2008年05月07日

俗悪有害兇悪劣情の闇は裏

なんだかんだ言って映画『靖国 YASUKUNI』というのを僕はまだ見ていません。ゴールデンウィーク中は連日満席で12時くらいには売り切れた、連休明けの今日だって午後2時には満席というのですから、仕事(GWも仕事なのでした)が終わってから行ったって無理なんですね。折角行ったのに、そんな、酷いじゃないか、って、暴れるわけにもいきません。映画館の前には警備員だかが2人も立っていて、映画を観せまいとする輩や強引に観ようという連中を排除すべく待ち構えています。まるで何か事件現場のような物々しさです。あの中では一体何が行なわれているのでしょうか。朝から並んでいた熱心な人たちが劇場に入っていくのを指をくわえて見ているしかないのでした。

というような状態でしたが、しかし、久しぶりに映画は「事件」になったのでした。おじさんの若い頃は映画というのは「事件」でしたね。東宝東和の宣伝を素直に信じるとすれば、そしておじさんも中学生くらいの頃はわりと素直だったですから、大変な「事件」が次から次へと発生していたものです。なんたって「全米何十州で公開禁止!」だったり、「上映反対デモ」が劇場を取り囲んだり、あまりのショックに死んでしまった観客がいるとか、そういうことがあるといけないのでお医者さんが待機しているんだとか、何だか知らないけどとにかくモノスゴイ、大変な事柄が映写されているんだとか、とにかく闇雲に「エライこと」が、TVなんかには映せないような「ヤバいこと」が起こっているというこのなので、映画を観に行くというとはある種の「危険」に立ち会うような期待があったもんでした。

まあ、期待というのは外れるためにある。しかしながら別に毎度毎度失望していたわけではありません。それどころか映画館では人間の首が切断され、人体は考えられないほど奔放に変形し、内臓は花のように弾け、血は噴水のようにほとばしり、気の狂った少女が十字架でオナニーをし、気の狂った中年男が少女の虜になって自滅し、気の狂った青年が全員殺して回り、気の狂った遊星が地球を木っ端みじんにしていたのでした。

映画の登場人物はおおむね悪党であり、犯罪者であり、そうでなくても何があったのか知りませんが1時間半もあれば人間としてやっていいことと悪いことの垣根を簡単に越えてしまう人たちばかりなのでした。そういう連中が超人的な力と勇気と残酷な想像力と突飛な行動力を駆使した常識を外れることおびただしいようなやり方で、神話的な善と悪との戦いを演じるのです。

しかしながら、もし単に悪があり、善が現れ、善が勝って悪が滅びる、というだけの話しならばそれは2巻分くらいで終わってしまうでしょう。これは30分ちょっとくらいでしょうか。その昔TVでは『刑事くん』という、30分で事件をたちどころに解決する優秀で凡庸な刑事のことを放送していましたが、ところが映画というものは短くても80分から100分、長くなると3時間を超える尺がありますから、色々なことをもっと入れることが出来ます。

ところで絵にしてみて面白いのはやはり「悪」の方なのでした。ヤバいことならゼニになるのです。その圧倒的な力、心臓を潰す残酷、脳が溶ける禍々しい魅力、腸をねじる滑稽と窒息させるような悲哀。それが映画の「主役」であり、そうであるからには神話の戦いは負けるが勝ちで転倒します。それはマイホーム用品屋さんがお届けする『刑事くん』から『水戸黄門』に至る毎週月曜の夜に退屈に反復される神話の「裏」なのでした。

したがって映画とは「悪」だったのであり、その故に「事件」だったのでした。世の中に「良い事件」などというものがあったためしはありません。あっても「どうでも良い事件」だけでしょう。ところでもしかすると「どうでも良い事件」としてひっそりと終わってしまっていたかも知れない『靖国 YASUKUNI』がすっかり立派な「事件」になられて、世の「事件=映画」好きの人たちに加えて単なる「事件」好きの士も席を埋め、あおりを食った僕がまだ観れないというのも、どっかの間抜けなお人好しがこの映画のことを「何だか悪いもの」のように言い出したおかげであります。映画では彼女のご尊顔をも拝することが出来るとのことですが、DVD化の際にはそのシーンの前に「脱帽」の字幕を入れとくべきでしょうな。

ちなみにシネ・アミューズでは10日から追加上映が決定とかゆーウワサです。


posted by 珍風 at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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