2008年01月16日

なまはげを返り討ち

ああいう事件があった折ですから、東北各県としては刃物を振り回すようなことは極力避けているかと思いきや、全然そういうことはないらしいのが頼もしいやら情けないやら。

なまはげ問題 苦情新たに7件
「女性客が体触られた」

 男鹿市の男鹿温泉郷の旅館で昨年12月31日、なまはげを実演した男性が女性風呂に侵入し女性客数人の体を触った問題で、男鹿温泉郷協同組合と同市観光協会が同温泉郷内の全9ホテル・旅館に調査したところ、これ以外に、少なくとも5ホテル・旅館に宿泊した女性客が「体を触られた」との苦情7件が、宿泊施設や市観光協会に寄せられていたことが15日、わかった。市は今後、体に触れるのを抑えるなど、時代に合ったなまはげ実演のルール作りに向けて、なまはげを実演する町内会や観光業者などで協議会を発足させることを決めた。
 市や市観光協会は、市内全域に調査対象を広げ、なまはげの女性に対する、やりすぎた行為がなかったかを調査している。また、男鹿署は、男性が女性風呂に侵入した問題について、事実確認を行っている。
 同組合によると、昨年12月31日には、同温泉郷周辺の2町内会の男性計10人が、なまはげになり、町内の民家を回った後、午後8時ごろから約1時間かけて温泉郷内の9ホテル・旅館を訪れ、ロビーなどで舞いを見せるなどして実演した。
 7件の苦情は、このうち、5ホテル・旅館に宿泊した県内外の女性宿泊客の家族や友人、ツアーを企画した旅行業者などから、宿泊施設や市観光協会に寄せられた。内容は、ホテルのロビーなどでなまはげの実演を見学した際に「抱きつかれて体を触られた」「胸を触られた」など。
 市によると、これら5施設を回ったのは、女性風呂に侵入した問題を起こした男性が所属する「湯の尻町内会」(6人)という。
 2町内会や同組合が、なまはげになった男性10人から聞き取り調査をしているが、問題を起こした男性以外は「わいせつ行為は行っていない」と話しているという。
 あるホテルは、宿泊した若いカップルの男性から「なまはげが彼女の体を触った」という苦情を受けた。ホテルの責任者によると、ホテルロビーで宿泊客50〜60人を前になまはげの実演が行われた。この責任者は読売新聞の取材に対し、「抱きついたり、度が過ぎる行為はなかったと思う」と話している。また、7件の苦情のほかに、宿泊した男性客から「なまはげが暴れすぎてけがをした」との苦情が旅行業者を通じて寄せられたホテルもあった。
 一方、男鹿温泉郷協同組合と市観光協会、市観光課の幹部は15日、県観光課に、今回の問題の経緯を報告した。同市の佐藤一誠市長は同日、「この度の行為はなまはげはいくら無礼講とは言え、あってはならないことで、大変遺憾。一日も早い信頼回復に努めたい」とのコメントを発表した。

2008年1月16日 読売新聞


まあ、お祭りですから、祭には性的放縦がつきものであります。昨年から急にこういうことが始まったとは考えにくいものがあります。一方、観光客は「安心・安全」で「健全」ななまはげを見に来ているのですが、そんなものは最初からなかったのでした。なまはげは危険でいかがわしいものなのです。角と牙を生やした人が包丁を振り回しているんですから、見れば判るはずではないでしょうか。

これを機に、「そういうことなら」ということでこの習俗が全国に広がることになると、僕もやってみたいですが、女性には迷惑です。ところが秋田以外の地域でもこの時期、客寄せのために商店街などがなまはげの扮装をした人を呼んだりすることがあるようです。こういう報道があったこの時期にいくらなんでもそれはないんじゃないかと思うんですが、千葉の市川にあるニッケコルトンプラザというショッピングセンターでは呼んだそうですよ。大した度胸です。苦情が来ないかと心配ですが、本場と違って家に来るわけではないからいいのか。しかし「泣ぐ子はいねが〜」などと子供をダシにして家に来ちゃった場合は、お母さんがたも包丁を持って、無礼な行いには実力を持って抗するのが天晴れ婦女子の鑑であります。

全国に家庭教育支援チーム しつけ、子育てで文科省

 文部科学省は2008年度から子育ての相談に応じたり、しつけに無関心な親の啓発に取り組む「家庭教育支援チーム」を各地に創設する。地域住民のほか、保健師などの専門家で構成。支援対象は主に小学生の子どもを持つ家庭で、核家族化を背景に低下した家庭の教育力の回復を目指す。
 全国の約280の小学校区に支援チームを設置するモデル事業を開始。モデル地域は2月に都道府県単位で募集し、5月に文科省が選定する。08年度予算案に約12億円の事業費を計上した。09年度からは市町村主体でチームを設立してもらい、将来は全国約2万3000の全小学校区への配置を目指す。
 支援チームは、地域の家庭教育アドバイザーとして市町村が養成して認定する「子育てサポーター」やPTA、町内会役員、子育て経験のある住民らの専従員と、保健師や臨床心理士らの専門家の計5、6人でつくる。

