2010年01月17日

釈放しちゃうぞ

それにしても大新聞というものはエラいものです。世界一の巨大新聞では16日の1面トップはもちろん石川さんの逮捕ですが、同じ1面の左の方には民主党のせいで日米同盟が揺らいでアメリカが困っているとか書いてあります。別に日本がアテにならないんだったら沖縄の基地をさっさと台湾にでも移してしまえばいいんですからどうでもいいですが、天下の讀賣新聞の手にかかれば小沢さんのいわゆる「疑惑」の件で「cui bono?」という点についてはたった1枚の紙で余すところなく明らかにされているというわけです。

最近は老眼なので新聞を離して眺めていることによっていわばこのような「大局的な視点」を獲得することが出来るのも「年の功」というものですから、若い人は口惜しかったら早く老人になりなさい。ちなみに「cui bono?」はキケロによって引用されたカシウスの言葉で「誰が利益を得たか?」ということです。推理の基本、てゆーか探偵小説によく出て来る言葉です。

ところがこの格言、実際には探偵小説とは異なり、このような場合に検察側の動きを説明するときには有効かも知れませんが、刑事事件において犯人を特定する場合にはあまり役に立たないようです。そんな「推理」でヘンな先入観を抱えてしまうよりも証拠から詰めていくのが実際の捜査の原則となります。

茨城の強盗致死、時効寸前に逮捕の3人不起訴に

 茨城県牛久市で1995年、ホテル経営者男性が縛られ、死亡した事件で、水戸地検は15日、時効成立の約1か月前に強盗致死容疑で逮捕され、処分保留で釈放されていた男性3人を不起訴(嫌疑不十分)にしたと発表した。

 不起訴となった、千葉県松戸市和名ヶ谷、無職松本武男さん(71)が取材に応じ、「取り調べでどなりつけられ、生きた心地がしなかった。謝罪もなく、許せない」と語った。事件は18日午前0時、公訴時効(15年)を迎える。
 ほかに不起訴となったのは、いずれも千葉県内の70歳代の無職男性2人。
 山下輝年・次席検事は「証拠が不十分で、公判を維持するのが難しいと判断した」と述べた。逮捕については「事件の関与を示す情報が複数出てきた。捜査するだけの価値はあった。追及すべきところは追及するのが取り調べで、問題なかった」との認識を示した。
 これに対し、松本さんは「刑事から『警察をなめてはいけない。ウソをついている』と言われ、悔し涙が出て寝られなかった。地検で机をたたかれ、『窓から入ったのか、玄関から入ったのか』と20日間にわたり聞かれた」と語った。
 「20日間は20年くらいの気持ちだった。何でこんな目に遭うのかと思った。(取り調べで)あれだけ攻められたら、ウソを言ってでも楽になりたいと考えた。それでは向こうの思うつぼだと思いとどまった」と揺れ動いた心境を吐露した。
 逮捕後にDNAを採取された。「妻も呼ばれ『人一人が死んでいる。起訴しようと思えばできる』と脅された」と憤る。「とにかく謝ってほしい。人間らしく扱ってもらいたかった」と怒りが今も収まらない。

2010年1月16日 読売新聞


捕まえてはみたものの証拠がなかったので釈放され、不起訴となりました。これは当たり前の話しかも知れませんが、実際にはなかなかこういう具合には参りません。今回は時効が迫っていたので、それまでに「証拠」を用意できる見込みが立たなかったようです。

もちろん茨城県警では「証拠の王」を手にするために最大限の努力を怠らなかったことは、彼等の名誉のためにも特筆しなければなりません。なにしろ逮捕の根拠とされる「事件の関与を示す情報」というのは匿名の投書だったりしますので、自白を取らないことには話しになりません。警察ではアタマから犯人と決めつけた取調べが行なわれ、配偶者を恫喝し、検察では机を叩いて威迫するなど、やるべきことは全て行なわれています。

