2008年03月17日

日本でチベット

映画「靖国」推薦問題、文化庁幹部を注意

 ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の国会議員向け試写会開催をめぐり、渡海紀三朗文部科学相は14日、閣議後の会見で、案内状に「協力・文化庁」などと記載されていたことを取り上げ、推薦映画ではないことを強調し、表記を承知していた文化庁幹部を注意したと述べた。
 渡海文科相は、映画「靖国」に文化庁所管の独立行政法人から750万円が助成されている点には、手続きは正当に行われているとの認識を示した。ただ、配給会社作成の試写会案内状に「文化庁の協力による試写会」「協力・文化庁」と表記されていることを取り上げ、「文化庁が推薦しているような印象を与える」として、安易に「文化庁協力」との文言使用を認めるべきではないとの見解を示した。
 映画「靖国」は保守系国会議員から疑問視の声もあるが、映画について渡海文科相は「見ていないのでコメントは控えたい」とした。
 映画は中国人監督が制作。試写会は全国会議員に案内状を出し、12日に都内で開かれた。

2008年3月14日 産経ニュース


もちろん事情を知っている人はそういう「印象」を持たないでしょう。むしろアルゴ・ピクチャーズもなかなか面白いことを言うもんだという「印象」を持つんじゃないですか。文化庁が何に協力したからこの試写会が行われたのか、すくなくとも李纓監督や配給会社に「協力」したつもりではないことは明白でしょう。

朝日新聞によれば稲田さんは「助成金にふさわしい政治的に中立な作品かどうかという一点で見た」んだそうですが、助成対象の要件となる「政治的な宣伝意図を有しない」を「政治的に中立な作品」と勝手に言い換えてしまったようで、しかしそれとこれとは全然違います。「政治的に中立」でないことは必ずしも「政治的な宣伝」を意図するものではありませんし、逆に「政治的に中立」な立場というものの「政治的な宣伝」というものも可能です。政治的な立場と「宣伝意図」とは無関係なのです。

てゆうかある映画が自ら「政治的に中立」であるということを表明するということになると、それこそ「政治的な宣伝」以外の何ものでもありません。現に稲田さん自身が「中立」とは言い難い立場に立っていながら大真面目に「政治的に中立な作品かどうか」を判断しうると考えている様子はちょっと面白いです。稲田さんは「中立」という言葉を「真ん中」とか「中間」のつもりで使っているように思えますが、多くの人は自分自身の基準からして「中立」なところに立っていたりしますから、「中立」の範囲は随分広いものなのです。ほとんど右の端から左の端までいたるところが「中立」であり得ます。ところが実は「中立」とは利害関係を有しない「第三者」の立場のことなのですから、悪い冗談ついでに言えば、いやしくも日本人であるならば「靖国」について「中立」ではありえない。しかし中国人なら大丈夫かもしれない。「第三国人」というくらいで。

まあ、中国人だって「中立」じゃありませんが、だからある「メッセージ」が「中立」であるかどうかはその内容には関わらないわけで、「中立」な人は「第三者」であるが故に色んなことを言い出す可能性があります。稲田さんと同じ考えの「中立」の人もいるでしょうし、そうでない「中立」もいるでしょう。それで例えば映画をいくら一生懸命見ても、それが「中立」であるかどうかがわかるわけではありませんし、そもそも「中立な作品」などというものもありえなのです。

産経ニュースによれば稲田さんは「憲法で保障された『表現の自由』があるので、映画の内容を論評する気はないが」と言いつつ、「靖国神社という政治的な題材を扱った映画に政府関係機関が助成したことは疑問だ」などと、思いっきり映画の題材、というのはつまり内容の一部ですが、これについて論評しまくっています。さっきから稲田さんは言語表現の無秩序の陥っているようですが、どうも稲田さんは「政治的な題材を扱った映画」に「政府関係機関が助成」してはいけないと言いたいようです。これは「政治的な宣伝意図」のあるやつはダメ、という芸術文化振興基金の規定をさらに拡大解釈するものです。ほっておくと基金で助成する対象は「劇団ふるさときゃらばん」ぐらいしかなくなってしまいます。もっともあそこは既に他の官庁が手厚く助成しているのですから、文化庁に出る幕はありません。

このような拡大解釈が許されないのは、もちろん「憲法で保障された『表現の自由』がある」からなのですが、稲田さんは弁護士で国会議員のくせに憲法がまだ「改正」されていないことをご存じないようです。正確には「…映画の内容を論評する気はないが」から「靖国神社という政治的な題材を…」へ至る一瞬の間に、稲田さんだけ1人で「憲法改正」してしまった模様です。もっとも、「単独改憲」に踏み切る「改憲論者」は多いので、これは珍しいことではありません。そういう人達の言動によって、「憲法改正」の暁には例えば商業主義に乗らず権力に敵視されるようなものを含んだ文化の多様性を維持するための文化行政は政治から独立しないんだとか、何が「独立」行政法人だかわかりませんが、そうして「文化の振興」とはほど遠いような大変に立派な国になるんだとか、そういうことが明らかになるわけです。

そこで今回の場合に助成が取り消しになるようなことがあれば、それはそれで画期的というかエラいことですが、今回の場合は多分それはないでしょう。しかしほぼ間違いなく今後は「政治的」な作品に助成金がおりることはないでしょう。ところがこういう作品ほど助成金のようなものを必要としているものなのです。観客が支持しないといけませんな。今回は幸いにして「マスゴミネタ」のご提供を得て、作品の知名度は一気に上がったわけですが、今後とも助成金の有無に関係なく、その手の作品の上映・上演の際には是非とも一部週刊誌ならびに「転倒と早漏の会」を中心とした議員諸君は、今回の如き無知蒙昧と軽挙妄動をもっぱらにして頂き、「伝統と創造の破壊」と作品の宣伝活動につとめて頂きたいものです。ところで諸君のおかげさまをもちまして、「靖国 YASUKUNI」の公式サイトhttp://www.yasukuni-movie.com/は「工事中」になっちゃいました。どういうことか。


posted by 珍風 at 23:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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