2010年02月11日

とは言ってもマトンは臭いがねぇ。犬の肉はアッチの方に効くそうだが。

公訴時効:殺人、廃止答申へ 遺族「歓迎」と「不満」

 ◇殺人事件の被害者遺族「やっとここまで」/ひき逃げ死亡事件の遺族「無念に差はない」

 法制審議会の刑事法部会で8日、殺人の公訴時効を廃止する案が決定されたことで、「時効見直し」が今国会に委ねられる公算が大きくなった。過去に発生し時効がまだ完成していない「時効未完成事件」にも適用する今回の案に対し、迫り来る時効の壁に疑問の声を上げてきた殺人事件の被害者遺族は喜びの声を上げた。一方、「10年に延長」とされた死亡ひき逃げ事件の遺族からは「殺人との時効の差に納得できない」と不満の声も聞かれた。【山本浩資】

 「殺人事件被害者遺族の会」(宙(そら)の会)代表幹事で、上智大生殺害事件(96年9月)で次女を失った小林賢二さん(63)は、事件発生から丸12年を迎えた08年9月9日、マスコミを通じて「凶悪事件の時効撤廃」を訴え、他の未解決事件の遺族に連携を呼び掛けた。09年2月、世田谷一家殺害事件の遺族らと、時効撤廃・停止を求めて宙の会を結成。会には22事件の遺族が入会し、集会や署名活動などで国民に訴えてきた。
 小林さんは「民主党政権に代わり、時効見直しがどうなるか不安だったが、世論の後押しで遺族が望む内容の案ができたことに感謝している。目前に時効が迫っている遺族もいる。今の流れを変えることなく、早期に法改正し、実施してほしい」と話した。
 「全国犯罪被害者の会」(あすの会)幹事で、千葉市の都立高校教諭強盗殺人事件(97年2月)で夫を失った内村和代さん(70)は「今日は夫の13回目の命日。やっとここまでたどり着いた」と喜んだ。これまで犯罪被害者の権利を訴える活動を続けてきたが、「時効見直しは、10年間の会の活動で被害者の気持ちを理解してくれる人が増えたからだと思う。次は国会議員に直接訴えたい」と言う。
 一方、「全国交通事故遺族の会」の中村豊さん(63)は不満だ。昨年11月、法制審の部会で「ひき逃げの時効撤廃」を訴えた。今回の案では、自動車運転過失致死の時効が5年から10年へ延長されたが、「思いが反映されていない」と残念がる。
 中村さんの母きんさん(当時81歳)は99年9月、千葉市中央区の自宅前路上で、3台の車に次々はねられ死亡した。最初にはねた車は逃走したまま、5年の時効が成立。「ぶつかった瞬間までは過失であっても、逃げる行為は故意。今も母を殺された無念は変わらない。殺人との時効の差を見直してもらいたい」と話している。

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 ◇被害者遺族訴えと法務省の動き◇
08年 5月(被害者) 「全国犯罪被害者の会」(あすの会)が自民党司法制度調査会に殺人の時効廃止を要望
    9月(被害者) 上智大生殺害事件遺族がマスコミに時効撤廃を訴え
   12月(被害者) 世田谷一家殺害事件の遺族が時効停止を訴え
09年 1月(法務省) 森英介法相、「時効勉強会」を設置
    2月(被害者) 世田谷一家殺害事件、上智大生殺害事件の遺族らが殺人の時効撤廃・停止を求める「殺人事件被害者遺族の会」(宙の会)結成
    5月(被害者) 宙の会、全国大会で時効撤廃を訴え
    6月(被害者) 宙の会、「時効撤廃」の嘆願書を法務省に提出
    7月(法務省) 自民政権時代の森法相勉強会が「殺人の時効廃止」の結論を打ち出す
    9月(被害者) 宙の会、「時効見直し」を民主党政権に要望
   10月(被害者) あすの会、時効廃止の要望書を千葉景子法相に手渡し
      (法務省) 千葉法相が「時効見直し」を法制審に諮問。前政権案は白紙
   12月(法務省) 法務省が時効見直し4案を法制審に提示
10年 2月(法務省) 法制審刑事法部会が「殺人時効を廃止」の要綱骨子案決定