しかしそれでも分ってくれない人というものはいるもので

釈放の3人は不起訴 茨城・牛久の強盗致死事件

 茨城県牛久市で平成7年1月、飲食店兼ホテル経営、松田行雄さん=当時(68)=が自宅で両手を縛られて死亡した事件で、水戸地検は15日、強盗致死の疑いで、昨年12月に逮捕された後、処分保留で釈放された千葉県在住の70代男性3人について、嫌疑不十分として不起訴処分とした。同地検の山下輝年次席検事は「客観的証拠に基づいて判断した結果、有罪となる確信は得られず、公判維持は困難と判断した」と話した。
 事件は7年1月17日午後6時半ごろ発生。松田さんが牛久市南の自宅で、両手を縛られ、うつぶせで倒れているのを妻(74)が発見。松田さんは病院に運ばれたが、翌18日に死亡。自宅からは腕時計(約30万円相当)がなくなっていた。
 県警は70人態勢で捜査に当たったが長期化。だが、昨年、捜査関係者に匿名の投書が複数寄せられ、県警は公訴時効まで43日と迫った12月5日、強盗致死容疑で3人を逮捕した。3人は容疑を否認し、同月25日に処分保留で釈放された。
 県警は「時効までに事件の全容を解明できなかったのは無念。被害者のご冥福を心からお祈りします」としている。
 松田さんの長男の衛さん(47)は「時効で見逃してしまうところに不満がある。真相を明らかにするためには時効の壁がある。被害者や遺族を助けられないのはおかしい。時効を撤廃してほしい」と、悔しさをにじませた。

2010年1月15日 産経ニュース


こう言っては被害者の遺族に気の毒ですが、その言い分は「時効さえなければ長期の取調べで自白に追い込めたのに」という風に解釈できます。とは言っても、証拠もないのに、てゆーかないから勾留は延長されていますし、まあ、やろうと思えば別件逮捕とかも出来ると思いますが、勾留が20日になった段階で時効まで1カ月を切っており、そのような時間的な制限の中で他に証拠が一つもない状態ではそれも困難でしょう。

それでも不起訴に至るまで更に20日を要したのですから、しつこいものです。警察をなめてはいけません。これで時効さえなければ逮捕されていた3人を立派な一人前の犯罪者に仕上げることが出来たはずです。まことに惜しいことをしました。

この事件においては捜査は行き詰まっており、仮に時効を撤廃した場合には今回逮捕された3名をなんとかして起訴する方向に持って行く以外には手の打ちようがありませんが、それは冤罪の可能性が極めて高いものであると言えるでしょう。衛さんは遺族の身でありながら時効撤廃の危険性を裏面から指摘した点は見上げたものですが、「冤罪でも良いから誰か挙げてくれると助かる」みたいなことをかなりはっきりとおっしゃってしまったのは些か不適切な発言ではないでしょうか。こんなことを口走ってしまったことが世間に知れると遺族は正常な社会生活を営めなくなる可能性もあります。産經新聞に限らず、マスゴミは遺族の談話を報道するにあたっては慎重でありたいものです。


posted by 珍風 at 13:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
と言うかこの結果は3人の方にとっては「でもあいつら実は真犯人なんだぜ」みたいな疑惑を一生背負わされて生きて行かなきゃなんない。って意味で非常にツライ結末なんじゃないでしょうかね。まぁ警察は確信犯でそれを狙ったようで、時効なんてあるから起訴できなかったんだよー、でもボクタチ頑張ったでしょ、だから許してね。みたいなアリバイ作りに利用した様に思えますが、いかがなものでしょうか。
サンケイがそう言うのに加担するのはいつものことなんで驚くに値しませんが、それをお金出して購読している方々には驚かされます。そんな金あったらアグネスじゃない方のユニセフにでも募金する方が世の為人の為だと思いますが、そこは人それぞれなんで何ともかんともです。
まぁいっそのこと裁判になって無実が証明されれば良かったんでしょうが、裁判官なんてのも甚だアテにならない存在なんで結局タイホされたら負けって言う怖い世の中なんですね。いやホントに無実かどうかはアタシにゃわかりませんが。
Posted by ika at 2010年01月18日 13:15
警察としてはどうせ時効だから誰か引っ張っておきたかったんじゃないですかね。時効を前に「ちゃんとやってますよ」みたいな。僕としては「匿名の情報」の出所が気になります。自作自演かもしれない。警察の面子が問題になっているんで、不起訴となった後も疑惑を残すような言い方を敢えてしているわけです。まあ無理な逮捕だったわけですが、こんなことをするのも時効があるからだ、時効さえなければ3人は逮捕されることはなかった、みたいな時効撤廃の論議は可能かも知れません。誰かやらないかな。
Posted by 匿名(珍風) at 2010年01月19日 12:23
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