2009年11月17日

餓鬼共にはスクリーンの中だけの希望を

厚労省の「児童劇巡回」、初の「予算要求通り」判定

 11日から始まった事業仕分けで16日、初の「予算要求通り」の判定が出された。優良な児童劇を子どもに見せるため、劇団が全国の児童館などを巡回する優良児童劇等巡回事業で、所管は厚生労働省だ。ただ同事業は概算要求段階で金額を明示しない「事項要求」で、要求額も分からないままに「可」と認める異例の判定になった。
 同日の仕分けでは、仕分け人の半数(6人)が「文化庁に重複する事業がある」などと批判して予算の縮減を要求。だが作業グループの取りまとめ役の菊田真紀子衆院議員が「子どもに希望を与える事業は大切にしたい」と結論づけ、要求がそのまま認められた。

2009年11月17日 日経


財務省ではこの事業は文化庁のと重複しているんじゃないかという、字の読める人にとっては至極真っ当な意見を出したようですが、厚生労働省によれば文化庁の管轄は「交響楽団」や「能」なんだそうです。なんだか「文化」という語を極めて狭く捉えているようですが、実はオーケストラにはコンサートホールという音響設備が必要ですし、能には能舞台という一定の形式を持った設備があります。一方で児童劇は「児童館」で行なわれるのです。「児童館」は自動更生施設ではなくて児童厚生施設ですから厚生労働省の管轄です。つまりこれはハコモノ主体の縦割り的発想の典型のようなものです。交響楽団なしでも、能なしでも出来ます。

優良児童劇等巡回事業は厚生労働省所轄の「児童健全育成推進財団」に委託されています。これは、何の必要があったのか分りませんが全国4700の「児童館」同士の「連絡・調整・推進機関」を作るんだと言って1975年に設立された「社団法人全国児童館連合会」と、1973年に設立され各地域の「母親クラブ」を束ねていた「財団法人東邦生命社会福祉事業団」が、1999年の東邦生命の経営破綻に伴って2000年に統合したものです。

「児童館」は厚生労働省雇用均等児童家庭局育成環境課の所管でありますが、各都道府県に下部組織として「児童館連絡協議会」が置かれていて、各「児童館」は都道府県連協を通じて「児童健全育成推進財団」による全国的な統制の元にあります。同財団の所在地は

〒150−0001
東京都渋谷区神宮前5丁目53番1号
こどもの城 10階
TEL 03-3486-5141
FAX 03-3486-5142

会長:金田 一郎
理事長:高城 義太郎
副理事長:畠山 寛

「優良児童劇等巡回事業」は、この「児童館」に劇団とか映画を巡回させるんですが、巡回上演・上映する作品については厚生労働省が「社会保障審議会福祉文化分科会」において「社会保障審議会推薦児童福祉文化財」として決めています。ここでは「出版」「舞台芸術」「映画・メディア等」の各分野から「児童福祉文化財」を「推薦」しています。「児童福祉文化財」というと、なんか聞いたこともないような短編フィルムやなんかだと思うかも知れませんが、『劔岳 点の記』とか『ポニョ』、『旭山動物園物語』なんていうのも入っています。

