質性が高い犯罪だからこそ、川岸被告が短時間で自首して共犯者の逮捕に協力し、「その後に起こり得た犯罪を阻止した」ことは量刑上、有利な事情であると評価。「川岸被告について、極刑をもって臨むには、ためらいを覚える」と述べた。一方、神田、堀両被告については、被害者が1人であることや粗暴犯の前科がないことなどを考慮しても「極刑をもって臨むことはやむを得ない」と結論付けた。

2009年3月19日 中日新聞


川岸さんが言い出しっぺのくせに1人だけ量刑が違う点について、富美子さんやなんかは悔しがっていますし、世間でもそういう意見も多いようです。確かに死刑と無期懲役とではだいぶ違うようですから、無理もないことだとも言えるでしょう。

報道によれば川岸さんについて富美子さんは「人を殺して『ごめんなさい』と自首すれば自分の命は守れるなんて、日本の司法はおかしい」と言っているようですが、「自首」と「ごめんなさい」は違います。「自首」というのは「自分がやりました」ということであり、謝罪や反省とは別のことではないでしょうか。反省というのは陣内智則君なんかがやっていれば良いことなのです。

実際にはこの事件では加害者と被害者になんの繋がりもなかったわけですが、普段は被害者の関係者の誰かを締め上げて「自白」させるのが精一杯の警察は、このような場合に物証などから犯人に迫っていくということが全く出来ないことから「犯罪者の発覚、逮捕が困難」であったところ、川岸さんの自首によってなんとか犯人の逮捕に漕ぎ着けたわけで、判決ではその点を評価しています。実際のところ川岸さんの自首がなかったら、交際相手の大学院生君などは警察によってかなり酷い目に遭わされたに違いありません。

問題は川岸さんの刑が軽減されていることではなく、刑の軽減が死刑を基準として行われたことです。死刑の下、ということになると無期懲役、仮に保釈の可能性のない終身刑というものを想定しても、命に別状があるわけではありませんからその差は無限に大きいものです。そうかといって「半殺しの刑」というものはありません。「半殺し」といっても要するに生きているんですから。「死刑」は他の刑とは次元を異にしており、生命を奪うということは加減したり調整したりすることの出来ないことなのです。

このような事情がありますので、死刑判決は抑制的であらざるを得ず、例えば「永山基準」なんてものがあってそれを参考にすることになっています。この事件で死刑判決が妥当であるかという点については様々な意見があるようですが、他の判例と比較してあまり整合的でないことは確かなようです。近藤さんはここで死刑判決を書く必要などはなかったのではないでしょうか。

世の中には意地の悪い人がいて、近藤さんが女性なもんだからこの裁判では厳しい判決を出すだろう、なんてことを言う人もいたもんですが、それは近藤さんに失礼でしょう。もしそんな心配があるのでしたら、近藤さんに担当させなければ良いわけです。しかしながらそのような可能性を見越して、あえて女性の裁判官に任せた、ということがなかった、と言っているわけではありません。

いずれにしても近藤さんは誰に頼まれたのか偏見があったのか知りませんがとにかく原則死刑、という考えで出発してしまったので、それから川岸さんについて刑を軽減することになった時に、人を殺す「死刑」と他の刑罰の間に存在する乗り越えることの出来ない深淵をみんなで覗き込まなければならないハメに陥ってしまったわけです。別に覗き込んだからって深刻な話しではありません。なんかちょっとヘンだな、というくらいの軽い違和感でしかありませんが。

川岸さんのおかげで冤罪の恐怖から救われた大学院生君は被告人達に「反省がないのが残念」がっていますが、一般に刑罰というものは「反省」のあるなしに関わらず課せられるものです。罰を受けてから懲りれば良いものとされているわけですが、「死刑」に限っては事前に「反省」することが期待され続けています。なんたって死んでしまったら「反省」も何もないわけですから。ところが刑罰は一般にその執行を通じて反省を促すことが期待されているものなのですから、「死刑」と「反省」は矛盾をきたします。特に一部死刑拡張派が指摘するように、刑の執行は確定後6カ月以内に、あまり「反省」したりする暇もなく行われなければならないことになっているのですから尚更ですが、「死刑」を求めるのならば「反省」を期待すべきではなく、「反省」を求めるのであれば命を奪うわけにはいかないのが道理です。

たとえばかつてはカウボーイハットの「警部」が38口径を撃ちまくっていたニューメキシコ州でも死刑が廃止されたそうですが、ここでは「更生」が強調されています。

ニューメキシコ州が死刑廃止=合憲判断後2州目、7月1日施行−米

 【ロサンゼルス18日時事】米南部ニューメキシコ州のリチャードソン知事は18日、先に同州議会で可決した死刑廃止法案に署名した。7月1日から施行される。同州によると、1976年に連邦最高裁が死刑に合憲判断を下して以降、逆に死刑制度廃止に踏み切るのは東部ニュージャージー州に次いで2番目。
 同知事は声明で、「困難な決断だが、無実の人間が処刑される懸念が払しょくできない以上、(死刑制度は)封印すべきだ」と指摘した。また、容疑者特定のDNA鑑定も完ぺきでなく、社会の安全確保には更正という代替手段があるとの認識を示した。

2009年3月19日 時事


アメリカ南部で死刑廃止は珍しいとはいえ、ニューメキシコ州ではカトリックが比較的多数を占めるということも関係しているかも知れません。プロテスタントが残酷な神の前に個人を放り投げてしまうのに対してカトリックは教会によって統合された「社会」が危険な神様から人々を守ることになっていますから、「社会的再統合」という意味での「更生」が上手く機能する可能性があります。

もっとも日本の「世論」が受刑者の「更生」に期待しているのかどうかは微妙です。裁判官ですらお友達が刑務所から帰って来ると絶交するそうですから、社会全体として「更生」を拒否しているのかも知れません。これは誰かをみんなでハブにしていじめて楽しい思いをする、という以上の意味を持っていると考えられます。人々が最初から「回復」すべき「尊厳」もなく、「社会」に「統合」されているという感覚も持ち合わせていないのであれば、犯罪者が「更生」する可能性などを信じることが出来なくても不思議ではありません。

連中が「更生」するはずなんてない、なぜなら自分だって法を破ったりしてはいないものの「更生」していないことについちゃ犯罪者と同じだから。ネットで募った人間を信用するほど甘くないし誰も信用しない。連中はしくじったようだが、金さえあれば「社会」を越え出ることが出来るはずなんだ、金持ちはみんなそうしている。というわけでなかなか剣呑な世の中です。


posted by 珍風 at 12:11| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なかなか面白い視点からの意見ですね。私もそう思います。
Posted by toolisugari at 2009年03月23日 14:49
いや、僕はそう思いません。陣内智則君は反省しなくてもいいと思います。そもそもあれは結婚ではなかったし、陣内君にも紀香さんにも結局プラスになりませんでした。てゆうか2人とも魅力がなさ過ぎました。だいたい「格差」というほど「差」があるわけじゃなかったじゃん。身長はともかくとして。
Posted by 珍風 at 2009年03月24日 21:36
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裁判 永山基準
Excerpt: 今回の光市母子殺害事件で被告に「死刑」が確定しました。私的には、世論が裁判を....今回の光市母子殺害事件で被告に「死刑」が確定しました。私的には、世論が裁判を動かし結果的によっかったと思います。それ..
Weblog: おもろ〜な経済ニュース
Tracked: 2009-03-23 05:39
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