2009年07月29日

慢心の、惨心による、乱心社会の実現

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3人の死刑を執行 大阪の自殺サイト殺人など

 法務省は28日、死刑囚計3人の刑を執行したと発表した。死刑執行は今年1月29日以来6カ月ぶりで、麻生太郎内閣で3回目。この日の執行で死刑確定囚は計101人となった。執行されたのは前上博死刑囚(40)=大阪拘置所、山地悠紀夫死刑囚(25)=同、中国籍の陳徳通死刑囚(41)=東京拘置所。いずれも判決確定から3年以内の執行だった。
 確定判決などによると、前上死刑囚は2005年2〜5月、無職女性(当時25)ら3人をインターネットの自殺サイトを通じて次々に誘い出し、いずれも手足を縛り上げ、口や鼻をふさいで窒息死させ、大阪府河内長野市の山中に遺体を放置するなどした。
 前上死刑囚は大阪地裁での一審の段階から「死刑の場合、半年以内に手続きを終えてほしい」などと話していた。07年7月、弁護側が行った大阪高裁への控訴を自ら取り下げて死刑が確定していた。

2009年7月28日 NIKKEI NET


ちょうど半年の間執行がなかったんですが、これは裁判員制度への抵抗が思いの外強かったことによるのではないか。ムード的に厳罰化を煽る中ではつい見過ごされがちですが、死刑判決を出すということは被告人を殺すことです。刑の執行は「死刑」に関するこの単純な事実を思い出させてしまう虞れがあります。

足利事件、てゆーか久間さんの冤罪処刑殺害事件の影響もあるかもしれませんが、足利事件において新たな鑑定結果が知れたのが5月のことですから、これはいつものペースでいけばその1〜2週間前に行なわれるはずの執行を見送る理由にはなりません。しかしながら法務省が早期に検定結果を知り、そのことから久間さんの処刑が冤罪によるものであることを認識していたとすれば、ペースを崩した理由にはなります。

そこでこの時期の執行は、裁判員制度が始まってしまって取り敢えずは後戻りの出来ない状況になった、いわば既成事実化したこと、そして久間さんの事件についてのほとぼりが冷めた、あるいは死刑存置「8割」の世論が冤罪による殺害について思いの外盛り上がらず、「よくあることさ」とスルーしちゃったと考えられたことによって役所の「粛々」が動き出したものと思われます。

とはいうものの、「8割」というのが「主催者側発表」に過ぎないことは他ならぬ主催者が一番よく知っていますから、衆議院解散前の執行はやはり憚られた、てゆーか政治家側から「待った」がかかったことも考えられないではありません。「粛々」とか言う人に限って「縮々」として細かいことに気を遣ったりするものです。

その一方で裁判員制度による裁判がいよいよ8月3日から始まることになり、そうなると国民の関心が多少なりとも司法とか裁判とかに向かうことになります。いわば「司法の季節」が来てしまうわけですが、そうなってしまってからの執行は、国民を目を死刑に向けさせ、てゆーかその執行で人が殺されるということを再認識させてしまうでしょう。そればかりか去年の冤罪の件を思い出してしまう人もいるかも知れません。これは「取調べの可視化で冤罪を防止する」ことをマニフェストに掲げる民主党を利する結果となるかもしれません。それでは無駄に殺すことになります。

したがって執行が解散から裁判員裁判までの約2週間の間に行なわれたことは大変理にかなっているというわけです。それが28日になったのは、前回の執行から6カ月を超過したくなかったからであり、その意味ではギリギリの日程です。日本政府は半年の執行停止などというケチなことで褒めてもらうくらいなら国際的な非難上等だと思っています。どうせ三等国だ。

たとえば今回の執行はアムネスティ・インターナショナルに威勢良く立ち向かってみせます。あたかもそれを無視するかのように十分に意識しすぎています。

国 名:日本
ケース:差し迫った処刑のおそれ
対象者:山地悠紀夫(男性、1983年生まれ)
篠沢一男(男性、1952年生まれ)
造田博(男性、1976年生まれ)
前上博(男性、1971年生まれ)
尾形英紀(男性、1980年生まれ)


上記の5人は、2002年から2007年の間に殺人で有罪となった。現在、差し迫った処刑の危険がある。2008年9月に就任した森英介法務大臣は死刑制度推進派で、上記の5人のように、最近上訴を取り下げた人や、「国民の強い反感」をかきたてた犯罪で有罪となった人を選んで執行することで、世論の反対をおさえようとしている。

上記5人全員が東京拘置所か大阪拘置所にいるが、このうち3人は控訴を取り下げている。そして篠沢一男さんは再審請求をしていない。

発行日: Fri, 27-Feb-2009

AMNESTY INTERNATIONAL JAPAN


アムネスティは見事に今回の執行対象者を言い当てています。てゆーか法務省はあえてこの中から対象を選択していると思われます。山地悠紀夫さんと前上博さんが「最近上訴を取り下げた人」にあたります。また、アムネスティが外したのか法務省が外したのか知りませんが陳徳通さんは「「国民の強い反感」をかきたてた」組です。それは彼が外国人であることなどによるものだと思われますが、そんなことを書くと「国民の強い反感」を受けるかもしれません。

