2006年06月14日

ホワイトカラー・エグゼンプション=「自律的労働制度」?で盟神探湯の復活だ!

「デトックス」なんて面倒だな、解毒だろ、「ゲドックス」でいいじゃん、なんて言っていると、周囲の若い、あるいはベテランのお嬢さんがたから白い眼で見られる、それを「オヤジギャグ」と言います。これは寒いものということで、これからの季節には欠かせない夏の風物詩ですが、まだ夏じゃないのに早くも一発かますのが季節を先取りしたオシャレ感覚なのです。

労働法制見直し始動 一定年収で残業代なくす制度も提案
2006年06月13日21時40分
 働く人と会社の雇用契約のルールを明確にする新しい「労働契約法」と労働時間法制の見直しに向けて、厚生労働省は13日開かれた労働政策審議会の分科会で、素案を示した。長時間労働の是正のために賃金に上乗せされる残業代の割増率を引き上げる。一方で、一定以上の収入の人は労働時間の規制から外して残業代をなくす仕組みなどを提案している。会社員の働き方を大きく変える内容だ。
 同省では7月に中間報告、今秋までに最終報告をまとめ、来年の通常国会に労働契約の新法や労働基準法改正案などの関連法案を提出したい考え。素案は残業代の割増率の引き上げなど労働者を守るため規制が強化される部分と、残業代が必要ないなど企業にとって使いやすい人材を増やす側面の両面を含む。労使双方から反発が出ており、どこまで一致点が見いだせるか議論の行方は不透明だ。
 素案では、長時間労働を是正するために、現在最低25%の残業代の割増率を、月30時間を超える場合に50%とする▽長時間残業した人の休日取得を企業に義務づける▽整理解雇の乱用を防ぐルールの明確化などを盛り込んだ。
 その一方で、一定以上の年収の人を労働時間規制から外して残業代の適用対象外にする「自律的労働制度」の創設▽就業規則など労働条件変更の際、過半数の社員でつくる組合の合意があれば個別の社員の合意と推定▽裁判で解雇を争って無効になった場合でも解雇を金銭で解決できる仕組みの検討――なども示した。
 自律的労働制度の対象となる社員について、厚労省案では具体的な基準は示されていないが、日本経団連は昨年、年収が400万円以上の従業員を労働時間規制の対象外にするよう提案しており、基準の設け方によっては多くの正社員の残業代がなくなる可能性もある。
 同日の分科会では、労働側が、労働時間規制の適用除外を広げる案や解雇の金銭解決などが盛り込まれていることに「これまでの議論が反映されていない」と強く反発。労使の一致点が見つからなければとりまとめをしないよう求めた。
 一方、使用者側も「雇用ルールを明確にするのに必ずしも法制化は必要ない」などとして、ルールの厳格化によって人事・労務管理などが規制されることに警戒感を示した。
asahi.com


カタカナ言葉をなくそう!とかなんとか言って、新しい言葉に拒否感を示すのが「オヤジ」の特徴でありまして、「ホワイトカラー・エグゼンプション」は日本語で「自律的労働制度」ということになったそうです。シャレにもなっていないところが「オヤジギャグ」の条件を満たしています。意味も全く違う。何が「自律的」なのかわかりませんが、労働者の「自律」とは全然関係なさそうですから、雇用者の方が労働法制に対して「自律的」であるということでしょうか。そういえばなんだかそういう意味のことを言いたい人たちもいるようです。

厚生労働省の冗談は、「規制改革・民間開放推進会議」や「今後の労働時間制度に関する研究会」の報告書に沿うもので、「ホワイトカラー・エグゼンプション」のようなものをなんとかして導入して労働時間の最大化を図るものですが、ここでは労働者を2種類に分断することが重要な点であります。すなわち「一定以上の年収の人」とそれ以下の年収の労働者に。いわば「正社員」と「不安定雇用者」、あるいは流行の言葉で言えば「勝ち組」と「負け組」に。