それでこの「分科会」の委員というのが沢山いまして、28人もいます。

本委員  庄司 洋子 立教大学大学院教授
〃    見城美枝子 青森大学教授
臨時委員  竹中 淑子 子どもの本研究所主宰(出版委)
〃    望月 重信 明治学院大学教授(出版委)
〃    片岡 玲子 立正大学教授(舞台委)
〃    方   勝 玉川大学教授(舞台委)
〃    小玉美意子 武蔵大学教授(映像委)
〃    鈴木誠一郎 筑波大学大学院教授(映像委)
専門委員  落合美知子 児童図書研究家(出版委)
〃    小泉 裕子 鎌倉女子大学児童学部教授(出版委)
〃    児玉ひろ美 読書アドバイザー(出版委)
〃    佐藤 宗子 児童文学評論家(出版委)
〃    土屋 智子 児童図書研究家(出版委)
〃    中村 順子 学校司書(出版委)
〃    宮川 健郎 武蔵野大学教授(出版委)
〃    上垣内伸子 十文字学園女子大学教授(舞台委)
〃    小林   緑 国立音楽大学名誉教授(舞台委)
〃    指田 利和 宝仙学園短期大学教授(舞台委)
〃    芹川季代子 児童劇指導家(舞台委)
〃    高谷 静治 児童劇演出家(舞台委)
〃    宮里 和則 あそび・劇・表現活動研究家(舞台委)
〃    塩浦 純一 映像音楽研究家(映像委)
〃    須貝あゆみ 日本レコード協会業務部企画グループ長(映像委)
〃    鈴木 一光 (財)児童健全育成推進財団事務局長(映像委)
〃    田嶋  炎 日本民間放送連盟番組部長(映像委)
〃    辰巳ヒロミ 子どもの映画研究家(映像委)
〃    長又 厚夫 日本放送協会考査室考査主幹(映像委)
〃    西村 達郎 文化創出プランナー・作詞家(映像委)

地方紙の報道によれば、厚生労働省の「能なし」な主張にも関わらず、文化庁の事業との重複について整理を要求したようですが、そもそも「子どもに希望を与える」ということでしたら、厚生労働省にはもっと他にやるべきことがあるのではないかと思うのが素人の見解です。「交響楽団」や「能」が「子どもに希望を与える」ことと関係ないというのも奇妙な考え方です。

もっとも、玄人の見解になりますと、「児童向け」の出版や演劇、映画というのも中々大変な業界なんだそうでありますから、文化庁だろうが文部科学省だろうが厚生労働省だろうが、色んなところからみんなに「推薦」が行き渡ると助かるとか、こういう「委員」の諸先生方とのコネが大切だとか、そのために多大な努力を払っておるとか、事情があるようです。何かの「推薦」のシールがあるのとないのとでは売れ行きが大分違うとか。というわけで「政治的判断」になるわけですが、そんなら厚生労働省、「厚生」だけじゃなくて「労働」方面の「文化財」も「推薦」してみやがれってんだよね。「労働者を社会の健全な一員とするために積極的な効果をもつもの」をですね。やっぱりやんなくていい。


posted by 珍風 at 11:35| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
「優良児童劇巡回等事業」で検索して来ました。
どうも、腑に落ちなかったものですから。(笑)
なぁるほど。と、思いました。
正論さえも馬鹿げたことに見える(見せる)マスコミや政府ですから…
困ったものです。
美辞麗句に踊らされる国民も躍らせる側も。

「日本一ひどいブログです」
そうですね。
ひどいブログだと形容するほど、世の中は、ヒドイアリサマなのだと思います。
本当に… 子らに申し訳ないです。

Posted by 元気 at 2009年11月18日 00:03
はじめまして。ここはじっさいにこのブログ自体が「ひどい」ので、本当はあまり読まないほうが良いのですが。

例えば厚生労働省は餓鬼に「希望」を与えたからには、「希望」を裏切られた大人の人にどう責任を取るのか、法に定められた労働者の権利を周知するためにどの程度の予算をかけているのか、その効果の測定はどのように行なわれているのか、事業仕分けで「廃止」も良かろうが逆に奨励し増額すべき事業もあるだろうとか、そうなると「労働館」を作ったらどうかとかなどという「建設的」なことはひとつも書いてありません。

