2011年03月01日

エジプト風警官の殴り方

というわけで惨刑新聞は今日も頑張っておりますよ。

「喧嘩したいなら黙秘しろ」「日弁連はアンチ警察」…取り調べ警察官の違法性認定 大阪地裁判決


 強盗致傷などの罪に問われた無職、前島浩之被告(28)の裁判員裁判の判決公判が1日、大阪地裁であった。西田真基裁判長は「取り調べ警察官が違法、不当な言動に及んだ疑いがある」と述べ、弁護側の主張通り窃盗罪と傷害罪を適用、懲役4年6月(求刑懲役8年)を言い渡した。

 前島被告は、帰宅途中の酔った女性を殴り財布を奪ったなどとして、昨年4月に強盗致傷罪などで起訴。黙秘した後、認める内容の供述調書を取られたが、公判では「財布を盗んだ後、女性を送る際に逆上して殴った」などと主張し、今年2月25日に供述調書の証拠採用が却下されていた。

 判決は、警察官が取調室で行った疑いのある言動として「警察と検察ひっくるめてけんかしたいんやったら、俺の前で黙秘したらええわ」「日弁連はアンチ警察や。弁護士解任せえや」−などを列挙。「違法な脅迫で、被告の権利を侵害している」と認定した。

 判決後に会見した裁判員経験者3人は、取り調べの録音録画(可視化)に関し「証拠としてこれ以上のものはない」などと賛同。一方で「取り調べにはある程度の怖さ、厳しさは必要だと思う」との意見も出た。

2011年3月1日 産經新聞


どこのどなたか存じませんが、ある人の「意見」によれば「取り調べにはある程度の怖さ、厳しさは必要」なんだそうでありますが、その「怖さ」とか「厳しさ」というのは、共同通信によれば警察官が被告人に向かって

「黙秘の理由を言う義務がある」「弁護人を解任しろ」


などと言ってみたり、容疑者の要望にも拘らず弁護人への連絡を拒否することを指すようです。時事通信によれば

「検事調べでは余計なこと言うな」などと脅迫


することも、「必要」な事の内に含まれる模様であります。

まあ、どこの馬の骨とも解らないゴロツキが偶々裁判員となってワケの分からない事をほざくのは勝手であるとはいえ、良識のある人は愚か者の発言をわざわざ取り上げて一般市民たるご当人に恥をかかせるような事は極力避けるべきところ、産經新聞さんがこの「意見」をことさらに特筆するのは、やはり「我が意を得たり」と思ったのではないかと考えられないでもありません。

何しろ産經新聞さんときたらわざわざ遠いエジプトまで出掛けて行って悪名高い警察に同情を惜しまないくらいなのですから、「取調べにはある程度の拷問が必要だと思う」という「意見」に全面的な賛同を惜しまないものと思われます。

千夜一夜 殴られた警官


 わがカイロ支局はリビア大使館のななめ前にある。同国のカダフィ政権による反体制派への大弾圧が伝えられる中、近所では連日のように、リビア人を支援するエジプト人の小さな抗議デモが続いている。

 先日、大使館を警備する警官がデモ隊を制止しようとしたことがあった。ところが、デモの男性が「うるさい!」と警官の頭を叩いたのだ。周りの人もポカポカとやり出す。警官は頭を抱えて立ち往生だ。

 すると、警官の上官が駆けつけて言った。「申し訳ない、勘弁してやってくれ」。上官は一人一人に握手を求め、低姿勢に徹して警官を連れて行った。

 一般のエジプト人にとり、警官は圧倒的に怖い存在、だった。言いがかりのような職務質問にも甘んじるしかなく、タクシーの無賃乗車も当たり前だった。

 以前なら警官を殴った男性は即座に連行されていたはずだ。警察署で手ひどく殴られる可能性だってある。それが1月25日に発生した一連の反政府デモとムバラク前大統領の辞任を機に変わった。

 横暴な振る舞いの報いとの面が大きいとはいえ、今やエジプト警察は国民から“なめられて”いるのだ。警察が国民の信頼を得て健全な権威を取り戻すのにどれだけ時間がかかるのか。今、リビア大使館は軍が警備している。(大内清)

