2008年03月21日

鈴香ちゃんリカちゃんエリカ様

Googleで「畠山鈴香」を検索すると当ブログのhttp://worstblog.seesaa.net/article/19190603.htmlが30番目くらいに出てくるという状況になっておるわけですが、困ったことにこれって特に鈴香さんのことをテーマにしてるんじゃないんですけどね。意味深なタイトルに吊られて読んでしまった人に対してはお詫びのしようもございませんので、別に土下座して謝ったりはしません。どうせ中国新聞あたりに「パフォーマンス」だとか言われるのがオチです。

その中国新聞を始めとして「なぜ死刑でないのか」と思った人も多いようです。「厳罰化の流れに一線を画した」という評価も目につきますが、浅はかな見方です。いくらなんでもとにかく闇雲に死刑にしてしまうのが「厳罰化」だと思ったら大間違いです。現在のところ死刑以上の刑罰は見当たりませんから、これを濫用することは死刑の有り難みを薄めるものでしょう。死刑というのは何か特別なことであって、よっぽどのことである必要があるのです。今までのように日常的にしょっちゅう死刑判決を出していると、死刑はその特殊な地位を失ってしまい、刑罰の中で程度の激しいものでしかなくなってしまいます。

このように人々が死刑を単なる刑罰の一種としてとらえるようになると、殺してしまうのはちょっと残虐なんじゃないかとか、もし冤罪だったら大変だとか、いくらなんでもそれは行き過ぎだとか、そんなことをしちゃいけないんじゃないかとか、極めて当然なことを言い出す虞があります。なんといっても刑罰は人間が人間に加えるものですから、そこには自ずと人間的な限界があります。しかし死刑はその限界を超えているように見えます。そういう風に見える限りにおいて死刑は世論の支持を得ることが出来るのです。しかし死刑の大安売りは死刑の価値を下落させてしまいます。そこで時折出し惜しみすることが肝心になってきます。したがってたまに死刑判決が出なかったからといって文句を言ったりするのは単に血に飢えた野獣であり、死刑存置の立場から見ても、死刑廃止の立場から見ても何の役にも立ちません。

そこでたとえば専門家の御意見はどうなのかというと、なにかというと出てくる甲南大法科大学院ですが、そこの渡辺修教授もどっちかというと野獣派です。

量刑基準法律で定めよ 秋田連続児童殺害・判決を読む

<取り調べ可視化が不可欠/甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)渡辺修氏>
 判決は、畠山鈴香被告の心の内側を微細に分析して死刑に値しないとしたが、長女と地域の子を故意に殺した結果を見たとき、市民の良識が納得するか疑問だ。刑法199条は「人を殺した者」に死刑、無期、5年以上の懲役を科すと定める。犯行の内容も量刑も幅が広い。だから、今回の判決のように犯人の主観を重視して厳罰を回避する余地も出てくる。
 将来、裁判員裁判で、裁判員が戸惑いなく量刑を決め、しかも全国的にも量刑が大きく食い違わないようにするためには、殺害方法と被害結果の程度を主な基準にして殺人を分類し、それに応じた刑罰を法律で定めておくべきだ。
 畠山被告は長女の死亡を転落事故と主張したが、救助の努力もなく、直ちに健忘が生じたという弁解は、市民の良識を納得させない。長女への殺意を認めた判断は妥当だ。ただ、検察側は捜査段階から死刑求刑を予想できた以上、公判で自白の任意性、信用性が争いになる場合に備え、取り調べをビデオ録画しておくべきだった。
 取調官と被告の言い分のどちらを信用するかを裁判官の選択に委ねる立証方法は相当でない。将来、争いのある自白が前提では死刑を科さない裁判員も出てこよう。裁判員裁判の定着には容疑者取り調べを録画するなど可視化が不可欠だ。
 裁判では、起訴から6カ月目に公判前整理手続きが始まり、それに半年をかけたが、その後の審理は月3、4回、それぞれ午前と午後を使って集中的に行われた。市民が参加する裁判員裁判実施を前に、迅速な裁判の運用はほぼ確立したと言える。
 また、検察は被告人質問で実寸大の橋の欄干の模型を使って長女死亡時の状況再現を試みるなど、裁判員裁判をにらんだ分かりやすい立証をしようと工夫しており、評価できる。
 もっとも、裁判を通して親子、家庭だけでなく地域、学校、警察が社会の将来を担う子どもを守れなかった残念な事実が浮き彫りになった。「人のきずな」を尊重する「ゆとり社会」を再生しなければ、同種事件は繰り返される。