2010年2月9日 毎日新聞


これは絶景、被害者団体そろい踏みであります。交通事故遺族は例によって利用されるだけですが。公訴時効の撤廃・延長はこれらの「機関」の活動を通じて国民の合意を調達しているわけですが、こないだ発表された内閣府の「基本的法制度に関する世論調査」においては公訴時効期間について「短すぎる」とするものが31.5%という結果が得られました。これは要するに調査対象は「短すぎる」という話しは聞いたことがあるけれども「長すぎる」という話はあまり聞いたことがなかったんで、「何だか知らないけど短いんだろう」と思ったようです。「被害者」諸機関による世論操作の成果というものでしょう。

もっとも、報道によるとこの調査項目の選択肢のうち「短すぎる」と「どちらかといえば短すぎる」を合計して「54.9%」だとしているわけですが、この数字については「被害者」の成果に帰すべきではなく、アンケートを設定した内閣府のお役人様の周到な用意の結果であります。

(6.0%) (ア) 長すぎる             
(4.0%) (イ) どちらかといえば長すぎる   
(22.5%)(ウ) これくらいでよい
(19.8%)(エ) どちらかといえば短すぎる
(35.1%)(オ) 短すぎる
(12.6%) わからない・一概には言えない


公訴時効については仕掛けが浸透していないため、「わからない」もしくは中立的な選択肢に回答が偏ることが予想されたのでしょう。実際に1割以上が「わからない」に回ってしまいましたが、このくらいは仕方ありません。それよりも「これくらいでよい」が多数を占めてしまうようだと調査の甲斐がないわけで、予想される多数の中間派をいかに分けてみせるかが質問設定の腕の見せ所なのです。

そこで「これくらいでよい」、「このままでいい」、「だいたいこんなところだろう」、「どっちでも良い」、「どうでもいい」という人たちを無理に分けてみたのが上の(イ)(ウ)(エ)であります。実に46.3%を占める中間派のうち、4割強を「(どちらかといえば)短すぎる」派に繰り入れたアンケートの妙技、数字の神秘、悦楽の境地を心行くまで堪能することが出来ます。

とはいえ「アヌスの会」その他のエージェントの活動の成果を否定すべきものではないでしょう。例えば同じ世論調査の死刑に関するアンケートでは、「死刑を容認しかつ将来にわたって存置する」、いわば「絶対存置派」は、1999年9月の調査で44.8%であり、これは1994年の調査よりも5.5ポイント増加しております。政府の定義による「死刑容認派」は79.3%に達しており、この数字は国連の規約人権委員会に対する回答にも利用されたものであって、日本政府の立場はこの数字如何にかかっているというわけで、この数字の維持は正に「国策」であると言って良いのです。「あすの会」はこの結果を受けて1999年10月から準備に入り、翌年の1月には正式に発足しましたが、専らこの「世論」の維持に従事した結果、2004年及び2009年の調査においても「死刑容認」の「世論」が維持され続けているのはおめでたい限りです。

もっとも、彼等の最初の試練となった2004年の調査では「死刑容認派」が8割を超え、内容的にも「廃止派」「容認派」にまたがる「将来廃止派」の1割以上を「絶対存置派」に獲得するなど、充実した結果を出すことが出来たものの、「光市事件」や「死に神事件」で少々やり過ぎの感のあったここ数年を経て2009年の調査では、表面的には「死刑容認派」が85.6%に達したものの、その中では「将来廃止派」の盛り返しが見られるなど、このままでは「事業仕分け」の対象となりかねない傾向も密かに兆し始めているようです。

