2013年04月03日

すいすいと坂口安吾になりすまし

誹謗中傷→即時反論可能に なりすまし→「本物」に認証バッチや証明シール


 ネット選挙が解禁されることで各党が最も恐れているのは、誹謗(ひぼう)中傷の拡大や候補者らの「なりすまし」だ。

 「解禁により誹謗中傷が広まる恐れもある」

 22日の衆院政治倫理・公選法改正特別委員会で、自民、公明、維新3党案の提案理由説明を行った自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長はこう語り、ネット選挙解禁による懸念を認めた。

 3党案は誹謗中傷対策として、政党と候補者に利用を限定した電子メールでは、送信者のメールアドレスと氏名の表示を義務付けた。違反した場合は禁錮1年または罰金30万円以下の罰則を設け、公民権の停止もある。「発信者」が明らかになることで誹謗中傷が抑制されるというものだ。

 ただ、「何が誹謗中傷か」を判定することは難しい。そこで迅速に削除できる仕組みも強化した。

 不本意な書き込みについて削除の要請を受けたプロバイダーが、情報発信者の同意がなくても削除できる期間を従来の7日間から2日間に短縮させた。それでも、攻撃的な書き込みが投票日直前に集中的に行われれば、対処に限界があるとの問題は残る。

 自民党作成の「Q&A集」では、ネット選挙解禁により「今まで困難だった選挙期間中の反論や訂正をウェブで発信して対抗できる」との利点も強調する。これまで怪文書や口コミで不当と感じる情報が広まっても、候補者らが打ち消すのは困難だった。ネットを利用すれば、即座に対応が可能となるわけだ。

 他人が候補者らを装って偽情報を流す「なりすまし」は、選挙戦が過熱すればネットにも舞台が広がってさらに横行しかねない。

 3党案は、解禁にあわせて総務省令を改正する。政党、候補者が立候補届け出の際にそれぞれのホームページ(HP)のアドレスも提示させる。総務省と各都道府県の選挙管理委員会のHPにそのアドレスの一覧を掲載し、照合することで怪しいHPが本物か偽物かを判別できるようにする。

 しかし、ネット業者「GMOグローバルサイン」によると、公式HPと同じアドレスで偽のページを作成することもできるという。

 そこで同社は、参院選向けに「サイトシール」と呼ばれる電子証明書を開発した。政党や候補者のHPのトップページに表示し、クリックすれば本物と確認できる仕組みだ。

 短文投稿サイト「ツイッター」の日本法人も、参院選にあわせ、本物のツイッターと証明する青色の「認証バッチ」をプロフィル欄に添付するサービスを提供する方針だ。すでに導入済みの国会議員もいるが、約8万人のフォロワーがいる安倍晋三首相の公式ツイッターにはない。(酒井充、小田博士)

2013年3月24日 産経


とはいうものの、考えてみれば「なりすまし」もそんなに簡単なものではありません。「こんにちは安倍晋三です」と一言いっておけば何を書いても安倍晋三というような、そんな甘い話しじゃありません。「候補者らを装う」といっても、顔が似ているわけじゃなし、声が似ているわけでもないのです。てゆーか、顔を見せたり声を聞かせたりしなくても良いのが妙味なんですが、じゃあどうすればいいかというと言葉を似せるしかありません。

まずは言葉遣いから。例えばこういうブログはこういう書き方をしているんですが、僕だっていつでもどこでもこんな文章を書いているわけではありません。文章のスタイルがブログにおける人格で、プロの文筆家であればスタイルはスーパーモデル並みに大切なものです。プロでなくても個性が出て来てしまいますから、無駄の多い文体は贅肉の多い身体に宿ったりするのかも知れません。

ちなみに「文体診断λόγων」というサイトがあって、あなたの文体を診断、てゆーか「名文の中から類似の文体を探し出し」てくれたり「文章の表現力や読みやすさを評価します」なんだそうです。
http://logoon.org/

これに何か文を書いて入れてみると「文体診断結果」というものが出て来まして、誰の「名文」の文体と似ているか教えてくれるんですが、例えば上記第1パラグラフを入れてみると