そういうのはもしかすると旧民社党的なのかも知れませんし、菊田真紀子さんは民社協会ですが、実際のところ今の「若い根っこ」には多少の知識があるわけです。それを必要とする状況が存在するので。それで雇用者側としても労働者が色んなことを知っていることを前提に動かざるを得ないようになって来ているんですが、考えて見れば当たり前のことだ。で、若い労働者諸君がどこでそういう知識を仕入れて来たかというと、それはネットで見て来たようで。本なんかあんまり読まないようだし。お役所のも見るでしょうし、単なる個人の無償の書き込みも見るんでしょう。そういうことがありますから、あまりウソは書かないようにしてるんですが。わかったもんじゃありませんけど。
Posted by よく来たね。あなたに逢えて珍風 at 2009年11月18日 12:07
ひょっとして「優良児童劇」なんてのを見て育つと櫻井よしこ女史を賛美したり外国人参政権に反対する善良な大人になっちゃうかもしれません。
ここはやっぱり「不純で不良でヒワイな児童劇団」設立に力を注ぐべきだわな。
Posted by ika at 2009年11月18日 19:15
いやあれは大人が餓鬼共に見せる演劇でしょう。「児童向け劇団」とか言うべきもんですな。「児童劇団」つーと子役のいる芸能事務所ですが、高額な月謝を集めて成り立っております。親は共稼ぎでアルバイトまでして頑張っておると言われておりますが、デビューは運次第とも。枕営業もあるかもしれませんが、親がやるのか餓鬼がやるのかよく知りません。枕営業かと思ったらそれがデビューだったりするのが児童ポルノ。
Posted by 子どもミュージックホール珍風座 at 2009年11月18日 19:31
えー、優良児童劇なんか見て育つと将来あんなことやこんなこと言っちゃう善良な大人に育つんじゃないかしらん。てな意味でして、勘違いさせてすみません。ごく最近そんな大人の方をどこかで見た様な気がしたもんで、ついこじつけで書いてしまったアタシは呆け者です。
そうですか彼女はM社協会の方ですか。個人的超偏見を述べさせていただければ、かの協会の方々には何だかよくわからない考えをされている方が居るような気がしないでもないわけで、やっぱそんな方が全面賛同する劇を見て育つと(以下略
Posted by ika文章力欠如 at 2009年11月19日 09:12
ああ、いや、すみません。てゆーか、餓鬼は金持ってません。そりゃお小遣いくらい持ってるでしょうけど、それは自分の好きな物買っちゃいますから。「児童向け」を買うのは実際のところ親です。親が金を出しているんです。だからアレは「裏成人向け」なんです。餓鬼は「推薦シール」なんか見てません。親が見てるんで、ターゲットは親だし、その中でも権威づけに弱い、まあ納豆とかに踊らされる人ですよ。だってしょうがないじゃない演劇とかは金がかかるんだ。食っていかねばならんのだ。

そういう演劇を観て育つとどうなるかというと、演劇というものを嫌うようになります。それじゃマズイというので演劇方面では「不純で不良でヒワイ」を、「見世物小屋」的な方向で追求して来た歴史もありますな。いわゆる「土俗的」なアレですが、それもまたナショナリズムに回収されていったりしちゃカッコ悪いこと夥しい。

もっとも「見世物小屋」的な「土俗的」なものってのは要するに都市環境において異化されたものであって「回収」なんて到底無理な相談なんですが、回収しようとする身振りそのものが、それこそ「外国人」なんかが排除の対象として不可欠に存在する都市というものを前提としているんで、排除の対象としての「外国人」の存在がナショナリズムの条件なんです。したがってそれは無権利状態に放置された人々を必要とし、しかし彼等が立ち去っていくわけにはいかないという認識を抑圧しています。

同様の取扱は、例えばホームレスの人々などにも適用されるようなんですがね。まあ「僕はそういう連中とは違うぞ」ってのが元気の元だったりするんでしょう。で、そういう構造になっているとして、そこで人を動かすのは、そういうところに落ちたくないという不安なんだろうね。多数派でいたい。それは納豆を買い込む人と同じなんじゃないか、という風に繋がるんだなこれが。
Posted by 納豆珍風 at 2009年11月19日 23:02
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