2011年3月1日 産經新聞


エジプトでは国民は警察に対して「健全な権威」を取り戻している模様ですが、大内清さんはこれが口惜しくて仕方がないようです。「今やエジプト警察は国民から“なめられて”いる」などと、まるで我が事のように地団駄を踏んでいます。「今、リビア大使館は軍が警備している」んだそうで、警察が「なめられ」ると軍が出て来るぞ、と言いたいようですが、大内さんはエジプトの警察が何をしてきて、エジプトの軍隊が何をしたのか御存知なのでしょうか。もちろん御存知です。

とはいうものの、エジプトの警察だってそんなに変わった事をしてきたわけではありません。「言いがかりのような職務質問」は日本でも身近に経験する事が出来ますし、近所の商店街では「無賃乗車」に類する事も耳にするではありませんか。エジプト辺りでは「以前では」「警官を殴った男性は即座に連行されていたはず」だそうですが、日本では未だに警官を殴ったら「即座に連行」されます。「警察署で手ひどく殴られる可能性だって」負けてはいません。

大内さんの書くところによるとエジプトの警察がやっている事は日本のそれと大差ないようであり、実際のところそう大した違いはないようなのですが、エジプトの警察が日本のそれのような「怖さ」を喪失している事が何か問題ででもあるかのように述べている辺り、さすがは社内で出世して恥ずかしい署名記事を書かせてもらっているだけのことはあるようです。

もっとも、産經新聞が大内さんに恥を書かせっぱなしにしているのも無責任な放任主義のなせるワザというわけでもありますまい。エジプトと日本と相呼応して産經新聞の主張するところは、昨日と同じ相も変わらぬ事でありまして、要するにオマワリさんは通行人に言い掛かりを付けたり薬局でドリンク剤を強奪したり容疑者を脅迫したりして、「圧倒的に怖く」ならなければならないということのようです。

しかしながらこれが他ならぬエジプトで書かれた事は意味のないことでもありません。むしろエジプトにいればこそ、警察が暴力団としての本領を発揮する事が期待されることになります。日本があんなことになったら大変なのであります。

民主化運動が中東からアフリカとか東アジアにも波及しようとしているんだそうですが、これには色々な対処の仕方があるようです。地球のどこかで民衆が自由を求めて立ち上がった時に各国の政府は気分を害するわけですが、どうもアメリカは腹をくくったようです。一度腹をくくれば影響しようが波及しようが対応は可能で、これを受入れた上で自分に有利なように操作しようとしているようです。

一方で中国や北朝鮮はひたすら警戒し、否認する事に余念がありません。このような対処の仕方では、様々な場所で自由を求める民衆が立ち上がり、それに応じて他の場所でもそのような動きが広がるにつれてますます追い込まれて行く事になりますのであまり利口とも狡猾とも思われないものであります。中国や北朝鮮は自分とこの国民に運動が伝わる事を怖れ、民衆に怯えていますが、我等が産經新聞もいわゆる「特定アジア」と同一歩調を取ります。

てゆーかそういう読者層がいて『産經新聞』を買ってくれているから大内さんも書くわけです。優れた新聞には優秀な読者がつきものであります。もっとも情報を完全に遮断するわけにはいきませんから、あたかも何事かを報道しているかのようにエジプトやリビアのことは書きますが、国内で起こっている事は「黙秘」しているところを見ると喧嘩上等ということでしょうか。

しかし民衆をヤクザ者に抑えさせなければ夜も眠れないらしいのですから、可哀想に同胞に怯えるという不幸な境遇に生きているようではありますが、彼等の恐怖は極めて理にかなった事であるともいえるでしょう。やはり人間生き死にがかかって来るとものの道理が解って来るようですから、その様な人々に対しては「ある程度の怖さ、厳しさ」をもって対処する事が「必要」だという「意見」も、言われてみればもっともなことであるとしか言いようがありません。


posted by 珍風 at 22:15| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サンケイ新聞がカイロに支局を持っていたことに驚いた。どうせ脳内妄想記事書くだけなんだから要らないんじゃないか。
Posted by ika at 2011年03月03日 11:24
一面トップで脳内妄想記事炸裂してみました
http://d.hatena.ne.jp/sankeiaidokusya/20110304/p1
Posted by ika at 2011年03月04日 09:02
やっぱり優秀な読者がいましたね。大阪本社の地下にでも暖房のない部屋があって、可哀想な記者は自前で暖をとりながら妄想を書き連ねているという。その部屋は「懐炉支局」と呼ばれているのだ。そうに違いない。
Posted by 使い捨て珍風 at 2011年03月04日 11:17
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。