2011年08月08日

シネマ見ましょか お茶のみましょか いっそ人類やめましょか

あの吉本隆明さんがまた何か言っているみたいなんですが、誰も見向きもしないので

−事故によって原発廃絶論が出ているか。

「原発をやめる、という選択は考えられない。原子力の問題は、原理的には人間の皮膚や硬いものを透過する放射線を産業利用するまでに科学が発達を遂げてしまった、という点にある。燃料としては桁違いに安いが、そのかわり、使い方を間違えると大変な危険を伴う。しかし、発達してしまった科学を後戻りさせるという選択はあり得ない。それは、人類をやめろ、というのと同じです。


だから危険な場所まで科学を発達させたことを人類の知恵が生み出した原罪と考えて、科学者と現場スタッフの知恵を集め、お金をかけて完璧な防禦装置をつくる以外に方法はない。今回のように危険性を知らせない、とか安全面で不注意があるというのは論外です」

2011年8月5日 日本経済新聞「8・15からの眼差し3 震災5ヶ月」


「戦後最大の思想家」の言うことですからアテにはなりませんが、吉本さんはチェルノブイリの時分も同じようなことを言っていたわけですから今更誰も見向きもしないのは当たり前なのでした。特筆すべきは日経記者さんの記憶力であると言うべきでしょう。もっとも、「日経を読むような連中」には「吉本隆明」のセリフが影響力を持つだろう、という判断が妥当であったかどうかはわかりません。

最近色々な人が死ぬので、お年寄りが元気でいることが分かるのは何よりなんですが、考えてみれば人が死ぬのは年中しょっちゅうのことですから気にするには及びません。もっとも、いくらお年寄りとはいえ「老化」に起因する問題とそうでないものには区別が必要です。

吉本さんは何か誤解している、というのは東工大出身の人にしては致命的なことかも知れませんが、「原発」というものがどうやら「原理的」には「放射線」で「発電」をしていると思っているらしいからなんですが、もしそうだとしたらこれは大変な「科学」の「発達」であります。

たぶん「ドラえもん」の中に装備されている「原子炉」も、この「吉本型原子炉」の一種であると思われます。どう考えても「ドラえもん」の筐体の中で蒸気タービンを回しているとは思えませんし、現代の「原子炉」と同様のものが中に入っているとすると、冷却水の供給と排水の関係からして「ドラえもん」は野比家のトイレから出ることが出来ません。

未来の技術的達成がトイレを占領していて、その代わり色々な相談に乗ってくれる、というのも、それはそれで面白いかも知れませんが、実際には「ドラえもん」はそこらを自由に歩き回ったり、空を飛んだりしています。これはその「原子炉」がタービンを回すための蒸気を作るためのものではないということを示しています。おそらく、そこでは放射性物質から出るエネルギー、と言ってもやっぱりそれは熱ですが、この熱が何の媒介もなく「ドラえもん」のメカニズムを駆動しているか、放射線として放出されている電子が直接に電子回路を動かしているに違いありません。

これこそ「吉本型原子炉」であり、現在すでに「発達してしまった科学」の到達点なのです。残念なのはこの「科学」が誰にも知られていないということでしょう。「ドラえもん」や冷蔵庫や洗濯機がそれぞれ小さな「原子炉」を内蔵して稼働することが出来るのです。巨大な発電所や長大な送電線はもはや必要ではありません。現在の「科学」は、吉本さんによれば、そのようなところまで来ています。しかしながら今日一般的に知られている「原子炉」というのは、蒸気機関のためのボイラーでしかありません。

吉本さんはスチームパンクなのかも知れませんが、実際の原発はそれを止めると「後戻り」になるほどのものではありません。蒸気機関です。外部燃料は薪でも何でもいいんですが、その一つに過ぎません。原発の蒸気機関としての新しさはレシプロ型機関に対してタービン型の方が新しい、という点にあるのかも知れませんが、大したことではないようです。すなわち原発というのは吉本さんの言う「科学的には少しの思いつきを追ったに過ぎないと思えることが莫大な富の権力にむすびつきうるという事態」に他なりません。

むしろ吉本さんの「知性」の「鋭さ」というものがあるとすれば、それは「科学」を「覚醒剤」に喩えてみせたところに存在するでしょう。「科学」は、時として文字通り「確実に人間を破壊します」。大量被曝した人体がどのように破壊されるか、覚醒剤キャンペーンのイメージがそれを先行して提示していたのは偶然ではありません。もっとも吉本さんのは、実際には「原発をやめる」と「人類をやめる」ことになるというギロンになっていますから本当は逆なんですが、頭に浮かんだイメージの関係の絶対性を見間違えただけかも知れませんし、不注意な読解と誤解に救われる、というのは全くもってありがちなことなんですから気にしないことが大切です。


posted by 珍風 at 05:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ゲンパツは絶対必要と言う「共同幻想」
Posted by ika@そんなバナナ at 2011年08月09日 08:53
「共同幻想」に対立するとヒドい目に遭う、と言う「共同幻想」。
Posted by 珍風無限後退 at 2011年08月10日 06:50
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