2011年01月27日

パパは何でもぶち壊す

鉄道駅に暴力を誘発するかのごときポスターが掲出されているのは誠に遺憾であります。しかも各社共同で、警察まで協力しているというのですから世も末です。

鉄道事業者共同でPR「暴力行為防止ポスター『暴力はすべてを壊す』」
12月10日(金)から各事業者の駅構内、電車内に掲出します!

社団法人日本民営鉄道協会
東日本旅客鉄道株式会社
東海旅客鉄道株式会社
西日本旅客鉄道株式会社
四国旅客鉄道株式会社
九州旅客鉄道株式会社
仙 台 市 交 通 局
東 京 都 交 通 局
横 浜 市 交 通 局
大 阪 市 交 通 局
東京モノレール株式会社
北総鉄道株式会社
愛知環状鉄道株式会社

 (社)日本民営鉄道協会、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、仙台市交通局、東京都交通局、横浜市交通局、大阪市交通局、東京モノレール、北総鉄道、愛知環状鉄道では、この度、共同で「暴力行為防止ポスター『暴力はすべてを壊す』」を制作し、平成22年12月10日(金)から、各事業者の駅構内、電車内に掲出いたします。
 今回の取り組みは駅や電車内におけるお客様同士のトラブルや、駅員や乗務員などの鉄道係員に対する暴力行為が増加している昨今の状況を鑑み、各鉄道事業者が連携して、お客様に対し暴力行為の防止を呼びかけるものです。飲酒する機会が多く、暴力行為が発生しやすい年末年始期に重点的にポスター掲出を行うことで暴力被害件数の減少を図り、お客様により安全・安心に鉄道をご利用いただける環境を実現していくことを目的としております。(詳細は下記のとおりです。)
 なお、ポスターの制作にあたっては、警察庁および国土交通省からの後援を受けております。

        記

1.タイトル 「暴力はすべてを壊す」

2.掲出期間 平成22年12月10日(金)から平成23年2月9日(水)までの2ヶ月間

3.ポスターで訴求するポイント
ヒビの入った写真とあわせて、「お酒に酔っての暴力行為が、あなたの大切なものをすべて壊してしまう」と強くメッセージを打ち出し、暴力行為を未然に防ぐことを目指します。
 また、暴力行為は犯罪であること、暴力行為に対して鉄道業界全体が結束して、毅然とした態度で対応することを強く訴えます。

4.事業者数 71社局(日本民営鉄道協会加盟会社・JR5社・仙台市交通局・東京都交通局・横浜市交通局・大阪市交通局・東京モノレール・北総鉄道・愛知環状鉄道)

5.掲出枚数 駅構内 約6,600枚・電車内 約49,000枚

以 上

http://www.jreast.co.jp/press/2010/20101204.pdf


現在のところこんなヤツで、しごいても大きくなりませんがクリックすると大きくなります。

暴力ですべてを壊せ.png

そういえば夏にも同じようなのがありまして、どういうワケか下着のような格好をした男性と女性とクソ生意気そうな餓鬼のポスター

http://www.jreast.co.jp/press/2010/20100702.pdf

これは「家族編」であって、現在掲出されているのは「職場編」ということになると思われます。しかしながら「暴力」を振るうと「家族」や「職場」を失うことになるぞという、考えようによってはかなり問題のある恫喝が、一般的に有効であるかどうかははなはだ疑問とせざるを得ません。そのようなものに縁のない人もいます。その様な人にとってこのポスターは、あたかも何か「大切なもの」が欠落しているかのように指摘されているような、極めて不愉快なメッセージとなる可能性があるでしょう。思わず暴れたくなるではありませんか。

もっとも、鉄道事業者各社によると、特に「中高年男性」が乱暴を働くことが多いんだそうで、これらのポスターもその層をターゲットとしているようです。したがって若い人や女性のことはまるで考慮されていません。例えばこれらのポスターの画像はいずれも「中高年男性」を中心として、その周辺に「妻」や「子ども」を配したのが「家庭編」、「部下」と「OL」を配したのが「職場編」ということになっております。

いずれも「中高年男性」は見た通り「中心」であり、その他の2者は「中高年男性」に従属する位置を占めています。もっとも、よく見ると「家庭編」の「夫」は「職場編」では「部下」をやっている人と同じ人に見えます。したがってこのシリーズでは「後期中高年管理職 ー OL ー 前期中高年部下=夫 ー 妻 ー餓鬼」という、「職場」と「家庭」を貫徹する序列関係が示唆されているようです。

何故「OL」が「部下」よりも上位であるかと言うと、「部下」は立っているのに「OL」は「管理職」の隣に座っているではないですか。この画像では「管理職」と「OL」はより近い地位にあるといえるでしょう。極めて疑惑を呼ぶ構図であるということが出来ます。「管理職」と「OL」との間に「大人の関係」が存在するかのように見えますが、これはモテない人が考えそうなこととは限りません。「家族編」における「夫、妻、子」の関係と「職場編」における「管理職、OL、部下」の関係がパラレルになっているのです。

それはともかくとして、これらのポスターでは「中高年男性」を中心化した「あるべき」様相が視覚化されていることによって、周縁化された2者から見て必ずしも面白いものではない可能性があります。上司との爛れ切った関係に悩む「OL」がいるかもしれませんし、もしかすると「セクハラ」概念の中心をなすような事態に被害者としての位置を占めていることもあるかもしれません。「部下」は会社帰りにこのポスターを見て上司の不当な叱責を思い出さなければなりませんし、「妻」はこれから「家庭」という牢獄に帰らなければならないことを思い知らされるのです。思わず暴れたくなるではありませんか。