一致指数ベスト3
 宮沢賢治  58.2
 有島武郎  58.1
 井上靖   53.7

一致指数ワースト3
 岡倉天心  19
 橋本龍太郎 23.3
 阿川弘之  25.6


なんだそうで、僕の文体は宮沢賢治と似ているということが分かるようになっています。なるほど言われてみればそうなのかも知れませんが、全然違うような気もします。いずれにしても似てるとか似てないとか言うのは他人の特権でありまして、自分でいい出さない方が賢明であることは言うまでもありません。

で、「文章評価」なんてこともしてくれまして、4項目にわたって大変に厳しく評価してくれます。

文章の読みやすさ  評価D 一文がやや長い
文章の硬さ     評価E 文章が柔らかい
文章の表現力    評価A とても表現力豊か
文章の個性     評価A とても個性的


おおっ、A評価が二つもありますぜ。僕が言ってるんじゃないんでお間違えのなきよう。本当の評価の結果です。まあコンピュータのやることですからあまりあてにしても仕方がないわけですが、その次には得点の詳細も表示されますし、最後には「宮沢賢治先生があなたの味方です。がんばってください。」なんて応援してくれるんですからこたえられません。何をがんばれというのか。

と、ここで今まで書いた文を全て入れてみたら、味方は坂口安吾先生になってしまいました。一致指数が一番高いのが坂口安吾になったわけです。サンプルが長い方が信頼度が高いものと思われます。ちゃんと最後まで完結した文章を診断してもらった方が良いのかも知れません。そこで今度は上記で引用した産経の記事、すなわち酒井充さんと小田博士さんの合作による名文を診断してもらってみるってえとこれが

一致指数ベスト3
 橋本龍太郎 65.3
 小泉純一郎 65
 吉田茂   65

一致指数ワースト3
 新美南吉  27.6
 森鴎外   31.9
 宮沢賢治  32


なるほど産経さんとそりが合わないわけで、ほとんど正反対と言って良いくらいです。それにしても政治家さんとの一致指数が高いのは面白い発見です。もっともそんなに面白いわけではありません。自民党の政治家の「名文」というのは産経の記者あたりが代筆してる可能性が高いというだけの話しです。ついでに「文章評価」の方ですが、

文章の読みやすさ  評価E 一文が長い
文章の硬さ     評価E 文章が硬い
文章の表現力    評価A とても表現力豊か
文章の個性     評価A とても個性的


A評価というのも乱発されている様でして、ぬか喜びをして何だか損をした気分になりました。ネット社会は危険がいっぱいです。

このように「なりすまし」において文体というものは極めて重要であります。坂口安吾がいつものスタイルで橋本龍太郎に「なりすます」ことは出来ないでしょう。もう一つ気をつけなければならないのは、言うまでもなく書いてある内容です。いくら名を偽って文体を真似ても、本人があまり書きそうもないことを書いてしまっては、成功は難しいものと思われます。

もっとも世の中には西田譲さんのように、もうほとんど何を言っても良い、あの人ならそんな事でもあんな事でも言うだろう、ほとんどメチャクチャだ、という特異なキャラクターを獲得されている方もいらっしゃいますので何とも言えないところもあるのかも知れませんが、概ね、特に政治家というような人は、言いそうなこと書きそうなことと、言いそうもない書きそうもないことが比較的はっきりしているものですから、そこらへんの判断は読めば分かりそうなもんです。

畏れ多くも安倍晋三先生を例にとりますと、彼が「TPP交渉参加に反対する」と言ったと仮定すると、それが常日頃の彼の発言や態度と矛盾しているかどうかをチェックするならば、これが「なりすまし」であることが分かるでしょう。

このように「なりすまし」は知識と技術とセンスが必要な、多大の困難を伴う作業である一方、「なりすまし」を見破るのはそんなに難しいことではありません。「他人が候補者らを装って偽情報を流す」には、その「偽情報」が「候補者ら」の真情報と矛盾しない限りにおいて可能になるのです。即ち、優れた「なりすまし」は本人を代弁してくれるものなのであって、メールだトゥイッターだといちいちめんどくさいネット選挙も「なりすまし」の力を借りればむしろ大きな省力化に繋がり、選挙にかかるお金を節約することにもなるわけです。もっとも、選挙の時にウソをつく人は別で、それは自分でやってもらわなければなりません。いずれにしてもいきなりモーツァルトなんかを投げてよこす江夏の投球の意外性にはかないませんが。


posted by 珍風 at 07:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。