実際、世論調査に見る「死刑容認の理由」、「時効撤廃の理由」の主要なものが、夫々「死刑を廃止すれば,被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」「その程度の期間が経過しても,犯人を処罰してほしいと思う被害者の気持ちが薄れることはない」となっており、「遺族」機関を利用しての世論操作の跡が色濃く残る結果になってしまったのは残念至極であります。

このような結果を受けて、「あすの会」は結果の公表に先立つ1月23日、石原慎太郎さんも出席したその10周年記念大会において当分は表向きの看板通りの活動に後退する方針を明らかにしています。

あすの会:犯罪被害者に経済支援を−−東京でシンポ

 全国犯罪被害者の会(あすの会、会員約380人)は23日、創立10周年の記念大会・シンポジウムを東京都内で開いた。

 岡村勲代表幹事は、08年から始まった刑事裁判の被害者参加制度などを例に「(創立から)10年で犯罪被害者を巡る環境は変わった」とあいさつ。「司法制度が完備されても、(後遺症や医療費で)生活に困る被害者を出してはいけない」と述べ、犯罪被害者への経済支援を拡充する新補償制度創設を求めることを今後の運動方針として決議した。

 あすの会の算定では、犯罪被害者への補償金負担額は、日本では国民1人当たり16円43銭。これに対し、フランス593円、英国550円、ドイツ339円、米国167円となっており、08年から犯罪被害者への給付金が拡充されたものの、欧米諸国の1割程度。

 同会は「欧米に比べると大きな隔たりがある。誰でも犯罪被害者になる可能性があり、犯罪被害者への補償は国民全体で負担すべきだ」と主張。過去に起きた事件で今も後遺症に苦しむ被害者がいることから、さかのぼって補償が及ぶような新制度が必要としている。

 また、これまで同様、凶悪重大事件の公訴時効廃止を求める方針を確認。大会の祝辞の中で加藤公一副法相が「刑事訴訟法改正の法案提出準備をしている。6月16日の通常国会会期末までに成立させたい」と時効見直しに言及し、会場から拍手が起きた。【山本浩資】

2010年1月24日 毎日新聞


いままで「犯罪を加害者に対する刑罰の対象としてのみとらえて、犯罪被害者の人権や被害の回復に何の考慮も払わなかった」(『全国犯罪被害者の会』設立の趣意書)ようですから、やっと本来のあり方に立ち返るようにも見えますが、何が「本来」であったかは周知のところです。しかしながらここはひとまず人目に立たないところで雌伏している必要があるというわけです。

実を言うと2009年12月の世論調査の結果には、ここ数年に連続した冤罪事件、特に足利事件ならびに飯塚2女児殺害事件の影響があるものと考えられるのですが、「あすの会」が後退を余儀なくされた背景にはこのような問題に対して適当な対応をなし得なかったこともあるのではないでしょうか。もちろんその立場上、国の失策に他ならない冤罪の非を鳴らすというわけにはいかなかったのは仕方ありませんが、他方では東京地検特捜部、特に民野健治検事さんあたりが頼まれもしないのに「取調べの可視化」の問題を闇雲にクローズアップしてしまったりしているなかで、被疑者の防御権の点で多大の疑問があり、かつまた法の不遡及原則に照らして憲法違反としか言いようのない公訴時効の「見直し」が早くも実現されようとしている一方で、取調べの可視化は2年後に先送りにしてしまおうという行政府の動きが、あまりにも「被害者」機関と連動し過ぎてしまったのが、彼等を後退させて見せなければならない理由なんでしょう。

もっとも、被害者や遺族への経済的支援は重要であり、「あすの会」がいわば狗肉を欺く羊頭に掲げていたくらいですから特に反対しようという人もいないのでしょう。しかしながら今までも既に相当程度の「負担」を「国民全体」に押し付けて来た経緯を考えると、とても素直に受け取れないのも人情というものです。「世論」は既に十分な理解を示し大幅な譲歩を行なったところですが、なんだ今度は金かよ、とか言われそうで心配です。


posted by 珍風 at 10:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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