2008年05月25日

和田監督の資本主義リアリズム講座

「ごくせんは不良を讃えるな」 和田秀樹さんがコラムで異論 

   日本テレビ系の人気ドラマ「ごくせん」の一部内容について、精神科医の和田秀樹さんが雑誌コラムで異論を述べ、ネットで議論になっている。不良少年や不勉強を正当化するな、というのが和田さんの主張だ。
「勉強をしている子の方が、不良よりはるかに安全」
   「ごくせん」は、俳優の仲間由紀恵さん(28)扮する熱血高校教師「ヤンクミ」が、ワルの生徒たちに体当たりして更生させていく姿を描く。2002年、05年と大ヒットし、08年4月19日から第3シリーズが放送中だ。初回に関東地区で26.4%の高視聴率を出し、その後も安定した人気となっている。
   このドラマに、和田秀樹さん(47)が噛み付いた。和田さんは、日経ビジネスアソシエ6月3日号のコラムで、ごくせんについて持論を展開。現代版「水戸黄門」と評されるのも分かる痛快なドラマだとしながらも、「看過できない内容があった」と述べている。それは、「秀才学校の生徒の方が不良より性格がねじ曲がっているように描かれている点だ」という。
   そして、和田さんは、こう問題を指摘する。
「(秀才が)勉強のできない人間を、『覆面+鉄パイプ』で『世直し』と称して襲うという設定である。この手の『秀才=悪』『不良=心はきれい』という図式は、ある種の青春ドラマのステレオタイプのようになっている」
問題にする理由として、和田さんは、進学校生徒の犯罪発生率などのデータを示し、「勉強をしている子の方が、不良よりはるかに安全」であることを挙げる。そのうえで、「このような番組は勉強ができない人間の価値観を強化し、ますます格差を広げる結果になりかねない」と危惧し、番組作りを再考するよう求めている。
   ごくせんは人気作だけに、和田さんの意見表明は早速、ネット上で話題になった。2ちゃんねるでもいくつかスレッドが立ち、「『ごくせん』は不良を助長する作品」「不良は圧倒的に悪い奴が多いだろ」と、和田さんに同調するような意見が多く寄せられている。
秀才にありがちな欠点指摘する声も
   一方で、異論もある。「優等生がほんとうに優等生ならいいが、腐ったことをいったりやったりする奴も多い」「受験競争の過程で挫折した人間が、その後どうなるかについて、 和田の視点は全く欠落している」といった意見だ。
   異論をまとめると、優等生だって天下り官僚や悪い弁護士になっている、勉強だけでは創造力がなくなる、お金持ちが進学に有利な社会が悪い、不良はむしろ正義に敏感だから反抗する、勉強できない子はフィクションの中では主役になれる、などがある。
   では、和田さんの言う秀才と不良の対立図式は、実際に子どもたちの間で広がりつつあるのだろうか。
   これについても、学校現場で見方が分かれた。
   「ごく一部に限られる」としているのが、学校裏サイトを日常的にチェックしている全国webカウンセリング協議会理事長の安川雅史さん。「ごくせんは、最後は正義が勝つという設定です。しかし、秀才そのものが悪いとは言っていません。秀才でも悪いことをやっている子は、最後にやっつけられるというストーリーで終わっています。ですから、子どもたちも、重く受け止めないで、スカッとする番組として見ているのでは。裏サイトの書き込みで目立つわけでなく、影響を受けているのは、思い込みの激しい子だけだと思います」
   一方、東京・多摩地区のある市立中学校校長は、「現代型のいじめ」だとして、頭がいい真面目な子がバッシングの対象になることが多いと明かす。テレビで金八先生がもてはやされた20年ほど前から言われている話だという。「中学時代は悪くてもいい、その後、立派に成長しているから、とメディアがドラマなどであおってきた影響でしょう。しかし、そんな子はごく一部で、実際は立ち直れない子がいっぱいいるんです。秀才や不良少年の一面だけを描かれると、子どもたちがそのメッセージを強く受け取ってしまいます」
   和田さんは、こうした議論に対し、次のように説明している。
「子どもたちの間で、不良少年がもてはやされているとは存じあげていませんし、そこまでなっていないと思います。ですが、私が問題にしているのは、学力低下がみられる時代で、勉強できない子が『人間性がしっかりしていればいい』と勉強しないことを正当化してしまうことです。20〜30年前なら社会的に意味のある番組だったかもしれませんが、時代によってテレビのあり方が変わらなければいけないということです。また、優等生に悪いやつがいるというのは、確率論の問題です。悪いやつもいればいいやつもいる。しかし、子どもに勉強させた方が、犯罪者の比率が低い、確率が高いですよ、ということです」