2008年1月14日 共同


そういうわけで今度は文部科学省が、小学校区単位で「家庭教育」を「支援」するんだそうです。異臭を放ちそうな「子育てサポーター」とか「町内会役員」、「子育て経験のある住民」が、大変ありがたいことに「子育て」の「相談」に「応じ」たり、「しつけに無関心な親」を「啓発」したりするようです。「子育て経験のある住民」というと、要するに近所のオバサンのことですが、これは若いお母さんの天敵です。こういう人たちは独りよがりの見地からお為ごかしのとんでもないことをヌカしますので、やりすぎると包丁で刺される心配があります。一方、「町内会役員」も要注意です。「相談」に乗っているうちにいつしかなまはげならぬ狼と化すことが予想されます。まあ、合意の上なら仕方ありませんが、合意がなくても、ちっとやそっとの犯罪行為は誤摩化してしまえるのが町内会役員の強みであります。

いや、真面目な話し、上手くいくとは思えないのでおよしなさい、と言うべきなんでしょうが、これになんと12億円かけるというのですから大変です。来年度は280の小学校区のモデル事業ですが、それで12億円。将来的には2万3千の小学校区でやるというんですから、いくら無駄遣いをするつもりなのか知りませんが、これが誤報だというんですから驚いた。文部科学省によればこの事業は

地域における家庭教育支援基盤形成事業(新規)
平成20年度要求額 2,214,027千円
[生涯学習政策局男女共同参画学習課]
 身近な地域において子育てサポーターリーダー等で構成する「家庭教育支援チーム」を創設し、情報や学習機会の提供、相談体制の充実をはじめとするきめ細かな家庭教育支援を行うことにより、家庭教育支援基盤の形成を促進する手法の開発を行う


「手法の開発」とか難しそうなことを言っていますが、それにしても約22億円です。共同通信社は勝手に10億円カットしてしまいましたが、22億円が、とりあえず280の「地域」のボスどもに振る舞われるというわけです。1小学校区あたりに平均すると790万円になります。厚生労働省の方はどっかに事務所を借りるということで、1中学校区あたり約700万円を計上していますが、「家庭教育支援チーム」とやらは事務所を持つのでしょうか。いやむしろ小学生が対象なんだから、小学校の空き教室でも借りた方が良いでしょう。幾らかの家賃は払わなければならないでしょうけど、随分安く済むと思われます。

というところで実はそれは誤解でした。「家庭教育支援チーム」は小学生を対象としておりませんでした。対象はあくまで「親」のほうです。親の「相談」に乗ったり、親に乗ったり、親の肛門を開発したり、親を「啓発する」のが目的です。「啓発する」のはケツの穴ではなくて「しつけに無関心」を「啓発」するんですから、あらぬ期待を抱いたりおかしな道具を持って来ないようにしたいものです。

しかし、ここで「しつけ」というのが肛門性交のことであるなどと思われてはたまりませんから、「しつけ」が何を指しているのかを確定するのが急務です。みんな大好きWikipediaによれば、「しつけ」とは社会規範の内面化のための訓練だということです。それで「規範」というのは、どうやら当為文ないしその体系のことらしい。ところが当為文の真偽はにわかに決定出来ませんから、広く社会一般に受け入れられている規範が、はたして内面化するべきものであるかという判断は一様ではありません。てゆうかある規範が「社会一般に受け入れられている」かどうかという判断も一様ではありません。

もちろん「法」というものがありますが、むしろ刑罰、即ち負のモチベーションを与えることによって法の文言の遵守を担保しているところであって、法に表現されているらしい「規範」を内面化することを法は期待していないようです。ちなみに厳罰化は法を犯すことによるコストの増大を図ることによって違法行為の減少を期待するものですが、これが「内面化」とは逆行することであることは言うまでもないでしょう。

それはともかく、「しつけ」すなわち「社会規範の内面化」を図るのも一つの教育方針であるし、それを図らないこと、すなわち「しつけに無関心」であることもまた一つの教育方針であり得ます。「しつけに無関心」であることを蒙昧によるものとして「啓発」しようとするのは間違った認識にもとづいています。「家庭教育支援チーム」はバカの集まりか、そうでなければ特定の教育方針を個人に押し付けようとしています。しかし行政はそういうことをしてはならないのであって、それが分らないのであればやっぱりバカの集まりです。そうでなければ790万円に目が眩んでいるのですが、これは国庫金の不当な支出であり、ここから甘い汁を吸った人はお金を返さないといけません。どうせそういうことなら最初から関わらないのが賢明なのであって、あえてそんな「チーム」に加わろうという人はやっぱり利口とはいい難い。