しかしながらこのポスターは、その様な人々に不快感を与えることを目的としているわけではありません。ターゲットは飽くまで「中高年男性」なのですが、しかしながらこのポスターが「中高年男性」にとって不愉快でないというわけではありません。もちろん「家庭」や「職場」から排除された「中高年男性」にとっては不愉快極まるハリガミでしょう。しかし、たとえ「家庭」や「職場」に恵まれていても、やはりそんなに愉快なものであるというわけではないようです。

ポスターにはテクストが付されており、そこでは例えば「家庭」が

笑い声の絶えない温かな家庭。
大切な家族に包まれて過ごす豊かな時間。
夫婦や子どもにやさしく接してくれる近隣の友人たち。


とされ、「家庭」内に留まらない充実した私生活がうたわれている一方、「職場」についても

上司や同僚たちに信頼され、やりがいのある職場。
仕事を通じて、社会の中に築いてきた人間関係。


ここでも単に「職場」だけでなく、これまた充実した社会生活が謳歌されています。

このような「リア充」的な観点はしかし、それが「中高年男性」主観において表現されるとはいえ、多くの「中高年男性」の現実とはかけ離れたものであることは言うまでもないでしょう。てゆーか「笑い声が絶えない」ような「家庭」は全員揃って軽躁状態に陥っている疑いがありますから「近隣の友人たち」がお医者さんに相談した方が良いと思われますが、住居の「近隣」に「友人」と言えるようなものを持つ勤め人もそんなに沢山いないでしょう。むしろ「仕事を通じ」ただけの「人間関係」しか持っていなかったりするものです。そして思い起こせば「仕事を通じて」失った「関係」も多々あるのが実情です。まして「信頼」や「やりがい」は「職場」から失われて久しいものではないか。

そこでむしろ「家庭」や「職場」こそが「中高年男性」のストレスの原因であることでしょう。それがそんなに「大切」なものかどうか、むしろそこから逃げ出したくなるようなものではないでしょうか。しかしながらポスターのテクストは、それらが「あなたの大切なもの」であると断言してはばかりません。そして実際のところ、それは「中高年男性」の「大切なもの」に他ならないのです。

これは、「あなた」自身がそれらを「大切」に思うかどうかということには全く無関係です。むしろ「家庭」や「職場」とは「大切なもの」なのであり、そうである以上は「あなた」にとってもそれは「大切なもの」である他はないというべきでしょう。たとえ私的な、または社会的な充実した関係がなくても、てゆーかなければ尚更ですが、それは「大切なもの」となるしかないのです。

ポスターの画像は「家庭」や「職場」の「破壊」を描きます。「ヒビの入った写真」は「中高年男性」の欲望を反映しており、したがって「人目を引き」ます。「あなた」は駅のホームで自分自身の欲望に直面するのです。そうだ、「家庭」や「職場」を「壊して」しまえ。しかしその先はない、ということをポスターは教えています。それは「あなた」の「すべて」なのです。

したがって「あなた」は「大切なもの」を破壊しないではいられないのですが、破壊することは出来ません。考えてみれば、それは本当に「あなた」の「すべて」なのです。それは惨めな隷属状態かもしれませんが、それを破壊した先に待っているのはやはり隷属でしかありません。「あなた」にはもうどうすることも出来ないのです。これらのポスターがターゲットに呼び起こそうとしているのはより深い無力感であり、それこそが今日のところは「暴力」を抑止するでしょう。おそらくは明日も。どっちみちどうしようもないので、ポスターのテクストはこのように結ばれるのです。

明日もまた、いつもどおりの一日を過ごすために。


絶望の深淵を見詰めるような言葉ですが、それで「人身事故」が起こっても駅員が殴られるよりはマシというものです。しかしそんなことを言っていると本当に拳骨が駅員に向かって「飛んで来る」ことにもなりかねません。そして親切なことに、「人生を変えたい」と思った人がもし望むのであればどうすればいいのかも、ポスターにはちゃんと書いてあるのです。


posted by 珍風 at 01:04| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
民鉄協会役員及び天下り理事の方々は笑い声の絶えない温かな家庭。大切な家族に包まれて過ごす豊かな時間。夫婦や子どもにやさしく接してくれる近隣の友人たち。で、上司や同僚たちに信頼され、やりがいのある職場。仕事を通じて、社会の中に築いてきた人間関係。を築いてきたからこそ、斯様な立派なポジションにおられるんでしょう。たぶん。
例えば理事長のミサワサンは日本観光協会の非常勤理事もされておられる様ですが、そこの名簿を見ているだけで何かを壊したくなる衝動に駆られる様なアタシだからこそ社会の底辺を這いずり回っているんでしょう。
http://www.nihon-kankou.or.jp/home/gaiyou/pdf/yakuinmeibo.pdf
Posted by ゴキブリ以下のika at 2011年01月28日 11:54
罵声の飛び交う寒々とした家庭、煎餅布団に包まれて人生を反芻する悪夢の時間、夫婦や子どもを目の敵にする下の階の住人、上司には蹴飛ばされ同僚には見下され、客にはぶん殴られる惨めな職場、仕事を通じて、おエラいさんたちが明日もまた、いつもどおりの一日を過ごすために社会の中でビンボー人同士で殴り合おう。暴力がすべてを守ってくれる。
Posted by 粘菌に飼われてた珍風 at 2011年01月29日 09:55
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