2008年5月24日 J-CASTニュース 


映画監督、といってしまうと大神源太さんも立派なシネアストなわけですが、まあそういう意味では双璧をなす、というか同類の和田秀樹監督ですが、初監督作品にして早くも遺作の声が高い『受験のシンデレラ』の興収のほうはどうだったのでしょうか。せっかく「モナコ国際映画祭」で4部門受賞したんですから、もうちょっと入っても良かったんじゃないでしょうか。もっとも「モナコ国際映画祭」、正確には「暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭 」というんですが、「暴力描写がない」ことがそんなに良いことなのかどうかはともかくとして、フィルムに箔をつけたい人には意外と穴場かも知れません。

そうでなくても産經新聞に寄稿した和田監督の「芸術」論によれば、「コマーシャリズムに流れない芸術映画」というのは、「暴力シーンのない映画」のことなのだそうですから、「アンチ・ハリウッド=芸術」という短絡的な発想でいくつもりならそういう「芸術」もアリかも知れません。もっとも「ハリウッド」的なものから遠くはなれようとするあまりに、観客に受容される物語のパタンを拒否するのも「芸術」だから別に構わないのですが、見てもらえない映画を作った挙げ句「助成金」をもらえなかったことを恨む、更には人気作品に噛み付いてみたりするのも「芸術」としてのパフォーマンスであればいいんですけど。カンヌ映画祭を粉砕した人もいましたし。

僕は「青春」は森田健作で懲りてますんで「ごくせん」って観てないんですが、「優等生」と「不良」ってのは、例えば時代劇では「悪代官」と「ヤクザ」に当たるんでしょうね。勧善懲悪にピカレスクを加えたもの。いわゆる「悪漢」が、より大きな「巨悪」と戦う、というパタンでしょう。「優等生」というのは役人などになりがちであります。中には良い役人や悪い役人がいるわけですけど、「巨悪」というのは構造的なものであるところ、それを「悪役」としての登場人物個人に代表させることになるのは「お話」というものの約束事だから仕方ありません。

まあ、そういう「巨悪」に立ち向かうのが「悪漢」であるというのもよくあるパタンで、そういう境遇の人じゃないとそんな大それたことを出来ないという、これもおかしな話しなんで多分に封建的な感じがしますが、そういうパタンのほうが受容されやすいらしい。いわば誰かが観客の代理となって「悪」を倒すということなんですが、その場合何らかの常人とは異なる「力」を持った人ということになります。水戸黄門やウルトラマンがそうですが、「ヤクザ」とか「不良」などの「悪漢」も普通の人の持っていない「力」を持つものとして登場するのです。

というような「物語」の「ステレオタイプ」が「時代によって変わらなければいけない」とうのも一つの主張ではありますが、いくつかの定型が神話から民話から小説演劇映画TVに至まで絶えず繰り返し語り直され続けているのが今までの人類の歴史であるようです。権力に「巨悪」を観てこれをやっつけるという「ステレオタイプ」は、少なくとも社会に権力というものが存在する「時代」には変わりようがないでしょう。現状ではTVであろうが映画であろうがそこで語られるパタンが「変わる」ような「時代」であるとはいえません。「物語」に「変わって」ほしかったら社会の方を変えた方が話しが早いようです。

というようなことを映画も撮る「芸術」に造詣の深い「精神科医」が知らないわけではないでしょう。いや、本当は知らないのかも知れませんが、知っていても和田さんの役には立たないようです。和田さんによる「コマーシャリズムに流れない芸術映画」の定義にはもう一つあったんです。それは「国民に啓蒙(けいもう)すべき内容を盛り込む」ということなのでした。対象が「国民」なもんですから「芸術」の定義の中心に「政府公報」を置こうという野心的な試みのようにも見えますが、「啓蒙」などという難しい(産經新聞の読者には読めないものと想定されている)漢字に惑わされずに読んでみると、これはつまり「宣伝」ということです。「コマーシャリズムに流れる」ことと、最初から確固とした「コマーシャリズム」の考えで製作することとは違うようです。営利を目的として「主人公が病気で死ぬ」などといった「ステレオタイプ」に頼ることと、通信教育の宣伝のために映画を撮ることとは違うわけです。それは「国益を考えた」、ついでに私益も思いっきり考えまくった「資本主義リアリズム」の思想に基づいた「芸術」であり、商業主義に魂を売った「商品」ではないのです。その証拠に観客が入りません。


posted by 珍風 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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