陳さんの場合は彼自身が外国人であるばかりでなく被害者もそうであり、尚かつ彼等が共に違法行為を行なうグループに関係していたことから、どちらかというと死刑にしても「国民の強い反感」を受けないのではないかと考えられたとみられる例です。もっともその犯行の様態は家賃の滞納で同居していた被害者たちに暴行を受けたのに腹を立て、「金があるはずだ」と思い込んで親類を集めて襲ったものの実際には金がないのに絶望して刺しちゃったもので、一審横浜地裁川崎支部の羽渕清司裁判長の「周到な準備の上」というのはちょっと買いかぶり過ぎです。むしろ無計画が殺害のきっかけである点が陳さんのみっともないところです。強盗のために人を殺したというよりも強盗が上手くいかないので殺してしまって「強盗殺人」というのもちょっとアレですが、例によって上告を棄却した最高裁第三小法廷の藤田宙靖裁判長は「被害者側が被告に暴力を加えた落ち度を考慮しても刑事責任は極めて重大」としています。強盗というよりは報復であり、殺人というよりは腹立ちまぎれの乱暴が度を超したものでしょう。陳さんが日本人だったらもうちょっと同情が集まりそうなものです。もっとも翻って考えれば、家賃の滞納なども陳さんの「無計画」な性格が災いした可能性があります。日本ではものごとをきちんと処理出来ない人は死刑です。

鳩山由紀夫さんに当てつけるかのように吊るされた山地悠紀夫さんと前上博さんは共に本人が控訴を取り下げた例です。なるほど自分から殺してくれと言わんばかりですから「国民」は納得するでしょうが、その前に刑法第202条を削除する必要があります。もっとも前上さんは自殺したがっている人を殺したものですが、同意殺人ではないようです。大阪地裁の水島和男裁判長は「被害者は練炭自殺による安らかな死を志向していた」ことを指摘し、被害者が望む方法で殺してあげることが大切であることを説いています。ましてや自分の「趣味」のために徒に苦痛を与えてはいけません。とはいえ「遺族の処罰感情が峻烈」なのには、自殺者遺族の自責感情が転嫁されていますので割り引かなくてはいけないと思いますが。もっとも自殺でなくても遺族は自責の念にかられるものであり、それを被告人に向け換えて処理しようとするのは普通のことです。しかしそうすることで回復が早まるとかそういうことはありません。もっともそんなことは検察の知ったことではありません。

というわけで前上さんには猿轡とか白いソックスに関わる「趣味」というものがあったのですが、対象を自殺志願者にした点でなるべく人に迷惑をかけないようにしようという気遣いが伺えます。とはいえ「苦悶する様子を見る」楽しみが「窒息死させる」に至った経緯は裁判によって明らかではなく、更に追究する必要がありました。なにしろ猿轡やギャグなどはわりとふつうの「趣味」の範疇に留まるものであり、だからといってほとんどの人は出掛けて行って街行く人々の口を塞いだりはしないものなのです。殺してしまって事足れりとする態度には問題がありますが、「趣味」と「犯罪」の微妙な境界を曖昧にしておくことの方がより使い出があるというものなのでしょう。したがって「境界」そのものが死刑によって取り除かれます。

まあこういう「快楽殺人」といわれるものは、犯人もヤルだけやって捕まってしまうとさっぱりしてしまうようなのですから、「公判で人ごとのように事件を語」ったり、さっさと控訴を取り下げてしまったりするのも仕方のないことです。山地悠紀夫も判決ではヘンタイ扱いをされていますが、大阪地裁の並木正男裁判長による判決はアレもコレもとなんでも入れてしまってワケが分らなくなっています。なるほど「犯行前は野宿生活を送るなど金銭に窮していた。供述からも、金品を奪う目的で押し入ったことは明らか」なんだそうですが、「母親殺害時に覚えた強い性的興奮を再び求めた」のが動機なんだそうです。なるほど動機が2つもあるんですから「史上まれにみる」犯行であることは間違いありません。もっとも山地さんの場合は、以前に母親を殺したこと以外には「性的サディズム」の存在を示す事実はなく、検察の調書にそう書いてあっただけです。検察としては心理的に殺人を犯す必然性を持ったモンスターとして前上さんをプロデュースしたかったようですが、仮に本人がそういっているとしても証拠不十分です。

山地さんの場合は要するにすっかり望みを失ってしまったように思われます。生い立ちは相当に不幸なものであり、最近でもゴト師としての能力に限界を感じるなど、早くも追い詰められた心境になっていただけではないでしょうか。もうどうでもいい、そんな気持ちにつけ込んだ検察の演出にそのまま乗っかり、言われるがままにモンスターとして死んでゆく。そのプロセスのすべてが山地さんにとっては「気楽」なものだったのではないか。もう一度世間に出ていって戦うことを考えると気持ちが萎えますが、もうそんなことはしなくてよいのです。日本ではこんな弱虫は死刑です。


posted by 珍風 at 10:59| Comment(0) | TrackBack(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 【0907/205:死刑執行】3人に執行[事件]死刑:3人に執行 森法相 慢心の、惨心による、乱心社会の実現
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