2006年04月02日

史上最強の童貞映画大来襲!

熟女のコスプレが大評判なのでこれはもうやはり観ないわけにはいかないのが「ヒストリ−・オブ・バイオレンス」であります。

ああゆうのを何千円かで買っても1回しか使わないし、捨てるに捨てられないので結構困りものですが、どうせならボンボンも買っておいた方が盛り上がるでしょう。

以下ネタバレ。
普通の男が悪夢のような「別の世界」に入り込んでいくわけで、なんだ、今までのクローネンバーグ作品と同じではないか。ただしこの作品ではその「別の世界」とは自らの「過去」なので、「スパイダー」と似ているかも知れません。しかし従来ならば、始めは「現実」的な生活をしていた主人公は映画が始まってから段々と「別の世界」に入り込んでゆき、その世界で乱暴狼藉をはたらく。このパタンはしかし「イグジステンズ」あたりから揺らいできており、最初はゲームの「虚構」世界の中にいて、最後に現実にいわば「帰還」して来ます。そして人を殺すなどの乱暴はそっちの「現実」の中で行われるのです。今回の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」ではは最初は「普通の生活」で始まりますが、実はそれこそが「虚構」なのであって、訪れて来る「別の世界」の方が現実だったというのです。もっとも以前の作品にしても、クローネンバーグにしてみればその「別の世界」の方がある意味リアルであると考えている可能性がありますけど。

そこでコスプレですが、これはまず虚構された「平凡な日常生活」の一環として描かれているようにみえます。しかし、そうだとするとアメリカの夫婦生活はかなり奇異なものであると言わざるをえません。あの国では普段からオバサンがチアガールの格好をしてパンツを見せるのであろうか。もしそうだとすれば生活の欧米化は尚一考の余地があります。うちの奥さんはマリア・べロではありませんのでますます考えものです。

実際にはこの問題のシーンは童貞喪失の再演です。正確に言えば理想化された形で童貞を喪失し直そうとしているのですが、ところが物語では、ここから主人公はあたかも童貞を取り戻すかのように過去に向かってゆくことになります。この行為によって逆に童貞を獲得するのです。ここでのポイントはチアガールのコスプレをした妻と行う行為が「69」として描かれていることにあります。クンニ。みうらじゅんによれば「はじめてクンニするときに、ようやくDTを喪失できる」(「映画秘法」5月号)のです。この意味は後の階段のシーンとの対比において明らかであります。「あっちの世界」に行っちゃった主人公はもはやクンニを行いません。それはまさに暴力と渾然一体となった性衝動の発現として、より童貞化した性行為なのです。

「別の世界」の住人として印象的なウィリアム・ハートがこれを補強する役割を演じています。彼は「結婚するなんて考えられないね」なんて言うワケですが、何人の女の人とセックスしたところで、彼もまた「DT魂」を失っていません。だいたい彼がここで演じるキャラクターは(ヒゲにもかかわらず)クンニをするとは思えないものがあります。彼の行為はただ激しく突っ込むだけの、主人公が階段のシーンで見せたものと同じく暴力的なものであると想像されます。

クローネンバーグの主人公達が赴く全ての「別の世界」は、童貞の世界なのです。過剰なまでのセックスに彩られたその世界はしかし、「スパイダー」の性関係そのものの直接的な否定から「ビデオドローム」の「新しい肉体」に至る、童貞ならではの多型倒錯的な性的妄想の世界であり、実際のセックスとは一切の関係が断たれた世界です。妻がいれば射殺し、愛人は実は男であり、自分はあるいはハエの化物と化してチンポがどっかへ行ってしまい、あるいはお腹におまんこが出来たりして、妻は妻で生殖器以外の場所で奇怪な生殖を行っており、もはや性器は用済みとなってしまいます。そんな事態は「クラッシュ」において頂点に達します。そこではセックスはそもそも不可能なもの、事故として遭遇が待たれるものであり、女装してハイウェイで事故死するのが童貞喪失なのであって、映画の中で四六時中行われているあらゆる性行為は一種の代理的もしくは予備的な行為にしか過ぎません。男達はいつまでたっても喪失を完了することが出来ない。みうらじゅんも言うように「DTは喪失したけど、その先には何段階も先がある」のです。もちろんそうでなければセックスなんてそういつまでもやっていられるものではありません。
posted by 珍風 at 20:49| Comment(1) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
珍風さんも「映画秘宝」の読者だったんですね。そんな気がしておりましたが。

そうか、この映画もDT映画だったんですね。
Posted by 死ぬのはやつらだ at 2006年04月07日 19:20
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Excerpt: 日本語公式サイト http://www.hov.jp/ デヴィッド・クローネンバーグ監督の映画を観るのは、96年の「クラッシュ」以来だ。 アメリカの典型的な田舎町でおこる殺し合い。 HISTO..
Weblog: 反米嫌日戦線「狼」(美ハ乱調ニ在リ)
Tracked: 2006-04-07 19:16
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