ところがなまはげ同様、子供をダシに「親」とか「保護者」に「啓発」の猿臂を伸ばそうというイヤらしい企画が後を絶ちません。例えばセコいぜ東京都。

有害サイトから子供を守れ 親の意識向上へ 都がネット助言者養成

 全国各地で子供を巻き込んだネット犯罪が多発している問題で、東京都は来年度から、ネット上で守られるべきモラルを教えたり、有害サイトの対処法を普及させたりするインターネットアドバイザーの養成に乗り出す。3年間で100人を目標にしており、地域で小学生の子供を持つ保護者らを対象にした講習会を開催し、ネットに対する知識を深めてもらう。ネットへの親の監視の目を高めることで、子供をネット犯罪から守る家庭環境づくりを目指す。(植木裕香子)
 都が養成するのは、インターネット環境に対する幅広い知識を持つ人材。都作成のハンドブックを活用して、インターネットの掲示板への書き込みによるいじめ▽「死にたくなければこのメールを回せ」といったチェーンメール▽迷惑メールにだまされたことによる架空請求−などの対策のほか、有害サイトの閲覧制限方法について技術面から学ぶ。
 そのうえで「インターネットの掲示板で、個人を集団でいじめるようなことには加わりません」「チェーンメールが届いたら親に相談します」「友達のゲームでも対象年齢外のものでは遊びません」など、インターネットを利用する子供へのルールづくりの必要性について理解を深める。
 保護者への啓発を目的としているため、都は人材養成の際、多くの保護者と触れる小学校のPTA役員や、地域で青少年健全育成に努める関係者らに呼びかける。
 都では将来的に、都内の小学校全1323校にアドバイザーを各1人配置し、子供のネット環境に対する親の監視を徹底させたいとしている。
 平成18年の犯罪白書によると、インターネットの出会い系サイトを通じた買春など、17年の児童買春・児童ポルノ禁止法での摘発件数は456件で、13年から約2倍に増加している。
 ネット犯罪に詳しい園田寿・甲南大学法科大学院教授は「インターネットの世界はあくまでも仮想のもの。保護者は現実社会というアナログ世界のコミュニケーションこそが、社会では大切ということを子供に伝えてほしい」と話している。

2008年1月13日 産経ニュース


「有害」とされる情報の有害性は立証されていません。つまりある情報が「有害」であるという証拠はどのような立場から見ても存在しないのです。「有害情報」は存在しません。何ものかが「有害」であるという言明は趣味志向の表明にはなりますが、「有害情報」が存在すると言い出すことになると、これは「価値観の押しつけ」ではなくて虚偽の主張となります。それでここではそういう問題に深入りせずに、むしろ「子供のネット環境に対する親の監視を徹底させ」ることが目的となっています。「親」が「監視」を「徹底」しているかどうか「監視」すること。これが全くのデタラメにもとづいて実施されようとしてます。

また、現に存在する社会を「正しい」としたいあまりに仮想現実を敵視する結果、「インターネット」を「現実社会」と切り離し、対立させる考え方が問題をややこしくしています。このように考える限り、「インターネット」における「有害」は「現実社会というアナログ世界」では相対的に小さな害悪をしかもたらさないようです。どうせ「あくまでも仮想のもの」なんですから、「現実」には大して影響ないやね。てゆうか「アナログ世界でのコミュニケーション」って言語のことだと思われますが、言語という記号体系によってそこらの酔っぱらいのオッサンも結構高度に抽象的な生活を送っていると考えられています。「仮想」も言語の作用にほかなりません。この園田さんとかいう人、言語の作用について「法科大学院教授」としてどう考えているのかよくわかりませんが、法ってのは言語でしょうが。そんな暢気なこと言ってて良いのでしょうか。いいんでしょうな。きっと「社会では大切」な何かがあるんでしょ。

なまはげは餓鬼共を脅かすことは脅かしますが、実はその他のターゲットとして「怠け者」、それから新婚のお嫁さんというのもあるのでした。餓鬼を泣かしたり、怠け者を懲らしめたり、若妻すすり泣かせたり、その昔は何が行われていたのか想像に難くありません。「初夜権」の名残のようなことも考えられますが、恐ろしいことです。なまはげに酒を飲ませてもてなす、というのは何よりもお嫁さんの保護のためだったのではないでしょうか。やっぱり飲み過ぎちゃうとねえ、ダメなんだよ。もっとも最初に訪問を受ける家は残念ながらアウトです。


posted by 珍風 at 23:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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