2010年06月20日

「労働」に「自由にされる」人妻

専業主婦「賛成」の女性増加 厚労調査


 「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」という考えに賛成する既婚女性が増加していることが31日、国立社会保障・人口問題研究所が行った第4回全国家庭動向調査で分かった。平成5年の調査開始以来、一貫して減少傾向にあったが、前回調査(15年)よりも3・9ポイント増え、45%が賛成と回答した。

 さらに「夫婦別姓であっても良い」という考えは43・8%の賛成にとどまり、前年度から3・2ポイント減少した。同研究所は「伝統的価値観を否定する回答が増えていたこれまでの傾向に変化の兆しが見える」と話している。

 調査は5年ごとに既婚女性を対象に実施。今回は20年7月に6870人から得た回答を分析した。

 一方、実態調査では、フルタイムで働いている女性のうち、16%が家事を100%1人でやっていると回答。共働きの夫の6人に1人が家事をしていない実態が浮かび上がった。

 また、67・6%の女性が8割以上の家事を負担。負担割合が40〜59%と、バランス良く分担している家庭は10・6%にとどまり、共働き世帯でも、家事の負担は依然として女性に偏っていた。育児ではその傾向がさらに顕著で、8割以上を行っている女性は83・1%に上った。

 同研究所は「国は20年以上前から少子化対策で、家事の分業などを推進しているが、あまり改善されていない」と話している。

2010年6月1日 産經新聞


記事によると既婚女性は「家事が大変だからそっちに専念したい」と思っているということになるようですが、実際にはそうでもありません。

2006年の第3回調査では「常勤雇用で妻が働く場合でも、2割程度(20.6%)の夫は全く家事をしない」そうですから、共働きの夫のうち家事をしていないものが5人に1人から6人に1人に減少した実態が浮かび上がりました。また、常勤雇用の女性が女性が「8割以上の家事を負担」している割合は68.8%でしたので若干改善されていますし、「負担割合が40〜59%と、バランス良く分担している家庭」は6.4%にしか過ぎませんでした。

家事負担については改善傾向にあるようです。たしかに充分な状態とは言えないかも知れませんから、「あまり改善されていない」と話すのももっともですが、別に「悪化している」わけではないのですから「専業主婦志向」の増加をこれによって説明することは不可能です。逆方向の変化を示していることに目をつぶってデタラメを書き飛ばすのは産經新聞ならではの独擅場であると申せましょう。

「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」に対する賛否について調査対象の就業形態別構成別に第2回、第3回、今回を比較すると、

「常勤」     
   33.1% → 21.7%(−11.4)→ 33.3%(+11.6)
「パート」    
   41.7% → 31.8%(− 9.9)→ 39.6%(+ 7.8)
「自営・家族従業」
   52.7% → 43.3%(− 9.4)→ 43.5%(+ 0.2)
「専業主婦」   
   62.7% → 53.8%(− 8.9)→ 55.3%(+ 1.5)


「常勤」と「パート」は「V字回復」です。特に「常勤」は前々回以上の水準にまで増進しているわけですが、その一方で「自営・家族従業」と「専業主婦」においてはそんなに増えていません。したがって実態は「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」という考えに賛成する人が増えているのは「既婚女性」一般が「伝統的価値観」に回帰したわけでもなく、「外で働く既婚女性」だけがそういう意見に賛成しつつある、ということでしょう。

つまり調査によれば、働いている既婚女性は働きたくないと言っているのですが、それは産經新聞が誘導するように夫が家事をしてくれないとかいう家庭内の問題が原因なのではないということです。実は産經新聞が嘘を書くのは、前の日にこんなこと書く人がいたのであわててこれを否定しようとしたのでしょう。

専業主婦志向の妻増加 20代中心に価値観変化


 「夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」と考える既婚女性の割合がこれまでの低下傾向から一転し、増加したことが31日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の「第4回全国家庭動向調査」(2008年7月に実施)で分かった。

 前回調査(03年)より3・9ポイント上昇の45%で、特に29歳以下(47・9%)が12・2ポイントの大幅アップとなった。「母親は育児に専念した方がよい」とする割合も増加しており、調査担当者は「伝統的価値観を否定する回答が増えていたこれまでの傾向に変化の兆しがみられる」と分析。

 結婚や少子化問題に詳しい専門家からは「非正規労働が増え、正社員でも長時間労働で疲弊する状況があり、女性の間で仕事への意欲が低下している。主婦になって子育てに専念した方が楽と考えるのは当然」と指摘する声が出ている。

 調査結果によると、「夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」に賛成は全体で45%で、1993年の第1回調査時(53・6%)から前回の03年調査(41・1%)まで続いていた減少が初めて増加に転じた。

 年齢別では、29歳以下が47・9%で前回調査より12・2ポイントの大幅上昇。

2010年5月31日 共同


「結婚や少子化問題に詳しい専門家」によれば、これは「労働」の問題に他ならない、ということになるのですが、この調査自体にはその根拠はありません。「夫の帰宅時間」は調べるのに「妻の帰宅時間」は調べてありませんから、人妻さんたちが「疲弊」しているとすればそれは「家事」か「育児」のせいであるというのもあながち産經新聞のいつものデタラメであるとも言い切れないのであって、調査自体がそのような前提で行なわれている可能性を否定出来ないのです。

しかしながら調査結果がその前提を裏切ってしまったのは惜しかったとしか言いようがありません。誠に気の毒千万というべきですが、貴重な税金を使って何バカなことやってんだと言えないこともありません。5回目は必要ないでしょう。その意味では、「専門家」さんの言っていることは憶測ではありますが、せっかくの数字だからせめて有効に使おうという心がけが感じられて誠に感心であります。

まあ考えてみれば「仕事」などというものは生きていくために仕方なくやるもんですから、実は「意欲」の有無などは関係なく、やんなきゃイケナイ人はやっています。「仕事」も程よくやれば楽しいものですが、「労働」は適度な「程」というものをとっくに超えています。「労働」に従事している人が、「専業主婦」という選択肢があるのであればそうしたい、と考えるのは誠に自然です。

もし今まで「仕事への意欲」というものが女性の間に存在していたとすれば、それは「就活」雑誌の表紙に書いてある「ARBEIT MACHT FREI」という標語に騙されていたんでしょう。「労働」には「からの自由」と「させる自由」しか存在しない、ということに、どうも最近になってやっと気がつきました、というだけのことです。気がついても出してもらえないんですが。


posted by 珍風 at 11:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。