しかし年収400万で「勝ち組」とはちょっと待ってくれという感じです。これは「正社員」の平均年収よりちょっと少ないくらいの金額にすぎません。だいたい人に雇われている立場で「勝ち組」もないものです。しかしこれからは大多数の労働者が短期契約や派遣で働くようになることを考えると、とにかく就職時の競争で他の人を蹴落として「正社員」になった、というくらいの意味で「勝ち組」と言えないこともありません。もっとも一部では年収1千万以上の被雇用者を「勝ち組サラリーマン」と、これは皮肉でも冗談でもなく言っているようですから、まあその予備軍くらいのところでしょうか。

この人たちが「自律的労働制度」、というのはつまり労働時間規制の適用除外対象ということで「ホワイトカラー・エグゼンプション」の基本的な意味を十分満たす制度ですが、これの対象になっています。年収400万で無制限労働。現在法定労働時間は週40時間ですが、この人たちがどのくらい働かされるか、無制限ではいくらなんでもちょっと可哀想なので、控えめに週80時間とすると、年に4160時間です。年収400万をこの年間労働時間で割ると1時間あたりの金額は961.54円となります。これが「勝ち組」の「時給」です。

次に「負け組」諸君ですが、この人たちには残業手当がつくそうですけど、んなものは所定内賃金を低くすることによって対応可能です。どうしても支払わなければならない金額は「地域別最低賃金」として決められていますが、このなかでも一番高いのが東京で、それでもその金額は714円にしか過ぎません。いくらなんでもこれではちょっと可哀想なので、800円にしてあげましょうか。この人たちも「勝ち組」同様に週80時間働くとします。残業時間は週に40時間。1ヶ月には160時間くらいですが、「現在最低25%の残業代の割増率を、月30時間を超える場合に50%とする」ので、これの適用が130時間になります。そうするとこの人たちの年収は、およそ時給の5030倍となります。時給が800円とすると402万4千円。これが「負け組」の年収です。なんだ一緒じゃん。

もっともここでは「サービス残業」とか不当なペナルティその他通常行われている労働慣行を無視して、雇用者が法律を遵守するものという仮定をしていますので、現実離れした数値を出してしまっているかも知れませんが、仮に残業がゼロだとするとこの人たちの月収は14万円にも届きません。最低賃金ではもっと低く、12万3千円くらいです。残業しなければ生活できない程度ということになります。

もちろん「正社員」諸君は、うまくするとそれこそ年収1千万とかの「勝ち組サラリーマン」になれる可能性はあります。もっともそれはごく一部の人の話であり、大多数はそこまで行かないうちに病に倒れたり、死んでしまったり、気が狂ったりします。そこら辺は諸君の「自律」に任されており、会社はいっさい感知しません。そんなわけで諸君はみんなくたばるのです。

「負け組」諸君も同様で、先ほどのように週80時間の残業があればともかく、実際には仕事があってもただ働きする「正社員」にやらせた方が安上がりですから、諸君の仕事はありません。もし仕事が回ってきても、残業代が支払われることは現実には極めて稀です。支払われない場合に文句を言うと首になります。しかしたとえ支払われたところで、こんなに長時間労働を続けていれば病に倒れたり、死んでしまったり、気が狂ったりします。そんなわけで諸君はみんなくたばるのです。

「分断」に意味はありません。勝っても負けても結局は負けるしかないゲームなのですから、「勝ち組」だろうと「負け組」だろうと、正社員だろうとアルバイトだろうと、諸君はみんなくたばるのです。しかも「使用者側」は「雇用ルールを明確にするのに必ずしも法制化は必要ない」などと、政府がこれだけ使用者側に有利な案を出しても、まだ不足のようです。彼らは過激にも無法状態を求め、他人の生命を奪う自由を要求しています。もちろん自らの生命と財産を守る法制度と警官と岡っ引きを手放すことはありませんが、労働者が自らの生命と権利を擁護するにあまりに無頓着であるのを見て取って、来年からは奴隷制と食人の習慣とを復活させ、戦士の魂をたたえて酋長に土下座し、すべての労働紛争の解決には盟神探湯をもってあたる予定です。
posted by 珍風 at 23:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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