2008年3月20日 河北新報


刑事訴訟法によると判決は「市民の良識を納得させ」なければならないとのことです。渡辺ぎしゅう先生が言うのですから間違いないでしょう。ぎしゅう先生はなんでも「市民の良識」で処理しようと考えています。「直ちに健忘が生じた」のが本当かどうかなど問題ではありません。そういう話しは「市民の良識を納得させない」からダメなんだそうです。ぎしゅう先生の御説は驚嘆すべきものであり、別のところでは「刑事裁判では「疑わしきは被告の利益に」が鉄則だが、裁判員は証拠のすき間を「市民の良識」で埋めてよい。」と言っています。これでは無知な大衆のリンチにもなりかねません。「市民の良識」のレベルがぎしゅう先生のそれを大幅に上回ることを祈るばかりです。

もっとも先生も野方図なリンチを推奨するものではなく、「殺害方法と被害結果の程度を主な基準にして殺人を分類し、それに応じた刑罰を法律で定めておくべきだ」と言っています。これは実際問題としてかなり困難であるような気もしますが、もしこれが実現されたところでシステマティックなリンチであるに過ぎません。それこそベルトコンベア式に絞首台や刑務所に送り込むことが可能ですが、「犯人の主観」を徹底的に排除した手続には犯罪者の更生のための契機は一切存在しません。これはおそらくぎしゅう先生が手続法の専門家であるためでしょうが、ぎしゅう先生としては「更生」を考えなくて良い刑罰としてなるべく死刑判決を下すのが望ましいと考えているようです。

ぎしゅう先生の次には吉岡忍さんが、逆に「この判決では犯行の背景にあるとされる被告の性格形成の過程がよく分からない。実際は個人的資質なのか家庭環境や社会環境に問題があったのか、その点を詳しく明らかにすることで、社会全体に対して事件の再発を防止する警鐘を鳴らすべきだ」と言っていますが、鈴香さんの例を含むいろんな事例についていろんな裁判官がてんでんばらばらに下した判決から、「被告の性格形成の過程」を一般化して「社会全体に対して事件の再発を防止する警鐘を鳴らす」のは無理でしょう。裁判に出来るのは各々の事例について判断するところまでで、いくらその事例を「詳しく明らかに」しても、他の人が別の家庭環境や別の社会環境のもとで行なう別の犯罪を防止することは出来ないような気がします。

その次には例の日大の板倉さんが連続殺人だから死刑相当と言っています。まあ、「連続殺人」といっても最初の「殺人」は自分の長女であり、1人目と2人目とでは動機の点で相当異なりますから、通常に連想する「連続殺人」とは違うようですが。あえて「2人の児童が短い期間に殺された連続殺人」とまとめてしまうあたりにマスゴミ向けのコメントに長けた先生の芸を感じます。

いずれにしても「更生」について語っているのは香山リカちゃんだけのようですが、これは専門分野ですから当然といえば当然です。

<裁判員制度に一石/精神科医香山リカさんの話>
 無期懲役は意外だった。被告は幼少時に虐待を受けていたとも伝えられており、心のケアや治療によって更生の余地があるという裁判長の判断ではないか。生い立ちや生活環境の結果として、衝動性が形成されたとすれば、治療は可能だ。無期懲役と判断した背景には、裁判員制度を踏まえ一石を投じる考えがあったのかもしれない。同制度を控え、みんなが一直線に厳罰化を求めるのは危険な兆候だと思う。

2008年3月20日 河北新報


しかしリカちゃんにしても「無期懲役は意外だった」んだそうですから、「治療は可能」な人まで死刑にしてしまおうと考えていたようです。まったくもって「みんなが一直線に厳罰化を求めるのは危険な兆候」であります。

しかしリカちゃんは「事件の再発を防止」することについて語っていませんので、こっちででっち上げます。ビデオは回ってません。「犯罪の防止」にはこのような事件の報道というものも一役買っているようです。同種の犯罪へとつながりかねない欲望を抱く人にとっては、だれかが他所でやってくれているおかげで自分はやらないで済むのです。人は自分の欲望を代理する犯罪に興味を持ち、そういう人が多ければそれだけ「社会」が騒ぎ立てます。そして「犯人」の「物語」は多くの人の欲望する方向に導かれるでしょう。餓鬼が邪魔でしょうがないのは鈴香さんではなくて、それに「納得」する「市民の良識」の方なのです。そして「市民の良識」は自分の欲望を抑圧しながら、そんな不埒な欲望を抱く自らを罰しようとしますが、その処罰は「犯人」に向けられてしまいます。欲望の強度が強ければ強い程、それに応じてますます「厳罰化」することになりますが、よく考えてみれば罰を受けるのは自分じゃないんですから、安心して極刑を望むことが出来るわけです。「みんなが一直線に厳罰化を求めるのは」、みんなが犯罪すれすれの状態にあるから「危険な兆候だと思う」のだと思います。たまには堂々とブーたれましょうよ。


posted by 珍風 at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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